あの場所まで
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#26 [ミツバ]
訂正
>>15『おもちゃながらにフィルムを入れると〜』
>>25『紗代里は一度優介の方へ〜』
所々すみません
:09/07/03 17:28 :D904i :sF4vWAHo
#27 [ミツバ]
見つめた先の海岸に人はいなかった。
脇を通るはずの車道にさえポツリ、ポツリと2台の車しか橋を渡りきるまで走っていなかった。
江の島に着くとすぐに年月を重ね薄く古くなってしまった青銅の鳥居が見えた。
:09/07/04 14:08 :D904i :2xlbwZBE
#28 [ミツバ]
青銅の鳥居は干物屋や魚屋、先へ続く参道を守っているかのように小さきながらも堂々と立っていた。
魚の生臭いような匂いが強まった。
店先に立つおばちゃんは雨に負けじと元気よく声を張っていた。
:09/07/04 14:12 :D904i :2xlbwZBE
#29 [ミツバ]
ここまで来ると観光客もチラホラいた。
紗代里は口を広げ、いっぱいに空気を取り込む。
鼻から吐くと体内にある酸素に塩気を足したような気分になった。
:09/07/04 14:16 :D904i :2xlbwZBE
#30 [ミツバ]
「磯のいい香りがする」
紗代里は言った。
「そうだな」
優介も大きく息を吸い込んだ。
すると、ずっと奥にある朱色の鳥居に先ほどの白い帽子を被る人が微かに見えた。
:09/07/04 14:19 :D904i :2xlbwZBE
#31 [ミツバ]
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「おじいちゃんとおばあちゃんはエスカレーターに乗って上がるからね」
薄紫のカーデを羽織り、おばあちゃんはまだ小さい紗代里に言った。
「わかった!さよちゃんはお父さんと歩くから競争ね!」
夏の終わり、紗代里が小学生に上がる頃一度来ていた。
半袖に半ズボン元気よく少女は駆け出した。
:09/07/04 14:30 :D904i :2xlbwZBE
#32 [ミツバ]
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うっすらとしか記憶になかった思い出があの朱色の鳥居と白い帽子を見て微かに脳裏をよぎった。
雨は次第に弱くなり、小雨よりも霧に近い雨に移り変わってきた。
傘を差す人、差さない人が半々に見える。
:09/07/04 14:35 :D904i :2xlbwZBE
#33 [ミツバ]
優介はまだしっかりと傘を紗代里の上にかざしていた。
観光客にぶつからないように歩く。
紗代里は朱色の鳥居を目を凝らして見つめていた。
:09/07/04 14:38 :D904i :2xlbwZBE
#34 [ミツバ]
白い帽子に白いポロシャツ、灰色のズボンがしっかり見えた。
おじいちゃんが死んでから、紗代里はスラリとした老人を見るとおじいちゃんに見えてしまう。
今回もそうだった。
:09/07/04 14:43 :D904i :2xlbwZBE
#35 [ミツバ]
どこにでもいるような普通のおじいちゃんだからこそ、街中に似てる姿を何度も見た。
そして、目で追う。
その繰り返し。
:09/07/04 14:45 :D904i :2xlbwZBE
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