― 短編箱 ―
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#227 [栢]

「お兄ちゃん‥
お星様‥」

そう言いかけると

「大丈夫、
ちゃんと持ってきた」
と私の頭を撫でて言った。

喜んでもらえるだろうか‥
パパは見てくれるだろうか‥

早くパパの所に行きたくて
胸の奥が騒がしい
足が落ち着かない

⏰:09/11/02 17:33 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#228 [栢]

車を飛び降りて
お兄ちゃんに手を引かれて
思い切り走った。


ママ、おじさん、ばぁちゃんの
背中が囲んでいる

そして険しい顔のお医者さんが
パパをじっと見つめていた

「パパ、パパ!!
お星様!!お星様だよパパ!!」

みんなをかき分けて
パパの顔の前にあの絵を出した

⏰:09/11/02 17:37 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#229 [栢]

差し出した絵の端から
パパの真っ白な顔が見えた

「パパ‥?
お星様、美知とお兄ちゃんでね‥」

ママが静かに泣いている声が聞こえた

「‥書いたの一生懸命
お星様にお願いしたの!
パパが元気になりますようにって!」

遠退いていく呼吸を
見て見ぬ振りをして‥

⏰:09/11/02 17:42 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#230 [栢]

「ねぇお兄ちゃん?
昨日書いたんだよね?」

無邪気に振り返った私に
お兄ちゃんは
肩を震わせながら小さく頷いた

「パパ‥あのね、」

部屋の静けさに
何か話そうと必死だった

⏰:09/11/02 17:45 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#231 [栢]

ピ―‥

今までに聞いたことのない
耳に突き刺さる音を聞いた

パパの手が氷のように冷たかった


「あなたぁ‥!
いかないで‥いかないでぇ‥」

ママがパパに寄り添い泣き崩れる
お医者が時計を見て何かを言った

⏰:09/11/02 17:48 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#232 [栢]

嘘だよ‥パパ‥
お星様、
一生懸命書いたのに‥

美知が色塗り下手だったから?
美知が本物のお星様
集められなかったから‥?

ねぇパパ‥わかんないよ

「パパ‥お星様‥」

堪えていた涙が
体の奥から溢れ出しす

⏰:09/11/02 17:51 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#233 [栢]

「美知‥ありがと‥」

パパが確かにそう言った
消えそうな壊れそうな声で
確かに私にそう言った


その瞬間
魔法が溶けたように
子供らしく泣きわめいた

小さくなって泣く私を
お兄ちゃんは優しく包んでくれた

⏰:09/11/02 17:55 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#234 [栢]

子供の私たちは
家に帰らされた。

お兄ちゃんと2人きりの家。
風が窓を揺らす音が
さらに寂しくさせた

「お兄ちゃん‥
パパ‥元気にならなかった」

うつむいて目を擦って
少し震える声で
「美知‥パパの秘密知ってる?」
そう言った。

頑張って明るく振る舞うその声に
私は涙を止めた

⏰:09/11/02 18:00 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#235 [栢]

顔を上げ
首を横に振って見せる

するとお兄ちゃんは
にっと笑って小声で言った。

「パパって、
お星様の国の王様なんだよ!」

「おうさま?!」

驚いて胸を時めかせた私の口を
塞ぐ

暖かくて大きな手‥。

⏰:09/11/02 18:04 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


#236 [栢]

「だからあんなに
お星様に詳しいんだよ?
それで、今日は帰らなくちゃいけない日
お星様の国のみんなだって
パパが居なくちゃ困ってるんだ」

一気に涙が乾く
とっさに思いついた優しさに
私は笑顔を浮かべた

「だけど‥パパは
美知のパパなんだよ?
勝手に連れてっちゃいや‥」

大好きな初めての"恋人"に
やきもちを焼くくらい大人になった

⏰:09/11/02 18:08 📱:D905i 🆔:j2q9RMHc


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