― 短編箱 ―
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#224 [我輩は匿名である]
私は目を輝かせて
お兄ちゃんが書いた下書きを
丁寧に縁取って
一生懸命色を塗った
いつの間にか時間が過ぎ
11時になっていた
思った以上の完成度に
満足して
お兄ちゃんと私は
2人で一枚の毛布にくるまり
眠りについた
‥ぱぱが笑う夢をみた
:09/11/02 17:23 :D905i :j2q9RMHc
#225 [栢]
―‥朝
聞き慣れない声で目が覚めた
「美知ちゃん!起きて!」
「まだ眠い‥よ」
眠たい目を擦って
ぐずり気味の私に
そう言って起こしたのは
パパのお姉ちゃん
つまり、おばさんだった。
明らかに隠し切れていない動揺を
私は感じざるを得なかった
:09/11/02 17:27 :D905i :j2q9RMHc
#226 [栢]
お兄ちゃんは
すでに着替えていて
ぱたぱたと騒がしかった
訳もわからずに着替えさせられ
乱暴にラップに包んだ
おにぎりを手渡され
車に乗せられた。
わかってた‥
だって夢でパパが
にっこり笑ったんだもの
手を振って‥。
:09/11/02 17:30 :D905i :j2q9RMHc
#227 [栢]
「お兄ちゃん‥
お星様‥」
そう言いかけると
「大丈夫、
ちゃんと持ってきた」
と私の頭を撫でて言った。
喜んでもらえるだろうか‥
パパは見てくれるだろうか‥
早くパパの所に行きたくて
胸の奥が騒がしい
足が落ち着かない
:09/11/02 17:33 :D905i :j2q9RMHc
#228 [栢]
車を飛び降りて
お兄ちゃんに手を引かれて
思い切り走った。
ママ、おじさん、ばぁちゃんの
背中が囲んでいる
そして険しい顔のお医者さんが
パパをじっと見つめていた
「パパ、パパ!!
お星様!!お星様だよパパ!!」
みんなをかき分けて
パパの顔の前にあの絵を出した
:09/11/02 17:37 :D905i :j2q9RMHc
#229 [栢]
差し出した絵の端から
パパの真っ白な顔が見えた
「パパ‥?
お星様、美知とお兄ちゃんでね‥」
ママが静かに泣いている声が聞こえた
「‥書いたの一生懸命
お星様にお願いしたの!
パパが元気になりますようにって!」
遠退いていく呼吸を
見て見ぬ振りをして‥
:09/11/02 17:42 :D905i :j2q9RMHc
#230 [栢]
「ねぇお兄ちゃん?
昨日書いたんだよね?」
無邪気に振り返った私に
お兄ちゃんは
肩を震わせながら小さく頷いた
「パパ‥あのね、」
部屋の静けさに
何か話そうと必死だった
:09/11/02 17:45 :D905i :j2q9RMHc
#231 [栢]
ピ―‥
今までに聞いたことのない
耳に突き刺さる音を聞いた
パパの手が氷のように冷たかった
「あなたぁ‥!
いかないで‥いかないでぇ‥」
ママがパパに寄り添い泣き崩れる
お医者が時計を見て何かを言った
:09/11/02 17:48 :D905i :j2q9RMHc
#232 [栢]
嘘だよ‥パパ‥
お星様、
一生懸命書いたのに‥
美知が色塗り下手だったから?
美知が本物のお星様
集められなかったから‥?
ねぇパパ‥わかんないよ
「パパ‥お星様‥」
堪えていた涙が
体の奥から溢れ出しす
:09/11/02 17:51 :D905i :j2q9RMHc
#233 [栢]
「美知‥ありがと‥」
パパが確かにそう言った
消えそうな壊れそうな声で
確かに私にそう言った
その瞬間
魔法が溶けたように
子供らしく泣きわめいた
小さくなって泣く私を
お兄ちゃんは優しく包んでくれた
:09/11/02 17:55 :D905i :j2q9RMHc
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