― 短編箱 ―
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#213 [栢]
星のブーケ
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:09/10/29 16:50 :D905i :LGfwOJL.
#214 [栢]
冷たい夜空に両手を広げて
あのキラキラ光る
あの星たちが欲しかった
―‥幼い頃の夢
:09/10/29 16:52 :D905i :LGfwOJL.
#215 [栢]
だけど
どうしても手が届かない
「お星様‥、どうして?」
こぼす涙が月明かりに照らされて
キラキラと光る
この星たちを集めて
プレゼントしたい人がいた
「パパ‥」
:09/10/29 16:57 :D905i :LGfwOJL.
#216 [栢]
仕事中に急に倒れた。
「パパに‥パパにあげたいの」
なんとなく
星を集めてプレゼントしたら
元気になる気がしてた‥
"お星様は、
美知のお願い叶えてくれるんだよ"
だってパパがそう言ったから
:09/10/29 17:01 :D905i :LGfwOJL.
#217 [栢]
パパが倒れてから
毎晩、夜空を見上げては
お願い‥お願いと
泣きながら祈った。
「おもちゃも、お菓子も、
美知‥がまんするからぁ‥」
大好きなパパ
だけどずっと目を閉じてるの
笑ってくれないの‥
:09/10/29 17:05 :D905i :LGfwOJL.
#218 [栢]
パパに会いに行っても
いつもみたいに
お星様の話をしてくれない。
パパはお星様の専門家
いわゆる、 天文学者だった
"今見えるお星様の光はね
何万年も、何億万年も前の
昔の光なんだよ"
そんなことを教えてくれた。
:09/10/29 17:47 :D905i :LGfwOJL.
#219 [栢]
まだその時は幼すぎて
よく理解していなかったけど
夜星に魅了されたのは確か。
何度も何度も
掴もうとしたのに
お星様は、逃げてしまう
「美知‥
お星様に、嫌われちゃった」
泣きじゃくって
もうお願いなんてしないって決めた
だってパパ
元気にならないんだもん
:09/10/29 18:22 :D905i :LGfwOJL.
#220 [栢]
その日から
夜空を眺めるのをやめた
そんな私を見かねてか
お兄ちゃんが近寄ってきた。
「美知?
今日はお星様にお願いしないの?」
お兄ちゃんは6つ上の中学生
「もう、お願いなんてしないの」
しょぼくれながら
指で細い髪をくるくら巻き取った
:09/10/29 18:26 :D905i :LGfwOJL.
#221 [栢]
お兄ちゃんは
どうして? と優しく尋ねて
私と目線を合わせた
「だって、
パパにあげたかったのに‥
お星様、掴まらないんだもん」
大きな瞳に涙を溜めて
巻き取った髪をスルリと放す
お兄ちゃんの手が
私の頭を包むように撫でた。
:09/10/29 18:31 :D905i :LGfwOJL.
#222 [栢]
「じゃあ、美知
お星様の絵書いて
パパにプレゼントしようよ」
クレヨンと画用紙を手渡され
私はは浮かない顔をした
「美知‥下手くそだもん」
ふてくされて全てを放り投げた
パパに似て
いい言い方をするなら
こだわりが人一倍強かった
:09/10/30 15:57 :D905i :d6Zud4xA
#223 [栢]
そしてお兄ちゃんは
パパに似て優しかった
「兄ちゃんがお星様書くよ!
だから、美知は色塗って?
美知色塗り上手でしょ?」
緩く笑ったその笑顔が
パパに似すぎてて
どこかキュッと痛くなる
だけど、
パパが笑ってくれた気がした
:09/10/30 16:03 :D905i :d6Zud4xA
#224 [我輩は匿名である]
私は目を輝かせて
お兄ちゃんが書いた下書きを
丁寧に縁取って
一生懸命色を塗った
いつの間にか時間が過ぎ
11時になっていた
思った以上の完成度に
満足して
お兄ちゃんと私は
2人で一枚の毛布にくるまり
眠りについた
‥ぱぱが笑う夢をみた
:09/11/02 17:23 :D905i :j2q9RMHc
#225 [栢]
―‥朝
聞き慣れない声で目が覚めた
「美知ちゃん!起きて!」
「まだ眠い‥よ」
眠たい目を擦って
ぐずり気味の私に
そう言って起こしたのは
パパのお姉ちゃん
つまり、おばさんだった。
明らかに隠し切れていない動揺を
私は感じざるを得なかった
:09/11/02 17:27 :D905i :j2q9RMHc
#226 [栢]
お兄ちゃんは
すでに着替えていて
ぱたぱたと騒がしかった
訳もわからずに着替えさせられ
乱暴にラップに包んだ
おにぎりを手渡され
車に乗せられた。
わかってた‥
だって夢でパパが
にっこり笑ったんだもの
手を振って‥。
:09/11/02 17:30 :D905i :j2q9RMHc
#227 [栢]
「お兄ちゃん‥
お星様‥」
そう言いかけると
「大丈夫、
ちゃんと持ってきた」
と私の頭を撫でて言った。
喜んでもらえるだろうか‥
パパは見てくれるだろうか‥
早くパパの所に行きたくて
胸の奥が騒がしい
足が落ち着かない
:09/11/02 17:33 :D905i :j2q9RMHc
#228 [栢]
車を飛び降りて
お兄ちゃんに手を引かれて
思い切り走った。
ママ、おじさん、ばぁちゃんの
背中が囲んでいる
そして険しい顔のお医者さんが
パパをじっと見つめていた
「パパ、パパ!!
お星様!!お星様だよパパ!!」
みんなをかき分けて
パパの顔の前にあの絵を出した
:09/11/02 17:37 :D905i :j2q9RMHc
#229 [栢]
差し出した絵の端から
パパの真っ白な顔が見えた
「パパ‥?
お星様、美知とお兄ちゃんでね‥」
ママが静かに泣いている声が聞こえた
「‥書いたの一生懸命
お星様にお願いしたの!
パパが元気になりますようにって!」
遠退いていく呼吸を
見て見ぬ振りをして‥
:09/11/02 17:42 :D905i :j2q9RMHc
#230 [栢]
「ねぇお兄ちゃん?
昨日書いたんだよね?」
無邪気に振り返った私に
お兄ちゃんは
肩を震わせながら小さく頷いた
「パパ‥あのね、」
部屋の静けさに
何か話そうと必死だった
:09/11/02 17:45 :D905i :j2q9RMHc
#231 [栢]
ピ―‥
今までに聞いたことのない
耳に突き刺さる音を聞いた
パパの手が氷のように冷たかった
「あなたぁ‥!
いかないで‥いかないでぇ‥」
ママがパパに寄り添い泣き崩れる
お医者が時計を見て何かを言った
:09/11/02 17:48 :D905i :j2q9RMHc
#232 [栢]
嘘だよ‥パパ‥
お星様、
一生懸命書いたのに‥
美知が色塗り下手だったから?
美知が本物のお星様
集められなかったから‥?
ねぇパパ‥わかんないよ
「パパ‥お星様‥」
堪えていた涙が
体の奥から溢れ出しす
:09/11/02 17:51 :D905i :j2q9RMHc
#233 [栢]
「美知‥ありがと‥」
パパが確かにそう言った
消えそうな壊れそうな声で
確かに私にそう言った
その瞬間
魔法が溶けたように
子供らしく泣きわめいた
小さくなって泣く私を
お兄ちゃんは優しく包んでくれた
:09/11/02 17:55 :D905i :j2q9RMHc
#234 [栢]
子供の私たちは
家に帰らされた。
お兄ちゃんと2人きりの家。
風が窓を揺らす音が
さらに寂しくさせた
「お兄ちゃん‥
パパ‥元気にならなかった」
うつむいて目を擦って
少し震える声で
「美知‥パパの秘密知ってる?」
そう言った。
頑張って明るく振る舞うその声に
私は涙を止めた
:09/11/02 18:00 :D905i :j2q9RMHc
#235 [栢]
顔を上げ
首を横に振って見せる
するとお兄ちゃんは
にっと笑って小声で言った。
「パパって、
お星様の国の王様なんだよ!」
「おうさま?!」
驚いて胸を時めかせた私の口を
塞ぐ
暖かくて大きな手‥。
:09/11/02 18:04 :D905i :j2q9RMHc
#236 [栢]
「だからあんなに
お星様に詳しいんだよ?
それで、今日は帰らなくちゃいけない日
お星様の国のみんなだって
パパが居なくちゃ困ってるんだ」
一気に涙が乾く
とっさに思いついた優しさに
私は笑顔を浮かべた
「だけど‥パパは
美知のパパなんだよ?
勝手に連れてっちゃいや‥」
大好きな初めての"恋人"に
やきもちを焼くくらい大人になった
:09/11/02 18:08 :D905i :j2q9RMHc
#237 [栢]
「美知にもパパが必要なように‥
あっちのみんなにもパパが必要なんだ。
パパは人気者なの、
"お友達とは仲良く半分こ"って
パパと約束したでしょ?」
澄み切った空気に包まれて
私は大きく頷いた
:09/11/02 18:12 :D905i :j2q9RMHc
#238 [栢]
「じゃあ美知‥
お星様の絵パパにあげる!
それで、
みんなに自慢してもらうの!
美知はこんなに上手な絵を書くんだよって!」
にこにこと笑みを浮かべた
ちょっぴり大人になった。
大好きな"恋人"を
少しだけ独占したかった。
「そうしようか」
安心したようにお兄ちゃんが笑う
:09/11/02 18:16 :D905i :j2q9RMHc
#239 [栢]
たくさんの人に見送られて
パパはお星様の国に旅立った。
「美知!ほらあの白い煙‥
パパが馬車に乗ってるんだよ」
「わぁ‥!パパ王様だもんね!!」
笑顔でさよならをした
またいつか帰ってきてねと
:09/11/02 18:19 :D905i :j2q9RMHc
#240 [栢]
その日の夜は
星が満ちていた。
「パパが帰ったから
今日はお星様いっぱいだね」
白い息をリズムに乗せて
「今頃‥
美知の絵、自慢してるよ」
「そうだといいなぁ‥!」
流れ星が一筋
きらり、光って月に消えた
:09/11/02 18:23 :D905i :j2q9RMHc
#241 [栢]
>>213-241
まとまりなさすぎます(´;ω;`)笑
先日
流星群もあったと言うことで
星をネタにしたものが書きたくて
思いつきで書いてみました ^^
今回は恋愛ではなく
家族愛っぽいものを‥
死を暖かく見つめる事と
兄弟愛とパパに恋する娘と‥
いろいろ盛り込みシリーズ!←
何かしら
感じてもらえたら嬉しいです◎
:09/11/02 18:28 :D905i :j2q9RMHc
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