こいごころ
最新 最初 全 
#382 [向日葵]
「あの子の気持ち、もし伝えてきたら、受け止めて、茉里ちゃんなりの正直な気持ちを答えてやってね」
そうやって笑う先輩の笑顔は、今度は悔しいなんて思わず、心から綺麗だと思えた。
―――――――――…………
試合も終わり、全員解散した後、またバスに乗って帰る。
街はイルミネーションで彩られ、そこで今日がクリスマスだったことを思い出した。
きっと今頃、茉里の両親はディナーで幸せなひとときを過ごしているのだろう。
:09/11/23 23:18
:SH05A3
:☆☆☆
#383 [向日葵]
娘はボロボロなのに……。
少し恨めしい……。
「ねー、皆でなんか食べて帰ろうよー」
駅に着いてから綾香が言った。
私も帰ったところでな……
「行く人おー」
ほとんどが手を挙げる。
もちろん茉里も挙げる、つもりだった。
挙げるつもりだった手は、途中で止められた。
「悪い、俺たち用事があるから」
そう言って、止められた手をそのまま握られ、引っ張られる。
:09/11/23 23:18
:SH05A3
:☆☆☆
#384 [向日葵]
茉里は思考がついていけずにいた。
だって引っ張ってるのは。
「そ、そうすけ……っ!」
さっさと切符を買い、帰る方面のホームへ、宗助は一言も話さず引っ張っていく。
少し強引なくらいに。
一同は口を開けてポカンといった風な表情で2人を見送る。
こんな事をしてしまえば、きっと次の稽古ではからかわれる。
宗助が好まない状況になる。
それでも宗助は止まってくれず、あまり人が乗らないだろう乗車位置の場所で、ようやく止まってくれた。
:09/11/23 23:19
:SH05A3
:☆☆☆
#385 [向日葵]
息があがる茉里。
男子と女子とでは歩幅が違う。
そんな些細な事すら気にしないくらい、何かに没頭していただろう宗助は、未だ茉里の手を握ったままだ。
「……な、なに……」
「言わなきゃ、ならないことを、言っておかなきゃならないと思ったから……」
息と共に、動悸も早くなってくる。
じっと見つめられれば、息が止まる。
そんなにじっと、みつめないでほしい。
ちゃんと目が見れないじゃない……。
「今日言ったことは、忘れて」
:09/11/23 23:19
:SH05A3
:☆☆☆
#386 [向日葵]
「い……いつの……」
「医務室。“仮彼氏”のこと」
「……わかった」
不安がよぎる。
また違うの?考えすぎなの?
自惚れすぎなの?
もう……気持ちが通じることはないの……?
「そのかわり、別の頼みがある」
握ってる手が、さらに強く、けれど痛くならない程度に力をこめられる。
「こっち、向いてくれない?」
自分でも気づかないほど、茉里はうつむいていた。
:09/11/23 23:20
:SH05A3
:☆☆☆
#387 [向日葵]
でも期待と、期待を裏切られないかの不安で、頑なにうつむいたままだ。
すると握っていた手が放された。急に温かさがなくなったので、手の温度が下がる。
なんで放したのかと疑問に思う暇もなく、その手が、頬にきた。
触れられて一瞬ビクッと震えてしまう。
その手が、そのまま上を向かせる。
宗助と目があってしまう。
顔が赤くなっていくのが自分でわかる。
「俺を……加賀の彼氏にしてほしい」
:09/11/23 23:20
:SH05A3
:☆☆☆
#388 [向日葵]
茉里は目を見張る。
「……え」
かすれた声しか出ない。
ここには止まらない電車が通り過ぎていく。
その風で、2人の髪が巻き上がる。
前髪が長く、表情がわかりにくい宗助の顔が、それによってわかるようになる。
せつないその表情はは、今言った事が嘘ではないことを物語っていた。
「もう絶対に傷つけない。約束する。だから……」
一途であることは、とても罪だと思ったあの日。
:09/11/23 23:20
:SH05A3
:☆☆☆
#389 [向日葵]
もう諦めるしかないと思った。
諦めて、恋愛の仕方を変えようと思った。
だって自分のこの想いは、人を苦しめたり、傷つけるしか出来ない。
そんな気持ち、いらないと思ったから。
でも。
見開いた目から、一筋の涙が落ちる。
それはクリスマスで飾られたイルミネーションで綺麗に光る。
その光に、宗助は眩しそうに目を細める。
:09/11/23 23:21
:SH05A3
:☆☆☆
#390 [向日葵]
一途であれば、通じる想いがあるのを、こんな自分を求めてくれる人がいるのを、今わかった。
重いなんて思わない人が、こんな自分を1番だと言ってくれる人が、ここにいる。
それが、なにより嬉しくて、茉里は唇を震わせる。
喉が詰まり、声にならない嗚咽が漏れる。
「私が……それをどれだけ望んでたか……知ってるでしょ?そんなこと、訊かないでよ……っ」
:09/11/23 23:23
:SH05A3
:☆☆☆
#391 [向日葵]
その可愛くないOKサインに、宗助は柔らかく笑った。
頬に触れていた手が、頭にきたかと思えば、宗助の胸に引き寄せられる。
自分から触れたことはあっても、宗助から触れるのは初めてで、ドキドキと高鳴る心臓とは裏腹に、涙が次から次へと溢れて、止めることが出来ない。
宗助も安堵しているのか、抱きしめる腕に力をいれる。
:09/11/23 23:24
:SH05A3
:☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194