死に至る病
最新 最初 🆕
#301 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
庭に出ると、潮の匂いがした。

波打ちの音が聞こえる。

月がでてない。

電信柱についた外灯に照らされ、ようやくまわりが確認できた。

⏰:09/08/20 13:33 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#302 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
庭の隅に、りこと湊はいた。


もう一人、直央もいた。

さっきのことなんてまるでなかったように、明るい笑顔で楽しそうにりこと話していた。

パジャマからワンピースに着替えている。

⏰:09/08/20 13:33 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#303 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕を見るなり、直央は渉ちゃんだぁーとかけ寄ってきた。



透明な笑顔。

直央だ。
いつもの直央。

この直央があんな冷たい目をしたなんて、今思えば嘘のようだった。

⏰:09/08/20 13:34 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#304 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
いっそのこと、



嘘だったらいいのに。

そう思った。


一体何が原因で感情を爆発させたのか、結局分からずじまいですっきりしない。

⏰:09/08/20 13:38 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#305 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「今から肝だめしやろうと思うんだけどさ、オーケー?」

りこは言った。


りこは黄色いキャミソールに白いキュロット姿だった。

露出率高し。

髪はいつも通り高い位置でのポニーテール。

⏰:09/08/20 13:38 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#306 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
皆は頷いた。

りこが説明を始める。



肝だめしのルールはシンプルなものだった。

ペアをふたつ作り、余った鬼一人が先行でルートのどこかに隠れにいく。

ペアは隠れている鬼を見つけて、一緒に連れ帰る。

⏰:09/08/20 13:39 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#307 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
次からはその繰り返しだ。

先行の鬼はりこに決まった。

度肝抜かせてやるよ、と意気込みながら暗闇に消えていった。


最初のペアは湊と直央になった。

⏰:09/08/20 13:40 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#308 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
りこが隠れて5分経過した。



「渉ちゃん、わたしが大声あげたら助けにきてよぅ!」

暗やみにびくびくしながら、直央がすがるように言った。

「さあね」

「絶対だよぅ! 絶対!」

⏰:09/08/20 15:36 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#309 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「直央ちゃん、行こうか」

湊ペアは予定通り出発。

僕と早紀さんは手を振って見送った。




「ぎゃぁぁぁぁ……」


しばらく経った頃、遠くで直央の悲鳴(たぶん)が聞こえてきた。

僕と早紀さんは顔を見合わせる。

⏰:09/08/20 17:20 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#310 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「今の悲鳴、直央さんですよね」

「たぶん」

「助けに行かないんですか」

「湊がいるのに、必要ないよ」

僕の言葉とほぼ同時に、湊の悲鳴(これもたぶん)が聞こえてきた。


僕と早紀さんはまた顔を見合わせる。

⏰:09/08/20 17:22 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#311 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
りこのやつ、湊が驚くなんて相当なことをしでかしたんだろう。

それにしても、すごい悲鳴だった。

「今の悲鳴、湊さんですよね」

「だね」

「りこさんでしょうか」

⏰:09/08/20 18:57 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#312 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「あいつ、どんなことしたんだろうな。少なくとも、暗闇から突然現れた程度じゃないことはたしかだな」

またしても、僕の言葉とほぼ同時に悲鳴が聞こえてきた。

今度は、りこのだった。

脅かした本人が悲鳴を上げることがあるわけがない。

⏰:09/08/20 18:58 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#313 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
まさか本物の幽霊が出たとか。

まさかね。


早紀さんは何食わぬ顔で、懐中電灯を手に、

「助けにいきましょう」

と言った。

⏰:09/08/20 19:17 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#314 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ルートをたどっていくと、やがて道路にしりもちをついた湊と直央がいた。

少し離れたところに、魂の抜けたみたいなりこもいた。



そして、二人の子供もいた。

ちゃんと足があるから、幽霊ではないだろう。

⏰:09/08/20 19:21 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#315 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
二人は両手に肝だめし用の火の玉を持って、くすくす笑っている。

見覚えがあった。


「貴方たちは、民宿の息子さんですね」

早紀さんが懐中電灯で子供達を照らした。

子供は笑った。

⏰:09/08/20 19:22 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#316 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「そこのお兄ちゃんとお姉ちゃん、スッゴい顔して驚いてたよ。面白かったねー」

「ねー」

二人が湊と直央を指差した。


あれ、じゃありこはなにに驚いて悲鳴を上げたんだろう。

⏰:09/08/20 19:22 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#317 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
りこは真っ青な顔して僕達に言った。

「あたしが二人の悲鳴を聞いて駆けつけたら、あの子供たちの横に、白い服着た、女がいた…」

空気が凍った。

皆の顔は冗談でしょと言いたげだった。


けれど、りこは続ける。

⏰:09/08/20 19:23 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#318 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「皆見てないの? 冗談止めてよ、驚いて座り込んでる湊と直央ちゃん見て、笑ってたじゃんっ! こう、ニターッて……」

「や、止めてりこちゃん。わたし怖い話苦手なんだよぅ」

直央が怯えた声で言った。

りこはもっと怯えていた。

⏰:09/08/20 19:24 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#319 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「本物ですね」

早紀さんがけろっと言った。


「ご愁傷様です。りこ先輩は本物の幽霊を見たんですね。知ってますか、幽霊は目撃者に取り憑くらしいですよ。今夜は天井の四隅に注意してみてください。
きっと、ほらこういう風に、……幽霊がりこ先輩をじぃーっ…と視てますよ」

「ふ、ふぇ……」

⏰:09/08/20 19:25 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#320 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「今も感じませんか? りこ先輩を祟り殺さんと狙う、女の霊の怨恨籠もった、視線…」

恐怖心をあおる追撃だった。

薄々感じていたけど、早紀さんはサディストっ気があるらしい。

あのりこがしくしくと涙を流して湊に助けを求めた。

⏰:09/08/20 19:25 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#321 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ふむ、絶景かな。

その夜、りこは汗だくになりながらも布団を頭まですっぽりかぶって寝た。

⏰:09/08/20 19:26 📱:N03A 🆔:Ig6.tuHE


#322 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
>>293
直央のセリフに「私ちゃん」とありますが誤字です。

×私ちゃん
○渉ちゃん

今さらすみません(__;)

⏰:09/08/21 09:54 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#323 [chimu◆Hi9o8eIXuA]



満月の輝く夜だった。

障子(しょうじ)を挟んだ窓ガラスに、羽虫や蝉がこつこつとぶつかって音を立てていた。


「りこちゃんの浴衣可愛いーっ! オレンジ似合うよぅー。早紀ちゃんのも大人っぽくていいなぁ! 蝶の模様なんだねっ」

「直央ちゃんのも可愛いよん」

⏰:09/08/21 11:45 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#324 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
襖の向こうから、楽しげな会話がもれ聞こえてくる。

僕と湊は暇潰しに持ってきたトランプでババ抜きをして、彼女らの着付けが終わるのを待っていた。


今夜は夏祭りがある。

結構大きな祭りだから、私服じゃもったいないと、りこが浴衣で合わせようとした。

⏰:09/08/21 11:46 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#325 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ちなみに男は甚平(じんべえ)を着るようりこに脅されたので、ちゃんと買って持ってきた。

りこ達の着付けが終われば、次は僕達の番だ。



やがて、襖が開いた。

そこには色鮮やかな浴衣を着て、髪を結い上げ変身した彼女らがいた。

思わず感嘆の声を上げた。

⏰:09/08/21 11:47 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#326 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
他の誰よりも、僕は直央に見惚れていた。


首には十字架のネックレス。

ふわふわした、薄桃色のへこ帯。

腰まである長い髪は、ゆったりしたふたつ結びのおさげにされていた。

りこに化粧をしてもらったのだろう、唇は光沢をおびていた。

⏰:09/08/21 11:51 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#327 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
可愛い、と口にした。

何気なく言ってしまうほど、本当に直央は可愛いくて、抱きしめたくなるくらいだった。

いつも可愛いけど。

⏰:09/08/21 11:52 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#328 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ほらほら早くとりこに急かされ、僕と湊は甚平を持って彼女らと入れ替えで部屋から出た。

我ながらぶきっちょな手つきで甚平を着付けていくのを、時たま、りこが襖を開けて覗いた。

湊はてきぱきと早々に着てしまい、とろい僕の着付けを手伝ってくれた。

湊は器用だなと感心する。

⏰:09/08/21 13:40 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#329 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕ももう少し器用に生まれてくれば、こんなのどうってことなかったのにな。

道ばたで水溜まりを避けて隣の水溜まりに足を突っ込むこともなかった。

飼い猫のミイの餌の缶詰めとシーチキン缶を間違えて食べることもなかった。

⏰:09/08/21 14:07 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#330 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
それだけじゃないもっとあるけど、――うん、もう止めよう。

悲しくなってきた。

はい出来上がり、と湊が僕の両肩をぽんぽんと叩いた。

本当に申し訳ない。

⏰:09/08/21 16:17 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#331 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
今か今かと待ち構えていたりこが勢いよく襖を開き、ちょっと恥ずかしい甚平姿のお披露目だった。

恥ずかしがる僕を、お約束でりこが茶化した。



直央は――眩しそうに、熱っぽいとろんとした目で僕を見上げていた。

⏰:09/08/21 16:22 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#332 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
もしかしたら、電灯を見ているのかもしれない。



――恍惚としたような、憔悴しきったような、諦めたような、そんな様々な感情を孕んだ万華鏡の瞳。

僕を見ているようで、見ていない、と思った。

⏰:09/08/21 16:25 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#333 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ふ、と直央が微笑んだ。


渉ちゃんは嘘つきだね。

それと、意地っ張り。

せっかく心変わりしたわたしの気持ちを、素直に受け止めればよかったのに、だから後悔しちゃうんだよ。


そう言っている、気がした。

⏰:09/08/22 11:52 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#334 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
遠くから祭りの始まりを告げる太鼓の音が聞こえてきた。

僕達は太鼓の音に誘われて、我先にと急ぎ足で庭に出た。

祭りのある方角の空が、ほんのり明るい。


僕達は下駄を鳴らしながら、祭りまでの道のりを歩いた。

⏰:09/08/22 13:34 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#335 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
祭りには大勢の人がいた。

たくさんの出店、そのどれも人が囲んでいる。


直央がにこにこしながら、りんご飴を片手に僕の腕に組みついてきた。

異様に艶のある、水分を含んだ唇に、僕はどきっとした。

⏰:09/08/22 13:35 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#336 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央は上目遣いでじーっと僕を見つめたあと、にこっと子供みたいに無邪気な笑みを浮かべた。


「人酔いしたぁ?」

なんで、と返すと、

「ぼーっとしてたから」

と直央は苦笑いした。

⏰:09/08/22 13:37 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#337 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕は悩みや動揺が面に出やすい人間(初対面の人に嘘を見破られるくらい)だから、はたからみたら上の空だったんだろう。


前を歩くりこが、もう少しで花火があがるから土手に行こう、と言った。

直央は元気よく返事をする。

⏰:09/08/22 13:37 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#338 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「ごめんね、渉ちゃん」

うつむいて、直央が謝った。

なんで謝るんだよ、と僕の言葉はあまりにもか細くて、賑やかな話し声の中に混じって消えた。

直央の小さな手のひらが、ぎゅっ、と僕の腕をつかんだ。

⏰:09/08/22 13:38 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#339 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「乱暴してごめんなさい……。唇とか噛みついたから痛かったよねっ…。本当に、ごめんなさい」

「いいよ。反省の心さえあれば許してやる。その経験を糧にして今後の人生に役立てたまえ。……なんてな」

「ぷっ」


僕達は笑いこけた。

心の奥につっかえたものを洗い流すように、ずっと笑っていた。

⏰:09/08/22 13:42 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#340 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
やがて、僕は訊きたくなった。

理由もなく、雰囲気に流されたというのがぴったりかもしれない。

気づいたら訊いていた。



「直央ってさ」

「うん?」

「好きなやつ、いる?」

⏰:09/08/22 13:46 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#341 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
その時、だった。

暗闇をかき分けるように裂いて、空高く花火が上がっていき、大きな音を立て咲いた。

拍手がわきあがる。


それを合図にして、夜の花が次々と咲き乱れはじめた。

⏰:09/08/22 13:49 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#342 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
途切れることを惜しむように、絶え間なく咲く。

極彩色の花火は、黒の背景によく馴染み、映えていた。


直央は瞳に花火を映しながら、ぼんやり言った。

⏰:09/08/22 13:50 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#343 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「うん、いるよ」



今ならいつでも止めれた。

そうなんだと相づちをうって、話を終わらせればよかったのに、僕は続けてしまった。

⏰:09/08/22 13:51 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#344 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「どんなやつ?」

「王子様みたいな人かなっ」

「誰なの」


直央が困ったように眉を八の字にして、

もう止めようよぅ、

と言うのを――愚かにも僕はいじらしいと感じて、まだ続けた。

⏰:09/08/22 13:52 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#345 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ひときわ大きな花火が上がり、僕達を明るく照らした。



――そして、言った。


直央は、何々だよ、と可愛いらしく首をかしげて、言った。


思考が停止した。


目の前が真っ暗になった。

⏰:09/08/22 13:53 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#346 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
全身がぴりぴりと刺すようにひどく痛み、麻痺したように動かなくなった。



直央の言葉。

僕はそれをきちんと聞き取れていたのに、僕の全細胞が拒否して、すぐに記憶の隅へと追いやられてしまった。

心臓が早鐘を打つ。

⏰:09/08/22 13:54 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#347 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
そんな馬鹿なことがあるものか、と、震える拳を握りしめて、訊いた。

「い、今、なんて、言った?」

情けなく震えた声に、直央はにっこりと天使みたいに笑って(悪魔みたいに?)、

聞いたこともない甘い声で、

ささやくように、

恥ずかしそうに、


言ってしまった。

⏰:09/08/22 13:54 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#348 [chimu◆Hi9o8eIXuA]


「私の好きな人はねぇ」


ひときわ大きな花火が上がり、僕達を明るく照らした。






「渉ちゃんじゃない人」

⏰:09/08/22 14:01 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#349 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
頭が、無で満たされた。


体が冷たくなっていく。


手先や足の爪先から、どろどろとした氷水が這ってくるように、じわりじわりと冷たくなっていった。



現実と幻想の狭間で、僕は言葉を知らない獣のように叫び続けた。

⏰:09/08/22 14:07 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#350 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
無垢ゆえの残酷だった。



親友に好きな人を素直に教えた、喜んでくれると思って。

それ以外のなにものでもない。



では僕が間違っている。

⏰:09/08/22 14:08 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#351 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
目の前の少女にとってのハグ、キス、異性への嫉妬の定義を教えてください。



なにがいけなかった?

親友なんて、恋人なんて、きれいごとに縛られなければよかったのか?


奪えばいいのか?

⏰:09/08/22 14:10 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#352 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
無理矢理、真っ白いこいつを、欲望のままに汚せばいいのか?

好きになりやがれと、想いを押しつければいいのか?


だいたい好きな人って誰だよ、滅茶苦茶にしてやる、

――そうじゃなくて、ああ、もう、これは悪い夢なのか?


誰か僕に、教えてください。

⏰:09/08/22 14:10 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#353 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕は無意識のうちにゆっくりと、花火を見上げる直央に手を伸ばした。



もう、いい。

もう、壊してやる。


好きな人がいるんだはいそうなんだ、じゃすまないくらいおまえを愛している。

⏰:09/08/22 14:11 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#354 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
他の女なんてみえない。

おまえがそうさせた。



直央、胸が、苦しい。


焼けそうだ。

⏰:09/08/22 14:13 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#355 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「直央ちゃーん、見てよ、わたがしにぷにたんの袋があるよん」

「ええっ、本当ぅぅ!?」

「ホントー」

「すごいすごいぃ。ごめん渉ちゃん、ちょっとりこちゃん達のところに行ってくるよぅー」

⏰:09/08/22 14:14 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#356 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
柔らかい髪に触れたその時、直央が僕のもとを去っていった。

僕の伸ばした手は空をつかんで、直央を捕まえることはできなかった。



花火が、きれいだった。

⏰:09/08/22 14:14 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#357 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ひとり残された僕に、高校生くらいの、きれいな女の子二人組が声をかけてきた。

珍しいことじゃなかった。

今までは直央がいるからと、ことごとく鼻であしらってきた。


これから私達と遊ぼう。

マスカラの塗りたくってあるまつ毛が、まっすぐな茶色い髪が、僕を物欲しそうに見ていた。

⏰:09/08/22 14:15 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#358 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
放心状態の僕は、何を勘違いしたかしらない女達に暗闇へと手を引かれて誘い込まれた。

花火の音が遠い。

誰もいない。


女達はいやらしい手つきで僕の体を触ってきた。

勝手に荒くなる女達の吐息が耳障りだった。

⏰:09/08/22 14:16 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#359 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
汚らわしい。

僕は女のひとりを草むらに思い切り突き飛ばし、もうひとりも背中を押して隣に突き飛ばした。

暑いし苦しいしでうざったるかった甚平の胸元を両手でがばっと開き、勝手に脱ぎだした女の服を下駄で踏みつけた。


どうして欲しいか言ってみろ。

自分のものとは思えない、低く冷たい声が暗い茂みに響いた。

⏰:09/08/22 14:16 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#360 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
めちゃくちゃにしてよ。

壊して。

女達が言った。



ふうん、いいよ。

直央の代わりに、壊してやる。

⏰:09/08/22 14:17 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#361 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「わ、渉っ……?」

その時、声がした。


僕が女を抱きしめたまま振り向くと、茂みの外にりこがいた。

驚愕の表情を、僕は笑った。


遅れて、女達がうつろな瞳でりこを見た。

⏰:09/08/22 14:18 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#362 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕は構わず続けた。



「なにしてんの、あんた…」

泣き出しそうな声だった。


女が舌打ちをする。

⏰:09/08/22 14:19 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#363 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「あんた邪魔だよ。早くここから消えてくれない」

女がりこに言った。

りこは歯をくいしばり、涙声でしぼるように叫んだ。



「渉、おまえ、なんてことしてるんだよ! こんなとこで、こんな時に、こんな女達と、こんなくだらないことして、――早く止めろっ!」


僕には届かない。

⏰:09/08/22 14:20 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#364 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
しびれを切らした女のひとりがのそのそと服を着て、りこに向かっていった。


「あんた、うるさい」

女はけらけらと笑いながら、りこを突き飛ばそうと手を出したが、

「畜生!」

りこはそう叫ぶと、なんの容赦もなしに女の顔面を殴りとばした。

⏰:09/08/22 14:21 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#365 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
女は突然のことに大した悲鳴も上げず倒れこみ、鼻血の垂れる鼻を押さえた。



僕は抱いていた女から離れると、殴られた女の顔を覗き込んだ。

これはすごい。

⏰:09/08/22 14:22 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#366 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「おまえも同じ顔にしてやる。間違っても、二度と直央ちゃんに近づけない顔にな」

りこは僕の胸ぐらをつかみ、すごみながら言った。


それでも僕は動じなかった。

⏰:09/08/22 14:22 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#367 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「我慢して、大切にしてきた女に裏切られた気持ちが、男勝りな女に分かるか。おまえは、りこは――湊に好きなやつができたら冷静でいられるのか?」

りこは黙って拳を振り上げると、僕の右頬を殴った。


「この甘ったれ野郎が! 直央ちゃんにフラれでもしたか? いい気味だね、むしろおまえみたいなやつにねちねち好かれるくらいなら、他のやつを好きになれた直央ちゃんは幸運だ。渉、おまえに直央ちゃんは不釣り合いなんだよ、人間性がな!」

⏰:09/08/22 14:23 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#368 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「……」

「好きな女に好きな男がいたら素直に身ぃ引いて応援すりゃいいんだよ! それなのに、なんだよ、このザマはよ、だらしねぇ! 飼い主に首輪外された、盛りのついた犬かおまえは!」

「そうだよ。犬だ。」


いいように直央に飼い馴らされてた、犬なんだよ。

⏰:09/08/22 14:24 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#369 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
涙が出た。

止まらない。


こんなにも直央を愛してるのに、弱い僕はくだらない解釈しかできない。

⏰:09/08/22 14:24 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#370 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕はりこに抱きつき、キスをした。

胸に手をやり、腰に手を回す。



もう一度、右頬に鈍い痛み。

股間まで蹴られた。


畜生、畜生と叫び涙を流しながら、りこは僕をきつく抱きしめた。

⏰:09/08/22 14:26 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#371 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
小さな頃から知ってる、優しいりこの匂いが、僕の犯した過ちをゆっくりと理解させていく。



直央、好きなんだ、

好きなんだよ、

愛してるんだよ、

それなのにどうして。

⏰:09/08/22 14:28 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#372 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
愛してるのに、どうして。

直央。

直央、なにがいけなかったんだよ教えてくれ。

僕は声に出して叫ぶ。



渉、おまえは悪くない、悪いのは誰でもないんだ。

りこも声に出して叫ぶ。

⏰:09/08/22 14:28 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#373 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
――『渉ちゃん』。


僕を呼ぶ甘い愛しい声が、頭の中で何度も繰り返される。


僕は手を差し伸べる。

けれど、直央は首を横に振って、本当に好きな人のもとへと駆けていく。

⏰:09/08/22 14:29 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#374 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央、と僕は叫ぶ。



命と差し替えてもいい、
全てを売っていい、
プライドなんて捨てていい、
生まれ変われなくていい、



僕を見て。

⏰:09/08/22 14:31 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#375 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ストックが切れたので、また後で更新します(^-^)

誤字脱字がありましたら、感想板まで知らせてくれると助かります

⏰:09/08/22 14:36 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#376 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
Their summer!
(Side Story)「貧血」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

また直央が倒れた。

全校集会での校長先生のありがたいお話(長くて眠くなって立つのがだるくなるのが嫌だけど)の最中いきなり電池が切れた玩具みたいに、ぱたっと倒れた。

その後すぐに目を開けて大丈夫だと言い張ったが、無理矢理、笹原先生に背負われて保健室へ運ばれた。

全校集会が終わり、見にきてみたらベッドの上で気持ちよさそうにすやすや眠っていた。

⏰:09/08/22 19:10 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#377 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕はベッドの横に椅子を持ってきて、しばらく寝顔を眺めた。

まつ毛なげぇな、つまめそう、ひっこぬいてやろうか。


ちょっと触ろうかなと手を伸ばしたところで、直央が目を開けた。

くるっとした碧い瞳で、辺りを見回し、頭を押さえながらゆっくりと起きた。

⏰:09/08/22 19:18 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#378 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「おはよう、お姫様」


直央は驚いたように目を丸くして僕を見つめ、唸りながら、一緒なこと言わないでよぅと意味不明な発言をした。

まだ寝ぼけてる。

⏰:09/08/23 13:35 📱:N03A 🆔:ytt8HhJg


#379 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ベッドの側にある窓から、生温い風と蝉の鳴き声が入ってくる。

もうすぐ夏休みだな。

お互いなにも喋らなかった。


やがて、保険室の風間先生が帰ってきた。

手にもつプリントは、扇ぐのに使ったのだろう、折り目だらけでしわくちゃだった。

⏰:09/08/23 15:00 📱:N03A 🆔:ytt8HhJg


#380 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
風間先生は直央を見て、にっこり微笑みかけて近づいてきた。

真っ赤な口紅が、濡れたようにぬらぬら光っていた。


「心配したよー、狩山さん。具合はどんな感じかな? だいぶん良くなった?」

先生は直央の頭を撫でながら、優しく言った。

⏰:09/08/24 19:08 📱:N03A 🆔:ZJJ0NI9s


#381 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「えへへ、めまいがして倒れちゃいました」

「もしかして貧血?」

先生が首をかしげ、訊いた。


「貧血、……。…ん、……そう、かもしれません」

⏰:09/08/24 19:15 📱:N03A 🆔:ZJJ0NI9s


#382 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
もごもごと直央が言った。

妙に区切れの多いのが気になったが、すぐに捨て置いた。



直央はよく倒れた。

いつでもどこでも。

倒れられる方はたまったもんじゃないけど、倒れる方はもっとだろうな。

⏰:09/08/24 19:16 📱:N03A 🆔:ZJJ0NI9s


#383 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
道路の真ん中で倒れたりなんかしたら、あの世行きだし。

否応なしに意識が途切れるって、考えるまでもなく嫌だな。

四六時中見守ってやらないと。

⏰:09/08/24 19:17 📱:N03A 🆔:ZJJ0NI9s


#384 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「いつでも倒れていいぞ。俺が助けてやるからな」

「え」

「道路の真ん中でも、線路の上でも、どんとこい」

「やだよぅ…。もう、倒れるのは、絶対にいや、だね」

頭痛がするのか、目を押さえながらうめくように直央が言った。

⏰:09/08/24 19:18 📱:N03A 🆔:ZJJ0NI9s


#385 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
風間先生に水の入ったガラスのコップを差し出され、直央はあっという間に飲み干した。

コップは七色に光り、壁に光を反射していた。

綺麗だった。



「ずっと、わたしでいたい」

直央はそれを見ながら、寝ぼけ眼のままで、夢の中の出来事みたいにぼそっとつぶやいた。

⏰:09/08/24 19:18 📱:N03A 🆔:ZJJ0NI9s


#386 [我輩は匿名である]
更新たのしみです^^

⏰:09/09/04 18:57 📱:PC 🆔:cpmi6BoU


#387 [わをん◇◇]
↑(*゚∀゚*)

⏰:22/11/23 16:19 📱:Android 🆔:yR7K92nk


#388 [わをん◇◇]
>>340-380

⏰:22/11/23 16:56 📱:Android 🆔:yR7K92nk


#389 [わをん◇◇]
>>1-40

⏰:22/11/23 17:01 📱:Android 🆔:yR7K92nk


#390 [approach]
(´∀`∩)↑age↑(∩゚∀゚)∩age

⏰:25/11/12 23:06 📱:Android 🆔:84s6S4Do


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194