こいごころ
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#557 [向日葵]
泣き腫らした顔では教室に帰れないので、栞は屋上にいた。
残りの授業をサボって、ただここで涙を流していた。

下では、生徒が下校している。

仲のよい友達同士、笑い声をあげて、楽しそうに帰っている。

自分も、素直にああして帰れない。
出来ないのは……恐がってる自分のせいだ。

栞はひそかにここへ来たことを後悔していた。

⏰:10/10/28 13:12 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#558 [向日葵]
もう何も出来ないではないか。
宗助とのことも、もう無駄だということと向き合ってしまった。
あとは、それを認めるか、それでも邪魔をするかしかない。

そうして考える度に、ミュシャの言葉が頭をよぎり、さっきからもう何度も同じことを繰り返していた。

「栞?」

聞き慣れた声がした。
振り返ると、そこには宗助がいた。

「どうしたんだ?その顔っ!」

⏰:10/10/28 13:12 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#559 [向日葵]
心配そうに栞のもとに駆け寄る。その姿を見るだけで、胸がいっぱいになる。

こんなに好きなのに、どうして届かないの……っ。

「宗助の馬鹿ぁ……っ!!」

心配したのに、いきなり罵声を浴びせられて、宗助は目が点になった。
宗助が近くまで来た途端、栞は理性というタガが外れて、思ったことしか口に出せないようになった。

⏰:10/10/28 13:13 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#560 [向日葵]
「勝手に彼女なんて作らないでよ!あたしのこと、妹みたいにしか思ってないのわかってるけど、いい加減気づいてよ!あたし、あたし……っ、宗助が好きだったのに……っ!」

宗助は少し驚いたような顔をしてから栞の声に静かに耳を傾けた。

「大好きで……、いつか、宗助のお嫁さんになるって本気で思ってたあたしって……ただの馬鹿じゃない!ただのガキじゃない!どうして……っ、どうしてあたしじゃダメなのよ!どうして、突然出てきたあの人なのよ!」

「栞……」

⏰:10/10/28 13:13 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#561 [向日葵]
「もうちょっと待っててよ!そしたらあたし、宗助と釣り合えるぐらいの女の子になってた!なれてた……っ!なのに……、な、な……、なのにいいーっ!」

保健室では堪えることが出来たのに、本人を前にすると、もう無理だった。
ただ駄々をこねる子供みたいに、「なんでよーっ!」と叫びながら大声で「うわーん!」と泣いてしまった。

言いたいことが溢れる度、一際声が大きくなった。

幸せを祈るってどうしたらいい?難しくて、難しすぎて、あたしには、もうわからない。

⏰:10/10/28 13:14 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#562 [向日葵]
喉の奥が、焼け付くように痛い。
胸の奥も同じくらい痛かった。

もどかしいこの気持ちを、一体どこに持っていけばいいかわからなくて、気がつけば右手に力をいれて、振り上げていた。

渇いた音が、もう暗くなり始めた空に響いた時、栞は初めて宗助を殴ったことに気がついた。

ハッとして、宗助を見上げたが、彼は怒りもしないで栞をじっと見つめていた。

「ごめんな……」

⏰:10/11/14 12:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#563 [向日葵]
そう言いながら栞の頭を優しく撫でる。

「それだけ好いてくれてたのは、栞がオレを兄貴として懐いてくれてるからだとずっと思ってた。だから、気づいてやれなかった」

今まで、そうやってなだめられることはあったが、こんなに優しい声を出す宗助は初めてだった。

例えそれが同情でも、栞はもう良かった。
宗助が、ちゃんと耳を傾けてくれているだけで、もう良かった。

「栞の気持ち、嬉しいよ。正直、時々お前はわからない時があるから、こうやって吐き出してくれて良かった」

⏰:10/11/14 12:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#564 [向日葵]
髪の毛の間を、宗助の指先が時々とおる。
その感触が、今だけ自分を女の子として扱ってくれていることが、栞にはよくわかった。

不器用な宗助。

でもそんな彼だからこそ、栞は好きになったのだ。

あの人も、そうなのかな……。

一瞬浮かべる、柔和な笑顔が眩しい。

⏰:10/11/14 12:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#565 [向日葵]
初めて会った時から、彼女がまとう穏やかな雰囲気は嫌いじゃなかった。
なんと言ったって、あの華名が懐いているんだから、決して悪い人ではないということはわかった。もしかしたら仲良くしたかったのかもしれない。

そう言い出すのは、時間がまだかかりそうだけれど。

頭を撫でている宗助の手を、栞はゆっくりと握る。
一瞬、まるで何かを祈るようにしてギュッと力を入れた後、栞は屋上を後にした。

――――――――…………

「あ、宗助え」

⏰:10/11/14 12:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#566 [向日葵]
もう誰も残っていない教室に、茉里はいた。

今朝のくだらない喧嘩はミュシャによりおさまり、もうすっかり喧嘩をした気配すら漂わせていない茉里は、課題のプリントをしていた。

「今日部活休みで良かったー。急に宗助いなくなるんだから、皆に居場所きかれても困るとこだったよ」

身支度をする茉里に、宗助は何も言わずゆっくりと近づく。

「久瀬は?」

「ミュー?ミューならとっくに帰ったけど」

⏰:10/11/14 12:53 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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