こいごころ
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#352 [向日葵]
どうしたものかと、ゆっくり起き上がろうとすれば、茉里がその場から逃げようとした。

痛いのも忘れてしまうくらい早く起き上がって、その腕を掴む。

「待て!」

しっかり起き上がりきると、また痛みが頭を突き抜ける。

それでも逃げようとする茉里の腕を強く握ると、何かが落ちる音がした。

何かと見れば、それは袋で、中に見た事があるものかだあった。

もっともそれは、元は長いものだったはずなのだが、どうやら彼女が短く切ってしまったらしい。

⏰:09/09/30 02:40 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#353 [向日葵]
「これ……」

「違う!宗助のじゃないっ!」

そんな赤い顔で言われれば、宗助の物だと言ってるようなものである。

話そう。

今の気持ちを、聞いてもらいたい。

傷つけたかったわけじゃない。
利用してもいいと言われたが、利用した事なんてない。

信じてくれ、それだけは。

「話、させてくれるな」

まっすぐ見つめれば、赤い顔をしたまま茉里は固まる。

しかし、その顔は怯えている。

⏰:09/09/30 02:41 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#354 [向日葵]
わからない。
自分の何が彼女を怯えさせているのだろうか。
せめてもと、宗助は握っていた手の力を緩めた。

「どうして、泣いてんの……?」

とりあえず、手始めにその事を訊いてみる。

茉里の顔は更に赤くなる。
下唇を噛み、答えたくなさそうにしている。

「……関係。どこで泣こうが、私の勝手でしょ」

「勝手だけど、俺の事が関係ないなら喋れるでしょ?」

「どうして……。私の事なんてどうでもいいでしょ」

⏰:09/09/30 02:41 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#355 [向日葵]
カッとなって、宗助は茉里の腕を引いた。
あっけなく、茉里は宗助がいるベッドの上、いや、膝の上に座ってしまうこととなった。

思いがけず、2人の顔が近づく。その距離に驚く間もなく、宗助が口を開いた。

「利用したとか、どうでもいいとか……もう聞き飽きた……。確かに、アンタには最低な事をした。自分でも、そんな事わかってる」

あの時のように、苦しげな声。

無意識のうちに、宗助を傷つけたのは、また私なの?

⏰:09/09/30 02:42 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#356 [向日葵]
「けど、アンタがどうでもいいから傷つけたんじゃない!いや、違う、傷つけたくなかった、絶対に!」

強い言葉が、胸に突き刺さって溶けていく。
まるで告白されてるような感覚になる。

まだそんな事思う自分に呆れたけれど、こんなに間近に鋭く見つめられては、勘違いしても仕方がないのかもしれない。

「あの時は、ああ言ったけど、今はわからない」

宗助は少し目をそむける。

「……何が」

⏰:09/09/30 02:43 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#357 [向日葵]
小さな声だと自分でも思うくらいの声で訊いた。

「アンタの事」

「……どういう……こと……」

怖い。そう思う。
もう自惚れるのはこりごりだ。

散々痛い思いをしてきた。
心に傷を作って、闇色に染まるのはもう嫌だ。

だから、宗助の一挙一動、一言一句、それが全部怖い。

走馬灯のように、一瞬瞼の裏に、幼い頃の自分が映る。

枕に顔を埋め、中途半端に成長した心が、大声で泣くのを許さないように、声を押し殺して泣く。

⏰:09/09/30 02:44 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#358 [向日葵]
もう大好きな人に、心を潰されるのは嫌だ。
奥深いところに隠された茉里の闇は、深いと言うよりは濃いのだろう。

その闇の色が。

再び目を合わせた宗助の目つきは、先ほどよりも切なく、けれど強いものだった。

「アンタに対する気持ちと、先輩への気持ちが」

耐え切れなくて、身を引こうとしたら、捕まれている腕に力を入れられて、引いた分宗助が近づく。

⏰:09/09/30 02:44 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#359 [向日葵]
「頼む、逃げないで。嫌なんだ。アンタの後ろ姿を見るのは……辛い」

「そんな事言って……」

きっと、先輩ん選ぶ時なら、たとえ私の後ろすがたを見たとしても躊躇なき先輩の方にいくくせに。

「気持ちがわからない上で、俺から頼みがある」

「……なに」

言いよどむように、宗助は視線を泳がす。
時計の音と、少し離れた場所で試合の音が聞こえる。

そして宗助は驚く事を口にした。

「俺を……「仮彼氏」にしてくれないか」

驚きのあまり、目が落ちそうなほど目を見開く。

「なにを……い、言って……んの?」

⏰:09/09/30 02:45 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#360 [向日葵]
「アンタが言ってた「仮彼女」の制度とはまた違うけど、俺は自分の気持ちがはっきりとわかるまで、「仮彼氏」にしてほしい……」

しばらくは宗助の言葉に耳を傾けていた茉里だが、驚きに満ちていた顔が、宗助の言葉が最後に向かうにつれて今度は段々とその表情を曇らせていく。

途中から首をゆっくりと小さく横に振り、最後まで言った瞬間強く振った。

そして言う。

「いやよ」

強くはっきりと茉里が言うものだから、宗助は言葉を失う。

⏰:09/10/12 03:25 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#361 [向日葵]
正直に言えば、否定はされないだろうなどと甘く考えていた。

きっと、茉里の気持ちはまだ完璧には離れていないはず。
ならばもう1度2人一緒にゆっくりと歩み寄ることを望めば、茉里はその思いに同意してくれるものだと思っていた。

しかし彼女の返事は、その甘い考えを見事に崩し、「何故?」と言う言葉すら宗助から奪った。

「気持ちがはっきり……ってことは、私じゃない可能性だってあるんでしょ?」

そう言われて宗助はハッとした。
茉里が言った事を、何も考えていなかった。
つまり、自分の提案は、茉里をまた傷つけることになるかもしれないのだ。

⏰:09/10/12 03:26 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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