― 短編箱 ―
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#124 [栢]
すると彼女はくすっと笑って
「私もです」と言った。
なんか一気に事が進んで
運命とかロマンチックを気取りたくなる
むしろもう
雨止まないでくれ。
一瞬にして雨が好きになる俺
だけど天気は気まぐれで
そこまで味方はしてくれない
:09/10/15 00:01 :D905i :HzfhWb16
#125 [栢]
雨がだんだん弱くなる。
「飴‥!!どっちがいい?」
さっき貰った飴のことを
ふと思い出したのだ
彼女のきょとんとした顔も
初めて見た
「桃と林檎、どっち好き?」
俺の質問に
謙虚に透き通った声で答える
:09/10/15 00:39 :D905i :HzfhWb16
#126 [栢]
「じゃあ、林檎がいいです」
少し恥ずかしそうで嬉しそうな彼女
こっちまで
嬉しくさせる笑顔
雨が止んだ。
:09/10/15 00:41 :D905i :HzfhWb16
#127 [栢]
あっという間に時がすぎてしまって
彼女はまた深く頭をさげて
にこりと笑って去っていった。
夢のようだ‥。
まだあの優しい空間に包まれる
結局
名前も駅のことも彼氏のことも
何ひとつ聞けなかった
:09/10/15 00:44 :D905i :HzfhWb16
#128 [栢]
ただ一つ得た情報に頼るしかなかった俺
もう一回話したい
もう一回笑顔が見たい
ただそれだけのために‥。
あの日から行きの電車で
彼女の前に座るのが照れくさい
だけどあれから彼女とは
"知り合い"になったわけで
ぺこりと軽く頭をさげるようになった
:09/10/15 00:48 :D905i :HzfhWb16
#129 [栢]
そしてまた雨の日のこと
その日はちゃんと傘は持っていた
だけど俺の手が傘を開こうとしない
根拠もないままに
あの日と同じように
ぼーっとしながら彼女を想う
やっぱり雨好きだ
また彼女がやってきた
:09/10/15 00:51 :D905i :HzfhWb16
#130 [栢]
「こんにちは」
にこりとあの笑顔。
鼓動がじわじわと熱くなる
「あ‥飴なめる?」
とにかく話したくて
カバンの中をあさり
飴の袋を取り出した。
もちろん林檎味
彼女のために買った
俺には似合わない林檎の飴
:09/10/15 00:55 :D905i :HzfhWb16
#131 [栢]
彼女は少し驚き
そしてすぐにくすっと笑って
「ありがとう」
欲しかった笑顔を見せてくれた
「林檎‥好きなの?」
飴の袋を指差して
純粋な眼差しで見つめられる
:09/10/15 00:58 :D905i :HzfhWb16
#132 [栢]
君と話したくて‥
笑顔が見たくて‥なんて
言えたもんじゃない。
残念ながら
奥手具合は治らない(笑)
俺は一呼吸置いて
「うん、好き」
君のことがね、
:09/10/15 01:01 :D905i :HzfhWb16
#133 [栢]
雨がだんだん弱くなる
傘を広げて彼女はまた去っていく
「あの‥!」
雨が止んでうっすらと虹がかかる
滴がきらりと眩しい
もう雨には頼らない
:09/10/15 01:07 :D905i :HzfhWb16
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