こいごころ
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#356 [向日葵]
「けど、アンタがどうでもいいから傷つけたんじゃない!いや、違う、傷つけたくなかった、絶対に!」
強い言葉が、胸に突き刺さって溶けていく。
まるで告白されてるような感覚になる。
まだそんな事思う自分に呆れたけれど、こんなに間近に鋭く見つめられては、勘違いしても仕方がないのかもしれない。
「あの時は、ああ言ったけど、今はわからない」
宗助は少し目をそむける。
「……何が」
:09/09/30 02:43
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#357 [向日葵]
小さな声だと自分でも思うくらいの声で訊いた。
「アンタの事」
「……どういう……こと……」
怖い。そう思う。
もう自惚れるのはこりごりだ。
散々痛い思いをしてきた。
心に傷を作って、闇色に染まるのはもう嫌だ。
だから、宗助の一挙一動、一言一句、それが全部怖い。
走馬灯のように、一瞬瞼の裏に、幼い頃の自分が映る。
枕に顔を埋め、中途半端に成長した心が、大声で泣くのを許さないように、声を押し殺して泣く。
:09/09/30 02:44
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#358 [向日葵]
もう大好きな人に、心を潰されるのは嫌だ。
奥深いところに隠された茉里の闇は、深いと言うよりは濃いのだろう。
その闇の色が。
再び目を合わせた宗助の目つきは、先ほどよりも切なく、けれど強いものだった。
「アンタに対する気持ちと、先輩への気持ちが」
耐え切れなくて、身を引こうとしたら、捕まれている腕に力を入れられて、引いた分宗助が近づく。
:09/09/30 02:44
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#359 [向日葵]
「頼む、逃げないで。嫌なんだ。アンタの後ろ姿を見るのは……辛い」
「そんな事言って……」
きっと、先輩ん選ぶ時なら、たとえ私の後ろすがたを見たとしても躊躇なき先輩の方にいくくせに。
「気持ちがわからない上で、俺から頼みがある」
「……なに」
言いよどむように、宗助は視線を泳がす。
時計の音と、少し離れた場所で試合の音が聞こえる。
そして宗助は驚く事を口にした。
「俺を……「仮彼氏」にしてくれないか」
驚きのあまり、目が落ちそうなほど目を見開く。
「なにを……い、言って……んの?」
:09/09/30 02:45
:SH05A3
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#360 [向日葵]
「アンタが言ってた「仮彼女」の制度とはまた違うけど、俺は自分の気持ちがはっきりとわかるまで、「仮彼氏」にしてほしい……」
しばらくは宗助の言葉に耳を傾けていた茉里だが、驚きに満ちていた顔が、宗助の言葉が最後に向かうにつれて今度は段々とその表情を曇らせていく。
途中から首をゆっくりと小さく横に振り、最後まで言った瞬間強く振った。
そして言う。
「いやよ」
強くはっきりと茉里が言うものだから、宗助は言葉を失う。
:09/10/12 03:25
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#361 [向日葵]
正直に言えば、否定はされないだろうなどと甘く考えていた。
きっと、茉里の気持ちはまだ完璧には離れていないはず。
ならばもう1度2人一緒にゆっくりと歩み寄ることを望めば、茉里はその思いに同意してくれるものだと思っていた。
しかし彼女の返事は、その甘い考えを見事に崩し、「何故?」と言う言葉すら宗助から奪った。
「気持ちがはっきり……ってことは、私じゃない可能性だってあるんでしょ?」
そう言われて宗助はハッとした。
茉里が言った事を、何も考えていなかった。
つまり、自分の提案は、茉里をまた傷つけることになるかもしれないのだ。
:09/10/12 03:26
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#362 [向日葵]
「……その時、私はどうすればいいの?」
「……それは」
「その可能性がないにしても、考えさせて。……私、今すぐ答えを出せない。……無理だよ」
せき止めていた涙がおさえれず、1粒、2粒と落ちていく。
「そんな簡単に決められるほど、いい加減な気持ちで宗助のこと好きになったんじゃない……っ!」
掴まれていた腕を乱暴に振り払って、茉里は医務室を出た。
背中でドアを閉めて、もたれたままズルズル座り込む。
:09/10/12 03:26
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#363 [向日葵]
胸がズキズキと痛い。
どういう痛みかはわからない。
それでも涙は流れる。
喉も、嗚咽をこらえればこらえるほど、焼けるように熱くなる。
自分が相変わらず馬鹿だと思った。
あんな真剣な顔をされて、真剣な声で話されて、もしかしたら先輩よりも自分を選んでくれたのかと期待した。
なのに彼から出た言葉は、「仮」彼氏にしてほしいだった。
しかもその内容にも、失望した。
:09/10/12 03:27
:SH05A3
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#364 [向日葵]
茉里の場合は、1人をこちらに向かせる事を目的としたことだった。
でも宗助は違う。
想う人が2人いて、もし1人の人に気持ちがしぼられれば、どちらかはもう……。
そうなれば、もしかすれば友達にすら戻れないほど立ち直れないかもしれない。
宗助は、そこまで考えてくれていたのだろうか。
いや、考えてくれてなかったよね、あれは……。
それなら私の気持ちは……。
届いてなんか、いなかったんだ。
涙はしばらく止まってくれなかった。
:09/10/12 03:27
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#365 [向日葵]
――――――――…………
「頭は平気?」
もう大丈夫だろうと医務室を出た宗助に話しかけてきたのは、皆から王子様と呼ばれている沢口だった。
肌の色の白さが、余計に王子様のような顔を際立たせ、制服を着れば、きって剣道で激しく動く沢口を想像出来ないだろう。
男同士ですら、声をかけられれば戸惑ってしまう。
「ああ、大丈夫」
「そう、それは良かった。……ところで訊くけど、医務室から出てきた加賀さんは、どうして目を腫らしているの?」
息を吸って、止めた。
沢口を改めてみると、微笑んでいるのに、まとっている空気は寒さすら感じるほど冷たいものだった。
「わからない。君は何を迷っているんだ。もう答えは出ているのだろう?でなきゃ他の男に喋りかけられている加賀さんを見て、あんな敵意丸出しの態度はとらない」
:09/10/12 03:27
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