― 短編箱 ―
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#197 [栢]
玄関には
乱暴に脱ぎ捨てたスリッパ
部屋の灯りに目を細めた
「止めたのによー‥
何で振り払うんだよ、ばか」
少しふてくされてた
愛おしく想っちゃうよ‥もう
「止めが足りないのよ
もっとちゃんと止めなきゃ‥」
冗談よ冗談。
強がり‥わかってたの?
:09/10/25 18:57 :D905i :Bcm9GRAE
#198 [栢]
「これならもう‥
何処にも、行かない?」
ぎゅっと優しく包まれた
つま先立ちで戸惑う
ハルトはもう、こんなに成長したんだ
鼓動が速まる
ばれてしまわぬように
そっと息を吐く
こくり、と小さく小さく
頷いたの
:09/10/26 00:33 :D905i :0HxquaIU
#199 [栢]
どうしよう‥
もう、抑えられない
溢れ出す気持ちを
はっきりと感じた。
「‥何の日だったか、知ってる?」
その低い声が
体の奥底まで響く
「‥わかん ない、」
途切れる言葉をやっと繋げた
:09/10/26 00:37 :D905i :0HxquaIU
#200 [栢]
「嘘‥ついでもいい日。」
4月1日‥あぁそうか、
こんなにうまく行くはずないもんね
一気に涙が溢れ出す
いくら何でも
一番つらい嘘 つくなんて‥
「あたし‥バカなんだから、
期待しちゃう‥やめてよ」
そっと離れようとする体を
また優しく包む大きな手
:09/10/26 00:41 :D905i :0HxquaIU
#201 [栢]
「もう、終わった‥」
ふと時計を見る
―‥0時2分
「嘘‥」
嘘なんかじゃない、
この温もりが事実
「メイがいいや、やっぱり
ってか‥じゃなきゃ駄目っぽい」
耳元で囁く声が春を告げた
:09/10/26 00:46 :D905i :0HxquaIU
#202 [栢]
「ばかだよね‥。もう、ばか」
何かがほどけて雫になる
今までの不安も、隠してた想いも
全部が溢れ出る。
うるせぇよって緩く笑って
また荷物を整理し始めた
さっきとは違うわ‥
時計の音が愛おしい
:09/10/26 00:51 :D905i :0HxquaIU
#203 [栢]
さっきよりも少し
近くに座ってみた。
だけどもどかしい、初めての感覚
‥むずがゆいね
「あ‥懐かしい(笑)
これ、覚えてる?」
そう言って
小さな封筒を渡された。
:09/10/26 00:53 :D905i :0HxquaIU
#204 [栢]
"はるとくんえ
めいをおよめさんにしてね"
子供ながらに歪だけど
丁寧に書いたような字
何度も消した跡があった。
「幼稚園のとき、メイがくれたんだよ?」
正直記憶にはなかったけど
一気に体が熱くなった
:09/10/26 00:56 :D905i :0HxquaIU
#205 [栢]
「うわぁ‥恥ずかしい」
そんな何年も前の手紙を
持っててくれたなんてね、
嬉しくて仕方がない
くすりと隣で笑われた。
そして、ある一通の手紙が
あたしの手元に現れた
何年も前の
まだ渡していない小さな手紙
:09/10/26 00:59 :D905i :0HxquaIU
#206 [栢]
"めいちゃんえ
ぼくをおよめさんにしてね"
「やっぱり‥ばかだね」
思わず笑ってしまったの
可愛い文面
顔を赤くする"ぼく"が愛おしい
ねぇ‥
運命を信じたくなったよ
:09/10/26 01:02 :D905i :0HxquaIU
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