― 短編箱 ―
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#193 [栢]
月がぼんやりしてる
切ない、ばか
気付いていたのに
気付いちゃいけない気がするんだ
だってそうでしょ?
ただ辛いだけよ、こんなの
普通に学校とかで知り合ってたかった
幼なじみなんて、嫌。
:09/10/25 18:42 :D905i :Bcm9GRAE
#194 [栢]
もやもやする胸を抑えて
投げやりに目を擦った
―‥ここどこだろう。
真っ暗な空間が不安にさせる
「メイ!!」
つい、振り向いてしまった
嬉しいのに何かが引き止める
かっこ悪いの。あたし
:09/10/25 18:46 :D905i :Bcm9GRAE
#195 [栢]
「ばかかお前、
普通に寒みーから‥
それに、迷子になるだろ」
暗かったけど確かに見えた
ハルトの真剣な顔
「ごめ‥、」
言い終わる前に
暖かい手に包まれるあたしの冷たい手
「帰るぞ」
緩く笑ったのが見える
ハルトを近くに感じた
:09/10/25 18:50 :D905i :Bcm9GRAE
#196 [栢]
小さい頃にも
一度こんなことがあったっけ
何でだか忘れたけど
こうして手を引かれて夜道を歩いた
過去の自分が羨ましい
もっと一緒にいたかった‥
ハルトの背中はいつのまにか
大きくなっていた
気づかなかったな‥
あたしより、小さかったのに
:09/10/25 18:53 :D905i :Bcm9GRAE
#197 [栢]
玄関には
乱暴に脱ぎ捨てたスリッパ
部屋の灯りに目を細めた
「止めたのによー‥
何で振り払うんだよ、ばか」
少しふてくされてた
愛おしく想っちゃうよ‥もう
「止めが足りないのよ
もっとちゃんと止めなきゃ‥」
冗談よ冗談。
強がり‥わかってたの?
:09/10/25 18:57 :D905i :Bcm9GRAE
#198 [栢]
「これならもう‥
何処にも、行かない?」
ぎゅっと優しく包まれた
つま先立ちで戸惑う
ハルトはもう、こんなに成長したんだ
鼓動が速まる
ばれてしまわぬように
そっと息を吐く
こくり、と小さく小さく
頷いたの
:09/10/26 00:33 :D905i :0HxquaIU
#199 [栢]
どうしよう‥
もう、抑えられない
溢れ出す気持ちを
はっきりと感じた。
「‥何の日だったか、知ってる?」
その低い声が
体の奥底まで響く
「‥わかん ない、」
途切れる言葉をやっと繋げた
:09/10/26 00:37 :D905i :0HxquaIU
#200 [栢]
「嘘‥ついでもいい日。」
4月1日‥あぁそうか、
こんなにうまく行くはずないもんね
一気に涙が溢れ出す
いくら何でも
一番つらい嘘 つくなんて‥
「あたし‥バカなんだから、
期待しちゃう‥やめてよ」
そっと離れようとする体を
また優しく包む大きな手
:09/10/26 00:41 :D905i :0HxquaIU
#201 [栢]
「もう、終わった‥」
ふと時計を見る
―‥0時2分
「嘘‥」
嘘なんかじゃない、
この温もりが事実
「メイがいいや、やっぱり
ってか‥じゃなきゃ駄目っぽい」
耳元で囁く声が春を告げた
:09/10/26 00:46 :D905i :0HxquaIU
#202 [栢]
「ばかだよね‥。もう、ばか」
何かがほどけて雫になる
今までの不安も、隠してた想いも
全部が溢れ出る。
うるせぇよって緩く笑って
また荷物を整理し始めた
さっきとは違うわ‥
時計の音が愛おしい
:09/10/26 00:51 :D905i :0HxquaIU
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