― 短編箱 ―
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#194 [栢]

もやもやする胸を抑えて
投げやりに目を擦った

―‥ここどこだろう。
真っ暗な空間が不安にさせる


「メイ!!」

つい、振り向いてしまった

嬉しいのに何かが引き止める
かっこ悪いの。あたし

⏰:09/10/25 18:46 📱:D905i 🆔:Bcm9GRAE


#195 [栢]

「ばかかお前、
普通に寒みーから‥
それに、迷子になるだろ」

暗かったけど確かに見えた
ハルトの真剣な顔

「ごめ‥、」

言い終わる前に
暖かい手に包まれるあたしの冷たい手

「帰るぞ」
緩く笑ったのが見える
ハルトを近くに感じた

⏰:09/10/25 18:50 📱:D905i 🆔:Bcm9GRAE


#196 [栢]

小さい頃にも
一度こんなことがあったっけ

何でだか忘れたけど
こうして手を引かれて夜道を歩いた


過去の自分が羨ましい
もっと一緒にいたかった‥

ハルトの背中はいつのまにか
大きくなっていた
気づかなかったな‥
あたしより、小さかったのに

⏰:09/10/25 18:53 📱:D905i 🆔:Bcm9GRAE


#197 [栢]

玄関には
乱暴に脱ぎ捨てたスリッパ

部屋の灯りに目を細めた

「止めたのによー‥
何で振り払うんだよ、ばか」

少しふてくされてた
愛おしく想っちゃうよ‥もう

「止めが足りないのよ
もっとちゃんと止めなきゃ‥」

冗談よ冗談。
強がり‥わかってたの?

⏰:09/10/25 18:57 📱:D905i 🆔:Bcm9GRAE


#198 [栢]

「これならもう‥
何処にも、行かない?」

ぎゅっと優しく包まれた

つま先立ちで戸惑う
ハルトはもう、こんなに成長したんだ

鼓動が速まる
ばれてしまわぬように
そっと息を吐く

こくり、と小さく小さく
頷いたの

⏰:09/10/26 00:33 📱:D905i 🆔:0HxquaIU


#199 [栢]

どうしよう‥
もう、抑えられない

溢れ出す気持ちを
はっきりと感じた。

「‥何の日だったか、知ってる?」

その低い声が
体の奥底まで響く

「‥わかん ない、」

途切れる言葉をやっと繋げた

⏰:09/10/26 00:37 📱:D905i 🆔:0HxquaIU


#200 [栢]

「嘘‥ついでもいい日。」

4月1日‥あぁそうか、
こんなにうまく行くはずないもんね

一気に涙が溢れ出す
いくら何でも
一番つらい嘘 つくなんて‥

「あたし‥バカなんだから、
期待しちゃう‥やめてよ」

そっと離れようとする体を
また優しく包む大きな手

⏰:09/10/26 00:41 📱:D905i 🆔:0HxquaIU


#201 [栢]

「もう、終わった‥」

ふと時計を見る
―‥0時2分

「嘘‥」

嘘なんかじゃない、
この温もりが事実

「メイがいいや、やっぱり
ってか‥じゃなきゃ駄目っぽい」

耳元で囁く声が春を告げた

⏰:09/10/26 00:46 📱:D905i 🆔:0HxquaIU


#202 [栢]

「ばかだよね‥。もう、ばか」

何かがほどけて雫になる
今までの不安も、隠してた想いも
全部が溢れ出る。


うるせぇよって緩く笑って
また荷物を整理し始めた

さっきとは違うわ‥
時計の音が愛おしい

⏰:09/10/26 00:51 📱:D905i 🆔:0HxquaIU


#203 [栢]

さっきよりも少し
近くに座ってみた。

だけどもどかしい、初めての感覚
‥むずがゆいね

「あ‥懐かしい(笑)
これ、覚えてる?」

そう言って
小さな封筒を渡された。

⏰:09/10/26 00:53 📱:D905i 🆔:0HxquaIU


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