こいごころ
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#51 [向日葵]
「西町駅降りて自転車で15分」
「それって答えになってない」
「個人情報には口が堅いもんでね」
そう言って、意地悪そうに笑う。
ああ……そうやって笑ったりするんだ……。
胸がきゅっと鳴る。
「その内調べてやるんだから」
「ご自由に」
踏み切りを渡り、駅に向かって歩く。
ふと、宗助が場所を移動した。
宗助を見るが、気にしてないように前を向いたままだ。
:09/04/18 02:44
:SO906i
:☆☆☆
#52 [向日葵]
そして車が通った時に気づく。
あ……車道側だったから……?
もうどうしよう……。どんどん好きになってしまうよ。
照れ隠しに、宗助の腕を軽くはたく。
いきなり叩かれた宗助は、明らかに嫌そうな顔をしていた。
「なに……?」
「紳士だね……」
「は?」
何の事だと言わんばかりに眉を寄せる。
「ありがとっ」
分からなくてもいいから、お礼が言いたかった。
:09/04/18 02:45
:SO906i
:☆☆☆
#53 [向日葵]
やっぱり、宗助には伝わらなかったけど。それでもいいから言いたかった。
「宗助はずっと剣道してたの?」
「中学の時から」
「ああ、だから強いんだ」
改札を通って、階段を上がる。
「俺なんてまだまだだよ。もっと強くなりたい。そしていつか……」
言いかけて、宗助は口を閉ざす。
茉里は首を傾げる。
宗助は気まずそうにして息を吐く。それが微かに腹立たしげだったのは、気のせいだろうか。
:09/04/18 02:45
:SO906i
:☆☆☆
#54 [向日葵]
「ホントに、アンタはいいのか?」
「え?何が?」
「仮彼女の事だよ」
「何を今更」
茉里は笑うが、宗助はそうもいかなかった。
「……俺じゃなくても、アンタなら他にいるだろ」
「あ、今カチーンときた」
ムカついたのか、茉里の目が据わっていた。
「じゃあ訊きますけどっ!宗助は他に好きな人作れって言われたら実行出来るのっ!?」
それを言われた宗助はハッとして、うつむく。
:09/04/18 02:46
:SO906i
:☆☆☆
#55 [向日葵]
「無理強いはしない。だから好きなままでいいって言ったの。2度も説明させないでよっ!分かった!?」
宗助はすまなそうに更にうつむく。
そして呟くように「うん」と言った。
茉里も強く言いすぎたかと困って、視線を泳がす。
自分はこんなにも怒る権利なんてない。
無理強いはしないと言ったが、この提案自体が無理強いしてる事ぐらい自覚はしている。
なんか……宗助を好きになってから、恋愛がドンドン難しいものに思えてきた……。
そう思っても、宗助を諦めるなんて、絶対出来ないのだけど。
:09/04/18 02:46
:SO906i
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#56 [向日葵]
「千早先輩越したいなら、もっと練習しなきゃね」
その言葉に、宗助はがばっと顔を上げる。
「どうして分かったんだ」
「分かるわよ」
君の事なら……。
どんな動作も、ゆっくりしてるくせに、先輩が絡めば早くなる。
それでもいいよ。宗助が笑ってくれるなら。
宗助と目が合う。
微笑めば、またあの不器用な笑顔を返してくれた。
そう、今はこれだけでいいの。
:09/04/18 02:47
:SO906i
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#57 [向日葵]
――――――――――…………
「不毛」
「へ……」
休み時間のお喋り中。
昨日の出来事をミュシャに喋ったところ、今のような返事が返ってきた。
予想外の返事に、茉里は目が点になる。
「最後に茉里が泣くに1票」
「そ、そんなのわかんないじゃない」
「今までのどんな恋愛よりも今回のが1番分かりやすいよ」
ミュシャは冷たく言う。
茉里は口を尖らせる。
:09/04/19 01:51
:SO906i
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#58 [向日葵]
不毛……か……。
まだ始まったばかりなのに、そんな事を、しかも1番の友達であり親友であるミュシャに言われてしまっては、やっぱりヘコむ。
今までどんなことも、なんだかんだ言いながら応援してくれたのに、どうして今回ばかりはそんなに冷たいのか。
「じゃあ、私が泣き言言っても慰めてくれない?」
「さあね」
やっぱり冷たいの。
「でも……」
ミュシャが言葉を続ける。
「失恋決定の時は、一緒に泣いてあげる……」
:09/04/19 01:51
:SO906i
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#59 [向日葵]
茉里は顔を明るくさせる。
やっぱりミュシャは好きだ。
自分を突き放したり、薄情な事をしない。
性格はクールだけど、心はあったかい。
「ありがとうっ」
机から乗り出して、ミュシャに抱きつけば、いい香りがした。
まるで、お花のような。
千早先輩も、時々いい香りがする。
ふわりと、嫌味のない、シャンプーか、洗剤の香り。
他人の匂いというのは、意外にも鮮明に覚えているもので、その人を思い出せば、同じく匂いも思い出す。
:09/04/19 01:52
:SO906i
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#60 [向日葵]
宗助も、思い出すのだろうか……。
ちらりと、窓際の席に座っている宗助を見る。
降るか降らないか、不安定な曇り空をぼんやりみあげている。
今日こそ、先輩が来てたらいいなとか、考えていれのかもな……。自分の事も、思い出してくれればいいのに……。なんて、贅沢か……。
「そうそう、昨日、うちの学年の女子が、変質者に会ったって」
「うそ!その子大丈夫だったの?」
「通りすがりの人が助けてくれたんだって。でも、茉里も気をつけてね」
:09/04/19 01:52
:SO906i
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