こいごころ
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#491 [向日葵]
「お父さん……がね……」

ぽつりぽつりと紡がれたのは、まだ幼い親友を苦しめる出来事だった。

―――――――――…………

「おい久瀬!」

自分の世界から帰ってきたミュシャは、呼んだ宗助を見る。

「なに」

「勝手に行動するな。はぐれたらどうするんだ……って言っても遅かったか……」

⏰:10/06/06 23:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#492 [向日葵]
後ろを見れば、華名はいたが、栞がいなかった。
おそらく人波に紛れてどこかに行ってしまったのだろう。

「いやむしろいない方が……」

「え?なに?」

「いや別に。……ってか、アンタこそ茉里はどうしたのよ」

「いるじゃないか、ちゃんとここ……」

と振り返った宗助の後ろは、知らない人達が行き来してるだけだった。
固まり、言葉をなくす宗助。

⏰:10/06/06 23:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#493 [向日葵]
あまりのコントのような状況に、腹を抱えて笑い転げたくなったミュシャだが、宗助の前で素の自分をさらけ出すのには抵抗があった。

携帯をコートのポケットから出し、電話をするが、多分気づいてないのだろう、出てくれない。

その後何回かかけ直したが、やっぱり出ないので、諦めてメールを打つことにした。
神社の階段の横に、確か公園があったので、そこで待つと入れる。

⏰:10/06/06 23:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#494 [向日葵]
ミュシャ達も、その場に向かう。

屋台などがある近くのベンチで、華名だけが座り、ミュシャと宗助は立ったまま待つ。

「あ、そういえば宗兄いー」

ゆったりとした口調で、華名は宗助に話し掛ける。

「茉里ちゃんを好きになったきっかけってえー、なあにいー?」

思わず噴き出す宗助。そして咳込む。

「そ、そんなこと、なんで兄弟で語り合わなきゃならないんだよ!」

⏰:10/06/06 23:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#495 [向日葵]
「あらいいじゃない。私は1人っ子だから、そういうの憧れるけど」

「兄と妹だと、話題だって違うだろ。せめて兄貴とするならまだしも、なんで妹と……」

「男尊女卑いー。兄弟なんだからそんなのなしだと華名は思いますうー」

「男尊女卑て……」

頬を可愛らしく膨らませて、バタバタと足を振り、華名は茉里との馴れ初めをねだる。

⏰:10/06/06 23:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#496 [向日葵]
宗助からしてみれば、それはすごく難しいことのようだ。

まあ、コイツ変に格好つけだからな。

ミュシャは兄弟のやりとりを、1歩離れて面白そうに見る。
宗助は茉里にしろ華名にしろ、女の子には振り回される運命らしい。

もちろんミュシャは振り回してなどいない。
いつだって宗助よりも優位に立つことを考えている。

「ねえー、なんで付き合おうと思ったのー?」

⏰:10/06/06 23:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#497 [向日葵]
華名に頭を抱えはじめる宗助。

そんな2人を見つめながら、ミュシャはまた、昔に思いを馳せる。

そう、いつだって、相手より優位に立った。
その思いは、あの頃から変わらなかったけれど、より一層、強いものにはなった。

どんな時でも、私が守ってあげると。

―――――――――…………

まだ自分達にはわからない、でもわかる世界が、そこにはあった。

⏰:10/06/06 23:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#498 [向日葵]
茉里の話を聞いて、信じられないという思いで茉里を見つめていた。

あの優しく紳士らしい茉里のおじさんが、浮気……?
何かの間違いでは……?
でも、1回や2回の話ではないみたいだし……。

ポタポタと雫のしたたる音が聞こえる。
目の前で、茉里が静かに泣いている。

自分の家族が、壊れるのではないかという不安。
母の悲しそうな姿。
裏切りを繰り返す父。
その怒りを、どうすればいいかわからない迷い。

⏰:10/06/09 00:19 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#499 [向日葵]
この子は、1人で戦ってたの?

両親にも言えない。
かと言って、友達にも言えない。言ったところで、知恵の少ない自分達は、何も解決出来やしない。

ミュシャは、なんとも言えない気分で茉里を見つめる。
それは次第に怒りに変わり、そして絶望に変わった。

力になれない。
何も出来ない。
苦しんでいた友達に気づけなかった自分が、腹立たしい。

私は、今のこの子に、何が出来る?

⏰:10/06/09 00:20 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#500 [向日葵]
そう思う前に、ミュシャは茉里を抱きしめていた。
力一杯。
そして、茉里と同じように、静かに涙を流す。

ごめんね。
ごめんね。
守ってあげられなくて。
気づいてあげられなくて。
力になれなくて。

ごめんね……ごめんね……。
なんども、胸の中で繰り返す。

口にすれば、安っぽい言葉になってしまう気がして、出来なかった。
だから、抱擁でそれを示す。

⏰:10/06/09 00:20 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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