こいごころ
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#342 [向日葵]
そこまで言ったはいいが、頭を打ったせいで痛みが宗助の頭を鋭く突き抜ける。
その隙にとばかりに、茉里は急いで先生を呼びに行こうとした。
「待て!」
しかしそれを宗助が止めた。
痛みに耐えながらも起き上がり、茉里の手を力強く握る。
振りほどこうと立ち上がる茉里。その反動で何かがパサリと落ちる。
それに気づいた茉里と宗助は、2人してその落ちた物を見た。
:09/09/23 16:42
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#343 [向日葵]
それを見て、茉里は凍りついたまま頬を赤らめ、宗助は見覚えのあるそれを見入るようにじっとしている。
茉里の膝の上に乗っていた袋は、床に落ちた事によって紐が解け、中にある面紐が出てしまっていた。
「これ……」
「違う!宗助のじゃないっ!」
赤い顔をしながら言っても説得力がない。
茉里の腕を握る手に、さっきより力が加わる。
「は……放して……っ」
:09/09/23 16:42
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#344 [向日葵]
「加賀、少し話をしよう」
「話す事なんてないっ!」
「俺はある!」
強い言葉にびくりとした茉里は、動きをとめる。
宗助の強い眼差しに、クラクラした。
「話、させてくれるな……?」
:09/09/23 16:43
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#345 [向日葵]
[10]霧の中の答え
気を失ってる間、暗闇の中で誰かいた。
座り込んで、泣いているのか、顔を両手で覆って、うつむいている。
どうした?
声をかけても反応がない。
気になって近づこうとすれば、それを拒否するかのようにその姿がまた遠のく。
何回かそれを繰り返していると、その誰かは立ち上がり、くるりとこちらを向いた。
その顔は、よく知る人物だった。
「加賀……?」
――構わないで。
:09/09/23 16:43
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#346 [向日葵]
口を動かす茉里だが、その動きはひどく遅く、声が聞こえる速さと合わなかった。
――なぜ放っておいてくれないの?
それは……。
自分でもわからない。
その華奢な肩を、どうしても抱きしめてあげなければ、守ってあげなければって。
心の深いところで、叫んでいる。
――残酷だね。
茉里の目から一筋、涙が伝う。
――先輩がいるからって言ったの、宗助でしょ?
言った。そして
茉里を深く傷つける結果になった。
:09/09/23 16:44
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#347 [向日葵]
わかっていた。
ああ言えば、心の傷を封印して、笑顔で何もないように振る舞うだろう彼女のことを。
先輩の所へ行く足を止めて振り返れば、小さくなっていく茉里の背中が、とても痛々しかった。
――都合がいい奴が去るのは、そんなに名残惜しい?
そんなこと、思ったことはない。
自分の背中を、茉里が傷ついてでも押してくれて、そんな自分をずっと好きでいてくれた。
優しい細い腕に、いつも励まされた。
子供みたいに笑う茉里に、気づかないところで癒されていた。
:09/09/23 16:44
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#348 [向日葵]
調子を狂わされていても、一緒にいれば楽しかった。
そんな彼女の弱さを、守ってやりたいと思った。
――それでも、先輩がいれば、先輩を優先させるでしょ?
それは……。
――結局そういうことだよ。
そういうこと?
――先輩がこちらに向かない虚しい気持ちを、私で補ってたんでしょ?
「違う!」
――利用したんでしょ?
「そんなこと、1度もしたことない!」
:09/09/23 16:45
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#349 [向日葵]
――それはさぞかし罪悪感がいっぱいでしょうね。
「違う!アンタが言ってることは何もかも違う!」
容赦ない茉里の言葉を、宗助は全否定した。
違う、そんなんじゃない。
利用したなんて、そんなことない。
先輩の代わりだなんて、考えたことはない。
ずっと、茉里自身を見ていた。
――そこまでいうなら、なにか示して。
なにか?
――そろそろ、フラフラした考えに決着をつけて。
その言葉を聞いた途端、意識が急に現実に戻されたのがわかった。
:09/09/23 16:45
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#350 [向日葵]
吐き出す息が、少し震えている。
どうして泣いているんだ?
目を瞑っているのに、誰が泣いているかがわかった。
俺が悪いのか?
だったら謝るから、泣かないでくれ。
アンタに泣かれたら、俺どうしていいかわからなくなるんだ。
おかしな話だよな。
先輩には、すぐに頭でもなんでも触れられたのに、どうしてアンタは、壊れそうだからって、触れることすら出来ないんだろう。
ゆっくり目を開ける。
:09/09/30 02:40
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#351 [向日葵]
どこかに横たわっているのがわかる。
首を動かせば、茉里が口をきゅっと閉めて、嗚咽が漏れないように泣いていた。
その姿が、胸を締め付ける。
少し見入っていると、茉里がこちらに気づいた。
「あ、アンタ……、なんで泣いて」
痛い。
頭が痛かった。
そういえば、自分は確か試合中で、相手に押され、宙に浮いたと思えば、もうそこから記憶がない。
:09/09/30 02:40
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