― 短編箱 ―
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#267 [栢]

「あ‥あのさ、」

僕の口が思わぬとこで先走った。

「なんですか?」

きょとんとした顔。
可愛すぎて‥だめだもう。

「み‥瑞希ちゃんって、
中学の時から変わらないよね!」

意味がわからない発言。
あぁもう‥

⏰:09/11/14 19:53 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#268 [栢]

君の様子を
恐る恐るうかがってみると
少し困ったように‥

「それは‥
喜んでいいのでしょうか?」

透き通った手を口元に寄せて
クスリと笑った。

「もちろん!!‥いい意味だよ」

「ありがとうございます」

きっと褒められるのは慣れてるだろう
それなのに本当に嬉しそうに
笑ってくれるから
諦めきれないんだよ‥。

⏰:09/11/14 19:57 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#269 [栢]

「橘くんも‥
お変わりないですよ?」

僕に向けられた言葉が
優しく虚しさをかき消す。

「背は‥少し伸びましたけど、」

付け足すように言った言葉に
なんだか暖かくなった。
じわりじわりと
何かがこみ上げてくる

「背‥あぁ、
中学の時は小さかったしね」

⏰:09/11/14 20:01 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#270 [栢]

「高校生あたりから‥ですかね?
ぐんと伸びましたよね」

すごい‥よく知ってるな
思わず緩む口元に必死に力を込めた

「よく知ってるね!(笑)
そこまで話したりしてなかったのに‥」

「えぇ‥まぁ。
それくらいわかりますよ」

話の途中に細い髪を耳にかける
たぶんこれは君の癖。

⏰:09/11/14 20:08 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#271 [栢]

「そっか‥そうだよね(笑)」

奇跡なんかが起きたらいいなと
思ってはいけないのだ。

空一面が淡い紫に染まる
消えてゆく赤をよそ目に
真上では白い星が輝いた。

「日が落ちるの‥早くなりましたね」

腕時計を見つめて
ぽつり君がつぶやいた

⏰:09/11/14 20:11 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#272 [栢]

もう帰らなきゃな‥
送っていくとか言ったら
迷惑なのかな。

「瑞希ちゃん‥
あっちの駅まで一緒に帰らない?」

今日の僕はきっと心に決めたんだ。
もう終わりにしようって

「え‥あ‥、はい!
ありがとうございます」

感謝したいのはこっちのほうなのに
君はいつだってそう言うね。

⏰:09/11/14 20:20 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#273 [栢]

人気の少ない無人駅。
あたりの稲穂が風に揺れて
寂しげに奏でてた。

地元同じでよかった‥ほんと。
同じ時間を刻むことに
ほんの些細なことに
君といると幸せを感じるんだ。

古びた小さな電車に乗って
穏やかに揺られて

「こうして一緒に帰るのは、
よく考えると初めてですね」

不器用に開いた2人の空間が
僕らの距離を表した

⏰:09/11/14 20:25 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#274 [栢]

「大学入ってから一回も
駅で会ったことないもんね」

電車の音など気にならない
向かいの窓に映る君しか見れない

「なんだか不思議な気がします」

またクスリと笑う君を
窓越しに見つめた。

いつの間にかアナウンスが
僕らの別れを告げた。

⏰:09/11/14 20:30 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#275 [栢]

地元はやっぱり落ち着く
君と出会ったこの地が好きだ。

「今日はありがとうございました。」

改札を出て振り向いた君を
このまま連れ去りたかった。

「いえいえ‥こちらこそ」

僕らの声しか見当たらない
静かな夜に
ほんのり駅の光が差し込む

⏰:09/11/14 20:34 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


#276 [栢]

「あのさ、瑞希ちゃん
今日は‥伝えたいことが‥」

僕の言葉に被せるように
君が僕の名前を呼んだ。

「あの‥私、明日からもう‥
大学通えないんです。」


チカチカと消えかかる光から
小さな虫たちが去っていく

虚しくすぎる電車の音に
耳を塞ぎたくなった。

⏰:09/11/14 20:38 📱:D905i 🆔:lSHpUp5E


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