こいごころ
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#903 [向日葵]
「知らないなあ。本当にいる人なの?適当に名前言ってない?」

適当で「笹部」って名字が出てくるって、どんだけ発想力というか想像力豊かだよ私。

ツッコミを入れつつ、縮められた距離を密かにひろげ、茉里はこの場からどうにか逃げようとした。

「とりあえず、私は先輩とはお付き合い出来ません。ごめんなさい」

鞄を持つと同時に、その手がつかまれた。
思わず「ひっ……」と声が出る。

「人が真剣に告白してるのに、逃げようなんてしないでくれる?」

⏰:11/09/10 01:27 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#904 [向日葵]
前川が言ってることは確かにもっともな意見だが、彼の告白はだんだんと意地が入ってきているようで、これは最早告白ではなく、欲しいものが手に入らないと気に入らないという駄々っ子のようなものだ。

そんなオモチャのような扱いをうけて、真剣もなにもないと思うが、多分正論を言っても通じやしないだろう。

だから余計にややこしい。

茉里は内心頭を抱えた。

「お返事はしました。そちらが納得いってもらわなくても、私はあなたと付き合うつもりはないんです。手を、離してください。叫びますよ」

きっと、まだ他の教室に残ってる人はいるはず。
声や物音をきいたから。

⏰:11/09/10 01:28 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#905 [向日葵]
「叫んでもいいけど、一体何人が君が助けを呼んでるって思うかな」

今日は卒業式。
卒業生がふざけてるのではと考えるか、在校生がふざけてると考えるか。
誰が本気で助けを呼んでるなんて気づくのだろう。

たちが悪いのに捕まったものだと悔やむが、悔やむより今は恐怖のほうがはるかに大きい。

「な、なにをする気……?」

訊いても仕方ないことを訊く。
いや、むしろ訊かなければよかったと後悔するか。

前川が意味深に、そして怪しく笑うから、茉里は怯えそうになるのをこらえて毅然と前川をにらむ。
それでも、もう膝は小刻みに震えている。

宗助。
助けて、助けて、助けて。
お願い、助けて……っ。

⏰:11/09/10 01:28 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#906 [向日葵]
足を後ろに移動させても、机の足にガタリとあたる。

茉里はつかまれていないほうの手で鞄を持ち直すと、素早くそれで前川を殴った。
弱い攻撃だったとはいえ、怯んだ隙に茉里は教室を出る。

「テメェ……っ!!」

ドアから出て、全速力で走ろうとした時、なにかにぶつかる。
よく知る匂いと共に。

「茉里!?どうした!」

「宗助!!」

茉里は安心して腰が抜ける。
それを宗助が支える。
ふと前を見ると、宗助たちの数メートル先に、息を切らせた前川がいた。

「……あなたは?」

⏰:11/09/10 01:29 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#907 [向日葵]
「おれは……」

「彼女になにをした?」

いつもより更に低い声で宗助が問う。
支えてる茉里の体が震えているとわかれば、声は凄みを増した。

「訊いてるんだ。なにをした。答えろよ」

それでも、前川は答えなかった。
眉間にしわを寄せ、悔しそうに押し黙っている。

宗助は茉里をやさしく離す。
茉里は壁に背を預け、ずるずると廊下に座り込んだ。

宗助はつかつかと前川のそばまでいくと、胸ぐらをつかみ、肘をつかって前川を壁に思い切り押しつけた。

⏰:11/09/10 01:29 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#908 [向日葵]
*アンカー*
>>817

⏰:11/09/10 01:44 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#909 [向日葵]
前川は胸と背中の衝撃に、少しむせた。

「彼女があれだけ怯えるようなことをしたのか?アンタ卒業生だよな。このこと先生に報告して、今すぐアンタの進路先に影響するようにしてやろうか」

「お前たち二人だけで出来るか」

それが唯一の抵抗だった。
宗助はより一層表情を冷たくして、「確かにそうかもしれないな」とあっさり認める。
それと同時につかんでいた胸ぐらから手を離したかと思ったら、瞬時に前川の左頬を殴り飛ばす。

前川は勢いよく横に飛んだ。

「じゃあ、しばらく動けない体にしてやろうか」

茉里は驚いて口をあんぐりと開けていた。
あの宗助が、キレている。
普段温厚な人ほど怒れば恐いとよく言うが、それを目の当たりにした時、嬉しいやら安心したやらより、ただただ驚きが優先された。

更に宗助が、前川を殴ろうと足を動かしたので、茉里は慌てて止める。

「そ、宗助やめて!もう、いいから……っ」

⏰:11/09/24 20:54 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#910 [向日葵]
茉里の声に反応した宗助は、ぴたりと動きを止める。
その隙に前川はよろよろと、しかし急いでその場を離れ、逃げていった。

遠ざかる足音をききながら、茉里は宗助の後ろ姿を見つめる。

「……ごめん」

もういつもの宗助の声だ。

「宗助」

「もっと早くくればよかった。こんなことに、まさかなってるだなんて、思わなかったから」

宗助はゆっくりと茉里のほうへとやって来て、しゃがみ、茉里と目線を合わす。

「立てる?」

「まだ……。ごめん」

「アンタは謝る必要ないだろ」

宗助はひょいと茉里を、いわゆるお姫さま抱っこをし、さっきまでいた教室に運ぶ。
このまま道場行っても、ひやかされるだけだ。
落ち着くまではここにいることにした。

⏰:11/09/24 20:55 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#911 [向日葵]
行儀は悪いが、茉里を机に座らせた。

「なにされた?」

「迫られそうになったの。ちょっと乱暴気味に。でも、攻撃したら、怯んだから」

それでも、圧迫されそうな空気を思い出せば、手が少し震える。

宗助は傷ついたように顔を歪ませ、茉里をゆっくりきつく抱きしめた。
その力強さが心地よくて、茉里は宗助の肩に顔をうずめる。

「恐い思いさせた。ごめん」

「大丈夫だよ宗助。探しにきてくれて、ありがとう」

お礼を言えば、宗助はまたきつく茉里を抱きしめる。

⏰:11/09/24 20:55 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#912 [向日葵]
カチャとなにかきこえたと思ったら、宗助が体を離す。
茉里が宗助を見れば、宗助が眼鏡を外していた。

どうして、と訊く前に、柔らかく唇が押しつけられた。
驚いたけれど、茉里はすぐに身を委ねた。

唇を重ねながら、またきつく抱きしめられれば、口づけが深くなる。

宗助が怒っている。
前川に。
自分に。

そして主張している。

茉里は自分のものだと。
誰にも渡さないと。

唇から、言葉を発しなくてもわかる。
だから茉里も答える。

何度も離れては重ねを繰り返し、次第に息もあがってくる。
それでも宗助は止めなかった。

⏰:11/09/24 20:56 📱:P04C 🆔:☆☆☆


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