サークル ー番外編ー
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#101 [柚子]

この後、純くんが亮太さんに

「部長なんだからお前が買ってやれよ」

と、私の自転車のお金を払わされそうになっていた。

⏰:09/06/23 20:22 📱:P906i 🆔:FroRXXEo


#102 [柚子]

空さんからは

「賄賂でも渡したんだ」

って問い詰められてた。

結局は

「私か亮太のどっちかって話だったんだから、今回の話は無効だ!」

⏰:09/06/23 20:23 📱:P906i 🆔:FroRXXEo


#103 [柚子]

という空さんの一言で、部長は誰かって話はひとまず保留になった。

最後にちょっとした騒ぎはあったけど、私は部費と称した亮太さんのポケットマネーで、新しい自転車を買ってもらった。

そして私は、今まで通りの生活に戻った。

⏰:09/06/23 20:24 📱:P906i 🆔:FroRXXEo


#104 [柚子]

みなさんも、何か非日常的なことでお困りの際は、あの部室を訪ねてみて下さい。

きっと彼らが、その悩みを解決してくれます。

ちょっとだけ騒がしくて、変わった人たちですが…。

⏰:09/06/23 20:25 📱:P906i 🆔:FroRXXEo


#105 [柚子]


case.1 千晃

>>2-104


⏰:09/06/23 20:29 📱:P906i 🆔:FroRXXEo


#106 [柚子]

case.2 門倉

雨の日だった。

その音は、雨でびしょ濡れになった人間が歩く足音を想像させた。

ペタペタと地面を歩く音に気付いたのは、眠りにつこうと布団に入った時だった。

⏰:09/06/24 14:49 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#107 [柚子]

クーラー代をケチって、部屋の窓を全開にしていた俺の耳は、その奇妙な音を拾った。

(傘パクられたのか?)

朝から雨が降っていたのに雨に打たれながら帰宅する理由はそれくらいしか思い付かなかった。

⏰:09/06/24 14:50 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#108 [柚子]

さらに言えば、その音が何故奇妙なのかという理由については考えることさえしなかった。

いくら窓を開けていたとは言え、自分の住んでいるマンションに帰ってきた人間の足音など聞こえるハズがないのに。

だけど俺は確かに感じた。マンションのエントランスを歩く雨に濡れた足音を。

⏰:09/06/24 14:51 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#109 [柚子]

次の日の夜、半分眠りにつきかけていた俺の耳にまたあの足音が聞こえた。

(昨日の人か?)

何が起きたら、二日も連続でびしょ濡れになるのか。何となく不思議に思い、俺は耳を澄ませた。

⏰:09/06/24 14:52 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#110 [柚子]

足音の人物は、エントランスから階段へ向かったようだった。

六階建ての俺のマンションには、エレベーターと非常階段がある。

その為、五階に住んでいる俺が階段を使ったことは一度もない。

⏰:09/06/24 14:53 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#111 [柚子]

わざわざ階段を使うなんて面倒くさい。それだけの理由だ。

一瞬何か引っ掛かったものの、すぐに二階に住んでいる人間だろうと勝手に納得し、眠りについた。

何かおかしい。

⏰:09/06/24 14:54 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#112 [柚子]

そう感じたのは、三日目の夜だった。

その日は連れが泊まりに来ていた。

夕方、大学から帰宅してすぐに飲み始めた俺たちは、11時を回る頃には横になっていた。

⏰:09/06/24 14:55 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#113 [柚子]

会話も減り、二人でテレビを観ていた時だった。

「トイレ貸して」

と、連れが立ち上がりトイレへ向かった。

トイレは部屋のドアの向こう、廊下の横にある。

⏰:09/06/24 14:56 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#114 [柚子]

連れがドアを閉めた音と、あの足音が聞こえてきたのはほぼ同時だった。

(またかよ…)

さすがに変に思った俺は、トイレから戻った連れに話しかけた。

⏰:09/06/24 14:57 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#115 [柚子]

「そういやさぁ、何か変な奴がいるんだよ」

「変な奴って?」

「何かいっつも雨に濡れてんの」

「は?」

意味がわかんないって顔をしている連れに、俺は足音の話をした。

⏰:09/06/24 14:58 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#116 [柚子]

「それってさー…」

俺の話を聞いた連れは、火をつけたばかりの煙草の煙を吐きながら言った。

「幽霊じゃね?」と。

最初俺は笑い飛ばした。幽霊何かいるわけねぇじゃんって。

⏰:09/06/24 14:58 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#117 [柚子]

「でもさー」

と、連れは窓に目をやりながら至って冷静な口調で言った。

「今日雨降ってないし」

全身に鳥肌が立った。俺の記憶でも、今日は一度も雨は降っていなかった。

⏰:09/06/24 15:00 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#118 [柚子]

「は?じゃあ何であいつびしょ濡れなの?」

一瞬ビビってしまったのを隠そうと、俺はわざときつい口調で言った。

「だからー…幽霊じゃねぇの?」

そんな俺の気持ちを無視して、連れはもう一度、幽霊という単語を口にした。

⏰:09/06/24 15:01 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#119 [柚子]

他に話すような話題もなかったこともあって、俺たちはその謎の足音について話をした。

「そもそもさー、五階に住んでるお前にエントランスにいる人間の足音が聞こえるわけねーじゃん」

するどいツッコミを入れた俺の連れは、新しい煙草に火をつけた。

⏰:09/06/24 15:02 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#120 [柚子]

「お前賢いな!やっぱ法学部は言うこと違うわ」

必要以上に俺に尊敬の眼差しを向けられた連れは、フーっと煙を吐きながら笑った。

「二つ目の疑問点は、何故びしょ濡れなのか…だな」

⏰:09/06/24 15:03 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#121 [柚子]

俺の言った法学部という言葉を意識したのか、弁護士みたいな口調だった。

「てっきり雨に濡れたんだと思ってたけど、違うんだよな?」

俺は窓に目をやった。雨どろこか月がハッキリと見えるくらいの空だった。

⏰:09/06/24 15:04 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#122 [柚子]

「幽霊だと仮定するなら、雨の日に死んだって線もあるな。もしくは水死とか」

「雨って気がするんだけどなー」

独りごとのように呟いた俺に連れは言った。

「よくある怪談なら、その足音はこの部屋に近付いてくるんだろうな」

⏰:09/06/24 15:06 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#123 [柚子]

人の部屋だからなのか、連れはそんな無責任なことを口にし、笑った。

その時はそんなことあるわけないと思い、俺も一緒になって笑った。

笑い話でなくなったのは、四日目の夜だった。

⏰:09/06/24 15:08 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#124 [柚子]

寝転がってテレビを観ていた俺の耳に、またしてもあの足音が響いた。

つけていたテレビの音が消え、代わりに足音が耳に聞こえてきた。

さっきまで快適だった自分の部屋が、全く別の場所のように感じられた。

聞きたくないのに、足音は勝手に俺の耳の中に響いてくる。

⏰:09/06/24 15:08 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#125 [柚子]

エントランスから階段へと歩く足音は、以前も聞いたものだった。

(二階、三階、四階…)

一度も使ったことのない階段のどこをそいつが歩いているのか、何故か手に取るようにわかった。

その足音は、五階で止まった。

⏰:09/06/24 15:09 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#126 [柚子]

ピタリと五階で止まった足音に、連れの言葉を思い出さずにはいられなかった。

“この部屋に近付いてくるんだろうな”

「…ってわけで、マジで俺の部屋まで来られたらたまんないって言うか何とかして下さいよ」

⏰:09/06/24 15:11 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#127 [柚子]

長々と足音の説明を終えた俺を、小動物みたいな女は見つめていた。

心霊サークルなのに怖がりなのか、連れほどの話術のない俺の話を、プルプル震えながら聞いていた。

「あの…どうするかは空さんか亮太さんに聞いてみないとわからないです」

「はぁ?」

⏰:09/06/24 15:13 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#128 [柚子]

声が大きかったのか、その女はまたプルプルと震えた。

(チワワだな)

チワワみたいな女は、何度もドアを振り返りながら、次の部員の登場を待っているようだった。

「あんた、名前は?」

⏰:09/06/24 15:13 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#129 [柚子]

肩を震わせながら俺の顔を見つめる姿は、実家で飼っているチワワそっくりだった。

犬のクセに果物が好きなそのチワワは、毎日のように缶詰の果物を与えられていた。

中でも桃缶が好物で、お袋の

⏰:09/06/24 15:15 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#130 [柚子]

「はーい、桃よー」

という言葉を聞くと、飛び上がって喜んだ。

いつしか、最初に付けた名前ではなく桃という言葉に返事をするようになってしまったくらいだ。

今では最初に付けた名前も忘れてしまうくらい、桃という名前が定着してしまった。

⏰:09/06/24 15:16 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#131 [柚子]

「桃果です」と答えた女の声は聞き返してしまいそうなくらい小さな声だった。

(桃…果?)

あまりの偶然に、俺は声をあげて笑った。

突然笑い出した俺は、さらに桃を怖がらせたらしい。少し潤んだその目も、犬の桃にそっくりだった。

⏰:09/06/24 15:17 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#132 [柚子]

しばらくして笑いのおさまった俺は、桃の目の前に両手を差し出した。

「え…」

戸惑っている桃の目の前で、その両手をバチンと思いっきり叩いた。

⏰:09/06/24 15:18 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#133 [柚子]

ビクンと肩が震え、みるみる涙目になる桃の姿に、俺はまた笑いが込み上げてきた。

犬の桃も、俺に寄ってきては同じことをされて、泣きそうな表情をしていた。

「ごめん、ごめん」

⏰:09/06/24 15:19 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#134 [柚子]

笑いながら、事情を説明しようとした時だった。

ドアの開く音と同時に、数人の話し声が聞こえてきた。

(タイミング悪いな…)

そう思いながら、ドアに目をやった。

⏰:09/06/24 15:21 📱:P906i 🆔:fPMxZ4Vo


#135 [柚子]

入ってきたのは、女二人だった。

一人はショートカットの美人系、もう一人はロングの可愛い系だった。

(当たり多いな…)

⏰:09/06/25 15:06 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#136 [柚子]

ハーレム状態の俺は、三人の顔を交互に見た。

「空さーん」

小走りで桃はショートカットの女の後ろに隠れた。

完璧に謝るタイミングをなくした俺は苦笑するしかなかった。

⏰:09/06/25 15:09 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#137 [柚子]

「ど、どうしたの?」

空と呼ばれていた女は、背中に張り付くように隠れている桃に聞いた。

「あの人…」

桃の言葉に、俺に視線が集まった。

⏰:09/06/25 15:11 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#138 [柚子]

「あー…えと。何かここに来たら心霊現象解決してくれるって聞いて来たんすけど…」

不審そうな視線に耐えられず、俺は説明した。

「あ。そうだったんだ。いやいや、私てっきり変な奴かと…」

⏰:09/06/25 15:14 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#139 [柚子]

そこまで言っておきながら空は両手で口を隠した。

苦笑しながら言葉を続ける空を見て、さっきの美人という単語を脳内で訂正した。

黙っていれば美人に。

⏰:09/06/25 15:17 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#140 [柚子]

「桃ちゃんはもう自己紹介したかな。私は空で、この子は優。よろしく」

そう言って空の差し出した手は、指の長いきれいな手だった。

「あ、こちらこそ…」

⏰:09/06/25 15:19 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#141 [柚子]

短い握手の後、残りの二人の部員が入ってきた。

二人はそれぞれ、亮太と純と名乗った。

ま、男はどうでもいいが、これで部員は全員のようだ。

⏰:09/06/25 15:22 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#142 [柚子]

「それで相談というのは?」

話を切り出したのは、亮太という男だった。

俺は桃を見ながら、話ならそいつにしたと言った。

同じ話を二回もさせられるのはごめんだった。

⏰:09/06/25 15:25 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#143 [柚子]

全員の視線を集めた桃は、また仔犬のように肩を震わせた。

「あ…はい。だいたいの話は私が聞きました…」

自信のなさそうな小さな声だった。

⏰:09/06/25 15:27 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#144 [柚子]

「そうなんだ。じゃあ桃ちゃん説明して」

そう言ったのは、俺の前に座っていた空だった。

指名を受けた桃は、ゆっくり話し始めた。

⏰:09/06/25 15:29 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#145 [柚子]

たどたどしい説明に、何度も俺が口を挟んだことは言うまでもない。

こんなことなら、俺が一人で話した方が楽だったんじゃないかと思ったほどだ。

ようやく説明を終えた俺は出されたアイスコーヒーを一気に飲み干した。

⏰:09/06/25 15:33 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#146 [柚子]

「で?」

グラスをテーブルに置くと俺は聞いた。

「何とかしてくれるのか?」

俺の質問に答えたのは亮太だった。

⏰:09/06/25 15:39 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#147 [柚子]

「とりあえずお前の部屋に行きたい。できればその足音が聞こえる時間に」

「は?あんたが?」

そう聞き返した俺に亮太は他に誰がいるんだって顔をした。

⏰:09/06/25 15:41 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#148 [柚子]

「まぁ…別にいいけど…。ただ条件がある」

俺は桃を指差して言った。

「こいつも一緒な」

二度目の指名を受けた桃は誰が見ても分かるくらい嫌がっていた。

⏰:09/06/25 15:48 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#149 [柚子]

亮太はそんなこと気に止める様子もなく

「もう一人連れてってもいいか?」

と聞いてきた。

断る理由もなく、俺は承諾した。

⏰:09/06/25 15:51 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#150 [柚子]

もう一人は優に決まった。

部屋の掃除もしたかったので、夕飯をすませた頃に再度集まるようにしてもらった。

さすがにAVとエロ本、ビールの空き缶だからけの部屋に、女を入れるのは気が引けた。

⏰:09/06/25 15:58 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#151 [柚子]

夕飯もそこそこに、掃除に励んでいた俺の部屋のチャイムが鳴ったのは夜10時を過ぎた時だった。

残っていた洗濯物を全部洗濯機に詰め込むと、玄関のドアを開けた。

ドアの前には、差し入れなのかコンビニ袋を下げた亮太が立っていた。

⏰:09/06/25 16:03 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#152 [柚子]

亮太の後ろには純と桃が立っていた。

俺と目が合った純は、軽く頭を下げた。

「散らかってるけど…」

そう言って、三人を部屋に入れた。

⏰:09/06/25 16:43 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#153 [柚子]

ワンルームの俺の部屋に、四人は少し狭く感じた。

「優が来るんじゃなかったのか?」

俺の問いに、亮太は急用だと答えた。

それ以上は何も聞くなとでも言うような口調だった。

⏰:09/06/25 16:46 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#154 [柚子]

俺が不良みたいな悪いイメージを持たれていた為に、優の代理で純が来ることになったという話を後になって桃から聞いた。

「足音が聞こえるのは、11時から12時だったな?」

部屋を見回していた亮太に聞かれ、俺は頷いた。

⏰:09/06/25 16:49 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#155 [柚子]

「先に階段を見てくるか」

時計に目をやりながら亮太が呟くと、純と桃が立ち上がった。

俺はどうするべきなのか迷い、亮太を見た。

⏰:09/06/25 16:51 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#156 [柚子]

「時間までには戻ってくるから、部屋にいてもいいぞ」

常に命令口調な亮太は俺にそう言った後、ベッドの下に視線を移した。

「まだ片付けも途中みたいだしな」

⏰:09/06/25 16:53 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#157 [柚子]

そう言った亮太の視線を追うと、ベッドの下に脱ぎっぱなしのボクサーパンツが落ちていた。

全部洗濯機に入れたつもりが、一枚残っていたらしい。

黒いボクサーパンツを見てしまったのか、桃は恥ずかしそうにうつ向いていた。

⏰:09/06/25 16:55 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#158 [柚子]

そんな流れもあって、俺は一人部屋で片付けを続けることにした。

裏返しの靴下を片方と、AVが一枚テレビの下から見つかった。

亮太たちが戻ってきたのは30分ほどしてからだった。

⏰:09/06/25 16:59 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#159 [柚子]

時計の針は10時44分を指していた。

「足音が聞こえるように」

と、亮太が消したテレビのせいで部屋には沈黙が訪れた。

⏰:09/06/25 17:01 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#160 [柚子]

沈黙も作ったのが亮太なら沈黙を破ったのも亮太だった。

「純、その袋取ってくれ」

うちに来た時、亮太が手に下げていたコンビニ袋の中身は予想通り差し入れだった。

⏰:09/06/25 17:03 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#161 [柚子]

さっき一人になった時にちらっと袋の中を見ていた俺は、中に入っているものが何か分かっていた。

缶コーヒーが二本、お茶が一本、それとリンゴジュースだ。

どれでも好きなのを、と勧められた俺は、明らかに桃の為に買ったであろうリンゴジュースを指差した。

⏰:09/06/25 17:07 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#162 [柚子]

あっ…という顔をした桃に笑いそうになりながら

「俺、カフェインアレルギーなんです」

と、存在するのかもわからないアレルギー名を述べた。

⏰:09/06/25 17:08 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#163 [柚子]

「部室でコーヒー飲んでただろ。それもブラックで」

そう言って亮太は、俺の手から取ったリンゴジュースを桃の前に置いた。

イタズラが失敗して苦笑している俺を、桃はちょっと怒ったような顔で見ていた。

⏰:09/06/25 17:12 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#164 [柚子]

言い訳をするのも見苦しいので、俺は大人しくブラックの缶コーヒーを手に取った。

その缶コーヒーの蓋を開けた時だった。

唐突に、でもハッキリとあの足音が聞こえた。

⏰:09/06/25 17:24 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#165 [柚子]

俺の部屋にいれば全員に聞こえるのか、三人とも身動きもせず耳を澄ませていた。

亮太が立ち上がったのは、エントランスから階段へと足音が移動した時だった。

「行くぞ」

⏰:09/06/25 17:26 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#166 [柚子]

どこに?と聞く暇もなく、亮太と純は部屋を出て行ってしまった。

出遅れたらしい桃は、まだ恐怖のあまり固まっていた。

今にも泣きそうになりながらも、必死に我慢している桃の姿に俺はある衝動に駆られた。

⏰:09/06/25 17:38 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#167 [柚子]

(抱きしめたい…)

あの時、そんなことしたら怖がられるという思いと、守ってやりたいという思いで、俺の頭の中でバトルが勃発していた。

怖さなんて、すっかり忘れてた。

⏰:09/06/25 17:41 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#168 [柚子]

散々迷った挙げ句、俺はベッドにあった布団を体育座りで震えていた桃にかけた。

頭からすっぽり布団にくるまった桃を、布団の上から抱きしめた。

「大丈夫だから…」

⏰:09/06/25 17:42 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#169 [柚子]

そう言った俺に、桃は何の返答もしなかった。

でも抵抗することもなかった。

時折り大丈夫だからとか、何かあったら守るからとかそんな臭いセリフを呟きながら、桃を抱きしめていた。

⏰:09/06/25 17:47 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#170 [柚子]

あんなこっぱすかしいセリフを吐けたのは、布団で顔が見えなかったせいだと思う。

少しして、布団から桃の笑い声が聞こえてきた。

俺は少し力を緩め、声をかけた。

⏰:09/06/25 17:49 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#171 [柚子]

「な…何だよ?」

桃は笑いながら

「キャラじゃない」

と言った。

その後で、「でもありがとう」って続けた。

⏰:09/06/25 17:51 📱:P906i 🆔:qTAOTeVI


#172 [柚子]

この後戻ってきた亮太と純に物凄い勢いで殴りかかられたのは忘れもしない。

桃が必死に説明してくれたおかげで、右頬にストレートを一発喰らっただけで済んだ。

正座させられた俺は、まだ怒りの収まっていない二人の様子をチラチラと見た。

⏰:09/06/27 12:06 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#173 [柚子]

「優連れて来なくて正解だったな」

ようやく亮太が口にした言葉はそれだった。

純も隣でうんうんと首を縦に振りながら同意していた。

⏰:09/06/27 12:07 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#174 [柚子]

「とりあえず何があったかは明日説明するから、部室に来てくれ」

亮太は俺を睨み付けながらそう言った。

「えっ?今説明してくれないんすか?」

⏰:09/06/27 12:09 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#175 [柚子]

わけが分からない俺を無視して、亮太は立ち上がった。

「帰るぞ」

亮太の声に、純と桃も立ち上がった。

⏰:09/06/27 12:11 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#176 [柚子]

(相当嫌われたな)

苦笑させられるのは、亮太たちと関わってから何度目だろう。

俺は黙って三人を玄関で見送って眠りについた。

⏰:09/06/27 12:14 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#177 [柚子]

次の日部室を訪ねると、空と名乗っていた女がいた。

二人でここにいたらまた変な誤解されるかなと思い、空から離れたソファーに腰をおろした。

そんな俺の心情を知ってか知らずか、アイスコーヒーを持ってきた空はそのまま俺の向かいのソファーに座った。

⏰:09/06/27 12:18 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#178 [柚子]

「亮太に殴られたんだって?」

笑いながら空は言った。

「あー…まぁ、あれは俺が悪いんで…」

殴られた頬を触りながら俺はそう答えた。

⏰:09/06/27 12:21 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#179 [柚子]

「桃ちゃん怖がりだからねー」

どうやら空には妙な誤解はされてないらしかった。

まぁ、そうじゃなきゃ俺の前に座ったりしないか。

⏰:09/06/27 12:32 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#180 [柚子]

次に部室に来たのは亮太だった。

俺を見るなり空に

「あんまり近づくと妊娠するぞ」

と言っていたけど、大人な俺はあえて笑顔で返した。

⏰:09/06/27 12:34 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#181 [柚子]

「話しただけじゃ妊娠しませんよ。もしかして妊娠する行為が何か知らないんですか?」

嫌味たっぷりの俺の言葉に空が笑い出した。

「亮太こんなんだけど彼女いるんだよ」

⏰:09/06/27 12:39 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#182 [柚子]

「ま…マジで!?」

(話し方とか眼鏡とかオタクにしか見えないのに…)

驚いて空の顔を見た俺は、次の空の言葉にさらに衝撃を受けた。

⏰:09/06/27 12:45 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#183 [柚子]

「昨日会ったでしょ?優が亮太の彼女だよ」

(な、何で?)

ってのが最初の感想だった。

今ってオタクブームなの?オタモテ!?

⏰:09/06/27 12:50 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#184 [柚子]

「そんなに驚いた顔しなくてもいいだろ」

そう言って亮太は空の横に腰をおろした。

俺はマジマジと亮太の顔を眺めずにはいられなかった。

⏰:09/06/27 12:53 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#185 [柚子]

「それで昨日の話だが…」

亮太が本題に入ろうとしているのに、俺は上の空だった。

だけどすぐに俺は、亮太彼女持ち説を忘れた。

⏰:09/06/27 12:56 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#186 [柚子]

「単刀直入に言うと、あの霊はお前の部屋に行こうとしていたんじゃない」

「え…えっ?」

俺は思わず身を乗り出した。

「あの霊の跡を追ったから確かだ」

⏰:09/06/27 12:58 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#187 [柚子]

「どこに行ってたんすか?」

俺の質問に、亮太は何の迷いもなく答えた。

「上の階だ」

「は?」

⏰:09/06/27 13:01 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#188 [柚子]

「さらに正確に言えば、お前の部屋の上にある自分の部屋に向かっていた、だな」

亮太の話はこうだ。

上の階に住む男が事故に遇い死んだ。管理人に聞いた話では、死体は雨でびしょ濡れだったらしい。

⏰:09/06/27 13:08 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#189 [柚子]

コンビニからの帰り道、急いでいた男は深夜の信号を無視し、トラックに跳ねられた。

「傘を持ってなかったらしいから、雨に濡れないよう急いでたんだろう」

というのが亮太の意見だ。

⏰:09/06/27 13:10 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#190 [柚子]

「何で俺の部屋にだけ足音が聞こえたんすか?」

話を聞き終えた俺は聞いた。

「さぁ…その男の傘でもパクったんじゃないのかお前」

⏰:09/06/27 13:13 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#191 [柚子]

「あ…」

亮太の言葉に、ある記憶が蘇った。

何日か前、近所のコンビニで立ち読みして店を出た俺は雨が降っていることに気付いた。

⏰:09/06/27 13:15 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#192 [柚子]

深夜にも関わらず、夕立みたいな激しい雨だった。

迷うことなく俺は傘立てにあったビニール傘をパクって家に帰った。

「うわ。お前最低だな」

⏰:09/06/27 13:16 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#193 [柚子]

俺の反応を見た亮太の言葉に反論する気は起こらなかった。

「ど…どうしたらいいんすか、俺!?」

「ま、別にどうもしなくていいと思うぞ」

⏰:09/06/27 13:18 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#194 [柚子]

暢気な口調で、亮太はそう言った。

「や、でも…その人が死んだのって俺のせいかもしれないじゃないですか?」

「お前のせいじゃない」

今度はハッキリした口調だった。

⏰:09/06/27 13:20 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#195 [柚子]

「誰のせいかってことなら信号を無視した本人のせいだし、夜中だからってスピードを出してたトラックの運転手も悪い」

さっきオタク呼ばわりした亮太が、急にかっこよく見えた。

亮太は最後にこう言った。

⏰:09/06/27 13:23 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#196 [柚子]

「気になるなら、傘だけでも返したらどうだ。玄関のドアノブにでも引っかけておけばいいだろ」

「なるほど!んじゃそうします。意外と頭いいんすね!!」

褒めたつもりだったが、亮太は変な顔をしていた。

⏰:09/06/27 13:26 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#197 [柚子]

結局は“部屋に霊が来る”と思い込んだ俺の勘違いだったわけで…。

でも亮太たちには感謝してる。足音も謎も解明してくれたし。

まぁ、何かあったらあのサークルに相談すれば間違いないと思う。

⏰:09/06/27 13:34 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#198 [柚子]

やたら命令口調のムカつく男がいるけど女の子らは、可愛いしな。

あ、でも桃にだけはちょっかい出さないように。

桃は今俺の彼女だからそこんとこよろしく。

⏰:09/06/27 13:38 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#199 [柚子]



case.2 門倉

>>106-198



⏰:09/06/27 13:40 📱:P906i 🆔:IQXY3RA6


#200 [柚子]

case.3 綾子

20歳になるまでに忘れなければならない言葉がある。

そんな噂話を聞いたのは、遥か昔、私がまだ小学生だった時だ。

⏰:09/08/10 20:20 📱:P906i 🆔:i4rwxxeQ


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