こいごころ
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#362 [向日葵]
「……その時、私はどうすればいいの?」

「……それは」

「その可能性がないにしても、考えさせて。……私、今すぐ答えを出せない。……無理だよ」

せき止めていた涙がおさえれず、1粒、2粒と落ちていく。

「そんな簡単に決められるほど、いい加減な気持ちで宗助のこと好きになったんじゃない……っ!」

掴まれていた腕を乱暴に振り払って、茉里は医務室を出た。
背中でドアを閉めて、もたれたままズルズル座り込む。

⏰:09/10/12 03:26 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#363 [向日葵]
胸がズキズキと痛い。

どういう痛みかはわからない。
それでも涙は流れる。

喉も、嗚咽をこらえればこらえるほど、焼けるように熱くなる。

自分が相変わらず馬鹿だと思った。

あんな真剣な顔をされて、真剣な声で話されて、もしかしたら先輩よりも自分を選んでくれたのかと期待した。

なのに彼から出た言葉は、「仮」彼氏にしてほしいだった。

しかもその内容にも、失望した。

⏰:09/10/12 03:27 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#364 [向日葵]
茉里の場合は、1人をこちらに向かせる事を目的としたことだった。

でも宗助は違う。

想う人が2人いて、もし1人の人に気持ちがしぼられれば、どちらかはもう……。
そうなれば、もしかすれば友達にすら戻れないほど立ち直れないかもしれない。

宗助は、そこまで考えてくれていたのだろうか。

いや、考えてくれてなかったよね、あれは……。
それなら私の気持ちは……。
届いてなんか、いなかったんだ。

涙はしばらく止まってくれなかった。

⏰:09/10/12 03:27 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#365 [向日葵]
――――――――…………

「頭は平気?」

もう大丈夫だろうと医務室を出た宗助に話しかけてきたのは、皆から王子様と呼ばれている沢口だった。

肌の色の白さが、余計に王子様のような顔を際立たせ、制服を着れば、きって剣道で激しく動く沢口を想像出来ないだろう。

男同士ですら、声をかけられれば戸惑ってしまう。

「ああ、大丈夫」

「そう、それは良かった。……ところで訊くけど、医務室から出てきた加賀さんは、どうして目を腫らしているの?」

息を吸って、止めた。

沢口を改めてみると、微笑んでいるのに、まとっている空気は寒さすら感じるほど冷たいものだった。

「わからない。君は何を迷っているんだ。もう答えは出ているのだろう?でなきゃ他の男に喋りかけられている加賀さんを見て、あんな敵意丸出しの態度はとらない」

⏰:09/10/12 03:27 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#366 [向日葵]
今朝、茉里が沢口と話していた時のことだろう。

「……お前に、関係ないだろう」

「あるよ。僕は加賀さんに好意があるし」

治ったはずの痛みがまた復活しそうで、宗助は頭をおさえた。

「認めたくないんだ……」

小さい声は、沢口に届いたのだろうか。
沢口は片方の眉をひそめて、怪訝そうな顔をする。

他に向くほど、自分の気持ちが軽かったのかと、認めたくなどなかった。

そうだ。そんな自分勝手な気持ちが、彼女を追い詰めたのだ。

⏰:09/10/12 03:28 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#367 [向日葵]
最低だなんて、わかっているんだ。
そうやって責められても、まだ足りないと思うほどに……。

「こらー。私の可愛い後輩をいじめないでくれるかなー」

流れている空気を無視するように、聞き慣れた声が茶化して入ってきた。

その方をみると、千早先輩がそこに立っていた。

制服ではなく、今日は私服だ。

そんな先輩を見ても、宗助の胸が高鳴ることはない。
しかし、そんな自分に宗助は気づいていない。

「沢口くんだっけ?」

⏰:09/10/12 03:28 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#368 [向日葵]
2人の間に入るように、それでいて当たり障りないように微笑みながら、宗助を助ける。

「あんまり責めないでやって。この子それでなくても自分追い詰めちゃう子だから」

その笑顔に、引き下がるべきだと感じた沢口も、少しだけ作ったような笑顔を見せてからその場を去った。

「まったく。アンタは何を落ち込んでんだか」

千早先輩は、宗助の頭を軽く叩く。
されるがままの宗助は、さらに悲しい顔をする。

⏰:09/10/12 03:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#369 [向日葵]
「先輩……、俺……」

「ん?」

「……先輩が、好きです」

先輩は口に笑みを浮かべたまま、宗助の頭から手を下ろした。

「……うん、わかってる。でもね宗助、その好きはどんな好きだろう?」

宗助は小さく「え……」と呟く。

そんなの、決まっているじゃないか。

「1人の女の人としてです」

「そうかな」

⏰:09/10/12 03:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#370 [向日葵]
訊かれて、ますます宗助の頭にハテナが舞う。

「最初は確かにそうだったかもね。宗助の想いを否定はしないよ。でもね、慕っているっていうのと、好きって気持ちを間違えちゃダメだよ」

慕っている……。

「目をけらしてよく見てみなさい。大切にしたいのは……笑顔がみたいのは、誰?」

自分でも驚くぐらい、その笑顔を浮かべるのは早かった。

彼女の心からの笑顔を、ここ最近見れていない。
宗助の瞼の裏に映った、彼女の新しい記憶での顔は、泣いている。

⏰:09/10/12 03:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#371 [向日葵]
「宗助は優しいから、慕ってくれてる私の事を気にしてくれてたんだよね。そのせいで、見つけるべきものを見つけられずにいたね。……それは、私のせいだ」

そう言われて、改めて考えた。

彼氏とケンカした先輩を見たとき、自分はどう思った?

――早く元気になって、彼氏と仲直りしてくださいと思った。

彼氏と別れた時、あれほど泣いている先輩を見て、どう思った?

――大丈夫。また新しい恋が出来るはずだと思った。

どうして、先輩に自分が彼氏になると、守ると、思わなかったんだ。そして、言わなかったんだ。

⏰:09/11/01 17:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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