こいごころ
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#372 [向日葵]
そこでもうわかってしまった。
霧は晴れた。

そこにあるのは……。

宗助の様子に、千早先輩は頭を撫でた。

「大丈夫、わかったならまだ間に合う。精一杯、伝えれば、きっと願いは叶うから」

試合頑張れ。そう言って、先輩は回れ右をした。

―――――――――…………

この人はよく現れるな、と思う。

さすがに今回の試合は地元から離れているから、来ないと思って射たのに。

⏰:09/11/01 17:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#373 [向日葵]
昼休憩にはいり、後輩が群がる原因の人物を見て、茉里はそう思った。
その光景を遠めで見ながら、茉里は午後からの試合の為の準備をする。

外に置いてあるヤカンに用があったので、外に出ると、しばらくして声がかけられた。

「大変だね、手伝おうか?」

手を止めて、ゆっくり顔を上げれば、それと同時に千早先輩がしゃがみこみ、茉里と目線を合わせた。

ニコニコしている先輩に、茉里は思わず戸惑う。

「……いえ」

「ごめんね」

⏰:09/11/01 17:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#374 [向日葵]
唐突に謝られて驚くが、この間のことだということはよくわかった茉里も完璧に作業をとめて、先輩に向き直る。

「私も、手を出しました……。ごめんなさい……」

「いいの。おかげで目が覚めたでていうかねっ」

ぺたりとコンクリートの2、3段ほどしかない階段に座る。
茉里もその隣に座ることにした。

「ねえ、茉里ちゃんから見てさ、私ってどんな性格?」

「えっと……。しっかりものっていうか、潔いっていうか……」

「そう、そのイメージが1番強いでしょ?だからさ、どうしても誰にも寄りかかることって出来なかったのよ。それは私のわがままで、どうしても、皆の求めてる自分でいたかったっていうか、ね」

⏰:09/11/01 17:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#375 [向日葵]
先輩は空を見上げる。

寒いが、その寒さゆえか、空はとても澄んでいて綺麗だ。
ときどきトンビなんかが微かに翼を動かして飛んでいるのが微かに見えるくらいの高さで見える。

そんな空を見上げる先輩は、どこか清々しい感じがして、綺麗で、茉里は少し悔しくなる。

神様は平等じゃない、と。

「……でも、それを見抜いたのは、宗助だった」

その名前を出されて、反応してしまう。
しかし先輩は気づいた様子もなく、ただ淡々と話す。

⏰:09/11/01 17:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#376 [向日葵]
「それが嬉しくてね。私はつい、宗助に甘えちゃったの。宗助はわかってくれる、宗助にだけなら本当の自分を出しちゃえってね……。でも、これだけはわかってね」

スカートの上に置いていた茉里の冷えた手の上に先輩の手が重なり、優しく包む。

「宗助が好きなのは、やっぱり茉里ちゃんなの」

それを聞いて、茉里は一瞬固まるが、すぐに勢いよく首を横に振る。

「そんな、わけな……っ、宗助はずっと……」

「ねえ茉里ちゃん、茉里ちゃんが変質者に襲われそうになった時のこと覚えてる?」

丁度、梅雨の頃の話だ。

⏰:09/11/01 17:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#377 [向日葵]
間一髪で、宗助が助けてくれたあの時。

しかし、茉里はアレ?と思った。変質者に襲われたのを知っているのは助けてくれた宗助、そして友人のミュシャ。

どうして先輩が?

そう顔に書いてあったのか、先輩は答えてくれた。

「実はね、私たまたまそれ見たのよ。ほら、駅のホームって途中から屋根がなくなって、壁が鉄格子になってるところあるでしょ?」

茉里たちの最寄り駅は、電車の先頭に乗車する場所のホームは、先輩がいうような状態になっており、鉄格子越しには、学校から駅までの通学路が見える。

⏰:09/11/01 17:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#378 [向日葵]
「最初見たとき、雨降ってるわ暗いわ遠いわで、何をしてるかわからなくてね。でもよくよく見れば様子がおかしくて、思わず助けようと鉄格子登ろうと思ったのよ。……そしたら」

「宗助が……来てくれた」

先輩の続きを茉里が繋げ、先輩は頷いた。

「じゃあ宗助は、先輩よりも早く鉄格子を……?」

その茉里の問いに、先輩はきょとんとした。
確かその時、宗助と先輩は一緒に帰ったはずだった。

「え?宗助から聞いてない?宗助、私を駅までの送ってくれた後、道を引き返したのよ」

え……。

⏰:09/11/01 17:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#379 [向日葵]
「でも、私、あの日デパートに行くって……」

「あれ、茉里ちゃん気づかなかった?自転車置き場の前通り過ぎた時、私たち丁度その向かいの外にいたのよ」

デパート側ではないもう1つの通学路は、道と自転車置き場が平行にあり、その間をフェンスでしきっているだけのため、学校の中が見えるようになっている。

傘と、落ち込んでいたので足元しか見ていなかったのが重なり、茉里は2人に気づけなかったらしい。

「私、先生に用事があったのを思い出して、正門近くから引き返して校舎に一旦帰ったのよ。だからその時間差も……。って、茉里ちゃん私より早く更衣室出てなかったっけ?」

⏰:09/11/01 17:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#380 [向日葵]
更衣室に先輩が入ったのが早くても、もともと着替える必要のない茉里の方が早いのは当たり前で、その時の茉里の複雑な気持ちなんて知る由もない先輩は、デパートに行ったはずの茉里が校内に残っているのが、ただただ不思議だった。

ああ……なんてあほらしいの……。

思わず茉里は頭を抱える。

「……それは、いずれ話ます……」

「うん、ありがとう。だからね、きっと宗助はその時から茉里が気になって仕方なかったのよ。だって、宗助言ったもの」

[先輩、加賀が心配なので、戻ってもいいですか?]

その言葉に、、茉里は目を真ん丸に見開く。

勘のいい宗助だから、茉里がデパートに行かない事もお見通しだったのかもしれない。

⏰:09/11/01 17:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#381 [向日葵]
なによ……。
心配なんてしてないみたいに言ってたくせに……。

県大会の帰り道、宗助が何故あの場所にいたかを訊いた時のことだ。
宗助は、嘘でも心配なんて言ったら、茉里が調子のる、だから内緒だと言ったのだ。

なによ……なによ……。
結局宗助は、いつもそうやって自分を気にかけてくれてたんじゃないか。
うそつき。
好きになる保障なんてないって、断言したのは、誰よ。
そんなに心配してもらってただなんて、私……。

「知らなかった……」

宗助の気持ちを、1番理解出来ていなかったのは、自分だ。

⏰:09/11/01 17:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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