こいごころ
最新 最初 🆕
#913 [向日葵]
舌が絡みあえば、茉里はさっきまで恐い思いをしただなんてことは遥か忘却の彼方にやってしまっていた。

「宗……す……け……」

離された時に紡いだ宗助を呼ぶ声がひどく甘くきこえて、茉里は恥ずかしくなる。

その声をきいた宗助は、なにかに気づいたように、触れるだけのキスをして終えた。

全力疾走したあとのように胸がうるさい。

「嫌だった?」

息切れしているけれど、宗助の言葉ははきはきしていた。
そしてその声は、さっき茉里が発した声と同じくらい甘く感じた。

「ち、違うけど……あの、歯止めがきかなくなりそうで、このままだと……」

⏰:11/09/24 20:57 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#914 [向日葵]
「うん」

「状況が状況だし、ましてや今から道場に行くわけだし」

「うん」

「えーっと、あのー、宗助くんきいてます?」

「きいてるけど?」

きょとんとした顔で首を傾げる。

「続きをしたいけどあんな後にするのはあまり望まない。出来れば違う機会がいい。更に言えば先輩たちが待ってるのに更に待たすようなことをするのは気が引ける。そう言いたいんだろ?」

「そんな事細かに説明しないで!こっちが恥ずかしいじゃない!」

ときどき宗助は大胆になるから困る。
多分引き金は良くも悪くも茉里だ。

もう茉里はおかしくなって、くすくす笑いだす。
宗助はそんな茉里を見て、ホッとしたように笑う。

⏰:11/09/24 20:57 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#915 [向日葵]
「立てる?」

「うん!行こっか」

ぴょんと机から降りた茉里は、宗助の手をとり、指を絡める。
宗助は恥ずかしいからと嫌がらず、指を絡め返す。

顔を見合わせて、また二人で微笑みあったあと、茉里は外を眺めた。

青い空が広がってる。
自分たちが卒業する頃も、こんな空だったら嬉しいな……。

そんな光景を思い浮かべれば、いとおしいような、せつないような気持ちになった。

「あ、ところで宗助、どうしてもどってきたの?」

「…………内緒」

⏰:11/09/24 20:58 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#916 [向日葵]
千早先輩や綾香はただ芝居をしていただけだったし、宗助もその芝居に気づいてはいない。
まさか本当にそうなっていたとは思わなかった。

でも、もどってきてよかった。

そう思った宗助は、ちらりと茉里を見る。
茉里は「ちぇっ」とすねているが、どこか楽しそうだった。

そんな彼女を、また抱きしめたいようなくすぐったい気持ちになり、宗助は静かに微笑んだ。

この気持ちをなんと呼ぶか、二人はちゃんとわかっている。

これは―――――…………。



――――――――
――――――――――…………

暑さでやる気がなくなる。
そんな季節に、また一つの別れの時がやってきた。

会場は人で溢れかえっている。

冷房がかかってても意味がないくらいの熱気だ。

今日は、3年生最後の試合だ。

茉里は宗助について、選手や先生、審判しかいない会場にいた。

「竹刀、全部検査引っかからずにいけたみたい」

「よかった。使いなれたやつもあったから、それが使えなかったら新しいの使わなきゃならないとこだった」

「面紐とか大丈夫ね?あと最初の試合たすき赤だっけ?白だっけ?」

⏰:11/09/24 20:58 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#917 [向日葵]
あれやこれやと動く茉里を見て、宗助は笑う。

「少しは落ち着けよ。大体、なんでアンタがわたわたしてるんだよ。普通逆だろ」

しかしそれを見て少し緊張がほぐれているのも事実だ。

「そりゃ私だって緊張するにきまってるじゃない!言わば今日の為に三年間頑張ってきたんだから!」

「心配しなくてもちゃんと勝ってくるよ」

にやりと笑う宗助に、どきりと胸が高鳴る。
茉里はふと気づいたように、自分の左手首をそっと握る。

「私だって信じてるけど……。油断は大敵なんだからね!同じトーナメントには、沢口くんだっているし……」

「俺より沢口のほうが強いって思ってんの?」

「そうじゃなくて!気は抜いちゃ駄目って言いたいの!」

⏰:11/09/24 20:59 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#918 [向日葵]
それに。

「私がいるんだから、負けたりしないでしょ?」

そう言うと、宗助はなんとも言えない顔になった。
驚いたような、困ったような……。

しまった、と茉里は思った。

宗助は試合前などはこういうカップルらしいことを好まない。
実際、付き合う前、気が散るからやめてくれと言われた。

ああ、自分の馬鹿……。
なにもこんな時にこんな雰囲気になるこてないじゃない……。

宗助ははっと試合場を見ると、隅に片付けておいた面と竹刀を出し、つけ始めた。
もうすぐ試合だとわかれば、茉里は冊子を見て、袋から赤のたすきを出し、背中で交差してる部分の胴紐につけた。

⏰:11/09/24 21:00 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#919 [向日葵]
アンカー
・100区切り・
>>817

・50区切り・

>>2-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

⏰:11/10/01 19:21 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#920 [向日葵]
あのままの会話で終わるとか、すごく気まずいんですけど……。

心の中で、茉里は肩を落とす。

面をつけ終えた宗助は、ウォーミングアップをかねて、小さく数回ジャンプする。

「宗助!」

面をつけている宗助にききやすいよう、ほぼ叫ぶように宗助に話しかける。

宗助は気づいて、茉里のほうに首を動かせた。
なにも言わず、茉里の言葉を待つ。

「さっきのこと忘れて!ごめん、くだらないこと言って!」

「なんで?忘れないよ、おれは」

え?

「茉里がいるから力が出るのは、当たり前だろ?」

「だって宗助、前……っ!」

⏰:11/10/08 12:45 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#921 [向日葵]
言いかけると、小手をはめた手で、宗助は茉里の額を軽く小突く。

「今と前じゃ、関係が違うだろ」

前は仮彼女だった茉里。
今は、本当の……。

意味を理解して赤くなる前に、言った張本人の宗助が赤くなっていた。

「ごめ……、さすがになんか、クサかったと言うか……」

「宗助さ、私に恥ずかしがる基準がわからないとか言ってたけど、宗助も大概だからね」

「うるさい……」

宗助がなにかに気づいたように、試合場を見る。
そしてさっきよりも表情を硬くして、茉里のほうを向いた。

「じゃあ行ってくる」

⏰:11/10/08 12:45 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#922 [向日葵]
「うん!力一杯応援する。そしたら宗助、勝ってくれるんでしょ?」

「ああそうだな。それが―――」

宗助が茉里の頭をポンポンと撫でて、眩しいくらいの笑顔を向ける。

「恋心ってやつだろ」

宗助はそれだけ言って行ってしまった。
茉里はさっきの宗助の笑顔や言葉で、目を見開いて顔が赤くなったまま固まった。
が、そんなことしてる場合じゃないと、すぐにスコアと、宗助の竹刀袋を持って、空いている場所に応援として座りに行く。

ああもう、まったく。
こんな大事な時まで厄介だ。

心はいつも自分の意に反して行動する。
思い通りになんかなったことがない。

⏰:11/10/08 12:46 📱:P04C 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194