その手に触れさせて (短編集)
最新 最初 全 
#60 [さ う す ぽ ー]
「ずっと好きだった。嫌いだってばかり言われて、ちょっと傷付いてた」
「ちょっ…」
「まあ…考えといて」
村山はそれだけを言って、そそくさと教室を出ていく。
「考えといてって…」
“好き”なの?村山があたしのことを?あれだけ嫌って…るフリしてても。
* * *
「瑠衣…あたしね…告られたっぽいんだぁ」
:09/07/31 09:40
:P705i
:gyOo3Cyg
#61 [さ う す ぽ ー]
「えっ!?花菜が?すごいじゃん!で、誰に?」
「村山…」
「…あちゃー」
瑠衣は小学校が同じ。当時は特別仲が良かったわけじゃないけど、事情は知っている。
だけど、あたしが村山のことを好きだったということは知らない。
「断ったの?」
「返事する前に帰っちゃったの!考えといてって」
「ふーん」
「ね、どうすればいいと思う?」
「そんなの自分で考えな」
「えーっ!!」
:09/07/31 09:46
:P705i
:gyOo3Cyg
#62 [さ う す ぽ ー]
「あ、でもー」
「なになにっ?」
「返事は早くした方が良いと思いまーす」
「えーっ!!」
正直、迷っている。本当は気になってる。付き合っても構わない。
けど…周りの目が。
小学校が同じ人はいくらでも居る。ほとんどの人が事情を知っている。
そんな中で付き合うのは、恥ずかしい。
「…花菜?」
「へっ、何?」
「お顔が赤いでちゅよー?」
「大丈夫っ!!」
:09/07/31 09:55
:P705i
:gyOo3Cyg
#63 [さ う す ぽ ー]
数日後。グループの中に居た、リーダー格のリサがあたしを訪ねてきた。
「村山に告られたって、ほんとの話?…軽く噂になってたよ」
「あ…うん。ほんと」
「返事…は?」
「まだ、してない」
「そっか…じゃ」
「うん…」
噂の真相を知りたかっただけなのか、リサは自分の教室に戻っていった。
* * *
“リサが村山に告ったらしいよ”
:09/07/31 10:06
:P705i
:gyOo3Cyg
#64 [さ う す ぽ ー]
「リサちゃん…村山のこと好きなのに嫌いとか言ってたのかな?愛情の裏返し?」
「そう、かもね」
「これで村山がOKしたら、花菜は何だったんだって話だよねー」
「瑠衣…どうしよ」
心臓の音が鳴り止まない。焦る気持ちが先走りする。
「…どした?」
「あたし…あたし」
言ってしまっていいの?
あたしの中に潜む、もう1人のあたしが囁く。
言ってしまったら、あたしだってリサと同じ。「愛情の裏返し?」って笑われてもおかしくない。確実に笑われ者。
:09/07/31 10:14
:P705i
:gyOo3Cyg
#65 [さ う す ぽ ー]
「…花菜。好きなら好きって言いな?ほんとの気持ち分かんなくなっちゃうよ」
「うん…そうだね」
結局、瑠衣に本当の気持ちは打ち明けられなかったけど。もう気付いただろう。
でも…村山に言うなんて、そんなこと。出来そうにないよ…
* * *
「いつまで待たせんの」
「あんたには関係ないでしょ!?」
「関係ある」
:09/07/31 10:21
:P705i
:gyOo3Cyg
#66 [さ う す ぽ ー]
ある日の放課後。あたしを呼び出した人物・永井にまた呼び出された。
「返事はちゃんとする」
「…あんまり遅いと藤崎の方にOKするかもよ」
「リサに…あたしには関係ないことだし」
「意地っぱりだね」
「違うしっ」
永井の言うことは当たっている。事情もある上、あたしは意地を張ってしまう性格なのだ。
村山も何も言わないから、ついつい先延ばしにしてしまう。うじうじして、答えを出せない。
:09/07/31 16:02
:P705i
:gyOo3Cyg
#67 [さ う す ぽ ー]
このまま、まだ先延ばしにするつもりだったのに。答えを出さなければならない時が来てしまった。
「ごめん…俺、せっかちで」
「あぁ、や、うん」
今度は村山から呼び出しを食らった。さすがに待たせすぎた…よね。
「少しは…考えた?」
少しどころじゃない。迷いに迷った。今もその途中なんだ。
言うか、言わないか。
気持ちはもう1つに絞られてしまったのに、こんなことで悩むなんて。
:09/07/31 22:52
:P705i
:gyOo3Cyg
#68 [さ う す ぽ ー]
好きなのに。
好きなのに、好きなのに。
どうして好きだと言えないの?自分に苛立つ。自分に呆れる。意地っぱりも良いところだ。
「あの…?」
「あのっ!順を追って説明したいの。…今日、一緒に帰れない?」
自分自身が言ったことに、自分自身が驚いてしまう。
「いいっ、いいよ!?」
部活への言い訳とか、帰りのルートとか。色々言い出しちゃって、思わず吹き出してしまう。
:09/07/31 23:09
:P705i
:gyOo3Cyg
#69 [さ う す ぽ ー]
「じゃあ、帰りね」
「正門で待ってるよ」
「うん」
残りの授業は、終わるのが待ち遠しかった。帰りのことを想像しては、胸を躍らせていた。
「お待たせー」
「いやっ、待ってない」
「行こ!うまく言い訳出来た?」
「それは…大丈夫」
案外落ち着いて話せている自分が不思議に思えてくる。
「あそこの階段なら死角になってて見えないんだー。3年の人がいっつもここで話してるの」
:09/07/31 23:33
:P705i
:gyOo3Cyg
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194