こいごころ
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#507 [向日葵]
「茉里ちゃん……?」

がやがやとうるさい人声の中に、澄んだ声が茉里を呼んだ。
茉里はその方を向く。

「やっぱりぃ!久しぶりだねえっ」

「千早先輩!」

千早先輩は駆け寄ってくると、嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、茉里の手をとってぶんぶんと振り回した。

されるがままになっていた茉里は、後ろに視線をずらすと、誰か男の人が立っていた。

「彼氏さん……ですか?」

「え?あ、うんそう。元カレ。まあ今カレだけどね。より戻したの」

⏰:10/07/07 02:28 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#508 [向日葵]
照れながら笑う千早先輩は幸せそうで、茉里も笑顔になる。

「茉里ちゃんも、宗助とうまくいってる?」

「宗助があんな感じなので、あんまり今までと変わらないと言うか……」

「まあ宗助がいきなり甘々になってもねえー」

キャラキャラと笑う千早先輩を、後ろの方にいた彼氏が呼ぶ。
それに返事した千早先輩は、「じゃあまたね」と爽やかに去っていった。

⏰:10/07/07 02:28 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#509 [向日葵]
先輩には沢山迷惑をかけた。
引っ張たいたり、暴言を吐いたり。
それでも、こんな後輩を許してくれる先輩が、茉里はすごく素敵に見えた。

「あちらはどなたですか?」

急に背後から栞が出てきた。
驚いた茉里は、文字通り跳びはねる。

「び、びびびっくりしたー!」

「先輩なんですか?仲がずいぶんと良いんですね」

「う、うん、色々とお世話になってて……」

「宗助が好きだった人ですよね?」

⏰:10/07/07 02:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#510 [向日葵]
なんでそれを?

驚きを隠せず、栞をじっと見れば、にこりと微笑まれる。

「宗助のことはなんでも知ってますよ。何歳までおねしょしてただとか、初恋は誰だとか」

「は、はあ……」

「でも不思議。あれだけ一途な宗助が、何故茉里さんと付き合うようになったんですか?」

何が言いたいのかわからないが、とりあえず自分がアピールしまくったと茉里は説明した。
アピールして、宗助が振り向いてくれたんだと。

しかし栞は、理解出来ないように首をかしげる。

⏰:10/07/07 02:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#511 [向日葵]
「なんかそれって、誰でも宗助にアピールしたら、宗助は誰にでもオーケー出してた感じですよねー」

その解釈に、茉里は眉を寄せる。
あまりに失礼な解釈の仕方だ。
例えばそこまでの道程になにかあったのかとか考えないのだろうか。
それとも茉里の説明がだめだったのか?

「茉里さん。宗助は、本当に茉里さんのこと、好きなんですか?」

神社に少しだけある灯りが、彼女の笑みを悪魔に見せる。
そして茉里は気づく。

これはもう、いい子でいるつもりがないと言っているんだ。

⏰:10/07/07 02:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#512 [向日葵]
だからわざと、意地悪なことを言ってくる。

「栞ちゃんって……私が嫌いなのね」

自分でも驚くほど冷静な声を出して、茉里は栞の勝負を真っ向から受ける。

「茉里さん、誤解しちゃいけませんよ。嫌いなんじゃないんです。―――大嫌いなんです」

笑みを浮かべていた栞の顔が、冷たいものに変わる。

「消えてほしいと思うくらいに……ね。だって、邪魔なんですもの」

言い返さなきゃ。
そう思うのに、過去の記憶が邪魔をする。

⏰:10/07/07 02:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#513 [向日葵]
電話に出れば、相手はクソ親父の浮気相手で、茉里を邪魔扱いした。

[あなた、ついて来ないでね]

胸の中が、煮えるように熱くなる。
醜い汚い感情が覆いつくし、それはやがて、自分を追い込むものとなる。

私は邪魔者。
私さえいなければ、宗助は、先輩を。
いや違う。そうじゃない。
宗助は、私を好きだと想ってくれたからそばにいてくれる。

そばに……。
―――――――いてくれるのかな……。

⏰:10/07/07 02:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#514 [向日葵]
だって父さんだってそうだった。

私たちが世界でいちばん大好きだって言ってくれてたのに。
大好きだって、愛してるって……。

なのに、裏切った―――――。


裏切った。
裏切った。

裏切り者。
うらぎりもの。
ウラギリモノ。

お前なんか―――――――…………。

「そういうアンタだって邪魔者で消えてほしいのよ」

⏰:10/07/07 02:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#515 [向日葵]
声が聞こえた。

この声……。
そうだあの時も、救われた。
その凛とした声が、闇に一筋の光を与えてくれた。

茉里は、栞の少し後ろに立っているミュシャを見た。
茉里があまりに遅いから、探しに来てくれたらしい。

茉里はぼんやりとミュシャをみつめる。
ミュシャはその美しい顔を怒りで歪めていた。
怒った顔は、尚も美しい。

「アンタだっていなけりゃ、今頃は茉里と、下で待ってるヘタレ彼氏と可愛い妹で年越してるわよ」

⏰:10/07/07 02:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#516 [向日葵]
「……宗助を悪く言わないで」

「アンタもアイツを侮辱してるようなもんよ。アイツが選んだ彼女を邪魔扱いしてるんだからね」

言い負かされた栞を放って、ミュシャは茉里のそばまでくると手を繋ぎ、待ち合わせの場所へと向かった。

茉里は、まだぼんやりとしている。

「しっかりなさい」

ミュシャが言う。

「茉里もアイツも間違ってなんかない。茉里は、アイツを信じなさい。アイツとアンタの父親は違うんだから」

その言葉に、茉里は醜く汚い感情を砂のようにさらさらと消せるようになった。

「うん……ありがとう、ミュシャ」

⏰:10/07/07 02:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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