こいごころ
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#871 [向日葵]
「と思うのは罪かしら、綾香」

「罪というより、それはただただサディステイックだよ茉里ちゃん」

防具をつけてる綾香に、茉里は話しかける。
一方の茉里は、昨日片付けきれなかったコップを洗っている。

「だって、見てみたいじゃない。宗助が私に焦るとこ」

せっかくのカップルイベント、バレンタイン。
ならば宗助が、茉里を誰かにとられてしまうんじゃないかと焦るところを見てみたいと茉里が言い出したのは、つい先ほど。

ちなみに宗助にまだチョコ、ならぬクッキーは渡していない。

⏰:11/08/20 13:09 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#872 [向日葵]
帰りに渡すつもりだ。
そう言ったら宗助が「俺の手伝った意味は……」とグッタリしていた。

「笹部くんが茉里ちゃんのこと好きなのなんて、見てればわかるじゃない」

「よくよく考えてみればね、宗助になにかあったりしたら、焦ってるのっていつも私ばっかりな気がするのよ。たまには私がそれを味わいたい」

「笹部くんも大変ね」

苦笑いを浮かべて、綾香は面を置きに行った。

⏰:11/08/20 13:10 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#873 [向日葵]
んー……。
確かにやりすぎかもしれないけど、やりたいと思っちゃったらやりたくてうずうずするのよね。

泡のついた手を、冷たい水で洗い流し、近くのタオルで拭いた後、ポケットにあるカイロで手を暖める。
すると、綾香が声をあげた。

「千早先輩!」

茉里は考えるより早く、洗面所から道場入り口が見える場所にうつった。

⏰:11/08/20 13:11 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#874 [向日葵]
そこには、正月あった時よりも少し髪が伸びて、大人っぽさがさらに増した千早先輩がいた。
マフラーをまいて、寒さで鼻を赤くしている姿が、大人っぽさの中にあどけなさを残し、彼女の魅力を引き立てていた。

「えへへ、久しぶり。今日はね、防具を取りにきたの。皆はー……まだなんだね」

掃除当番に委員会が重なって、今道場にいるのは茉里と綾香だけだった。

「あとこれ、女子のみんなで食べて」

茉里に渡されたのは、3つほどにわけられた小さな可愛らしい紙袋。
中身は言わずともわかる。

「女子だけでいいんですか?」

⏰:11/08/27 00:12 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#875 [向日葵]
今日は一般的に言えば男子のほうに渡すべきだと思うが。

「もちろん。男子よりも女子の後輩のほうが大事だし」

「それ男子がきいたら泣きますよ」

笑う茉里につられて、千早先輩。

「さて、と、お母さん車に待たしてるから早く行かなきゃ」

「あ、ごめんなさい。運ぶの手伝います」

「ありがとう」

⏰:11/08/27 00:13 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#876 [向日葵]
手伝うほどの荷物なんてなかった。
ただ先輩といたかった。

暗黙の了解かのように、千早先輩は竹刀袋を持たせてくれて、正門まで運ばせてくれた。

綾香は皆が来ては駄目だからと、ついて来なかった。

「ありがとうね。それにしても、まだ寒いわねー」

「あ、よかったらカイロ持ってますんでどうぞ」

「いいよ、茉里ちゃんが寒い……ん?なにか落としたよ?」

⏰:11/08/27 00:13 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#877 [向日葵]
カイロを出す時、一緒に落とした紙切れ。
それは今朝配られた、「蛍の光」の歌詞が書いたものだった。

簡単かつ適当にたたんでいたので、落とした拍子に軽く開いてしまった。

それを見ながら、千早先輩は眩しそうに目を細め、微笑む。

「私たちの、番なのね……」

「先輩……」

⏰:11/08/27 00:14 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#878 [向日葵]
「私はね、先輩たちが卒業するのがさみしくて、これを歌いながら泣いたたんだ。とても素敵な先輩だったから。それを今度は歌ってもらう番なのね」

「先輩も素敵な先輩でしたよ」

紙を丁寧に折りたたんで、茉里に渡す千早先輩は、とても嬉しそうに笑う。

「そう言ってもらって嬉しい。茉里ちゃんには、私の無神経なことが原因で傷つけてばっかりだったから」

「そんな……。あれは私が……」

⏰:11/08/27 00:14 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#879 [向日葵]
「それも思い出として残っていくのね」

「ここに」と呟きながら、千早先輩は胸に手を当てる。
いとおしそうに、目を瞑って。

茉里はなんと言っていいかわからず、そんな千早先輩をただみつめることしか出来なかった。

やがて目を開けた千早先輩は、またにっこりと微笑む。

「次に会うのは式ね。一緒に写真撮ろうね。じゃあ」

「あ、先輩!」

⏰:11/08/27 00:14 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#880 [向日葵]
車に乗りかけた千早先輩を、茉里は止めた。

なにか言わなきゃいけない。
今までのこと、これからのこと。先輩への賛辞、自分のこと。

しかし茉里がきいたのは、そのどれにもあてはまらないものだった。

「素敵な先輩は、どうしたらなれますか」

茉里の問いを馬鹿にすることなく、少し考えてから千早先輩はにっこりと笑って答えた。

⏰:11/08/27 00:15 📱:P04C 🆔:☆☆☆


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