― 短編箱 ―
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#87 [栢]
わかってはいたけど
驚いて言葉がでなかった。
目の奥が熱くなる。
すぐに帰る支度をして
お母さんの迎えを待っている時
ついに泣き出してしまった
信じたくなくて
夢だ夢だと言い聞かせてみたが
止まらない涙
:09/10/12 00:58 :D905i :8HWp1nKk
#88 [栢]
病室に駆け込むと
真っ白なベッドに
白いきれいな顔をした
じいちゃんが眠ってた。
私はその場に泣き崩れた。
声をあげて泣いた。
苦しかったはずなのに
じいちゃんは
あの柔らかい笑顔のままだったから
:09/10/12 01:01 :D905i :8HWp1nKk
#89 [栢]
治すために入院したのに
水だって我慢したのに
どうして死んじゃったの?
ばあちゃんと
紅葉見て魚釣りするんでしょ?
じいちゃん‥、
なんとか言ってよ
:09/10/12 01:03 :D905i :8HWp1nKk
#90 [栢]
その場に
ばあちゃんの姿はなかった
私はそれからずっと
自分の部屋に引きこもって
泣き続けた。
大好きだったじいちゃんが
もういないのだ
:09/10/12 01:05 :D905i :8HWp1nKk
#91 [栢]
それから
お葬式がやってきた
じいちゃんの写真が
きれいなお花に囲まれていた
無口な人だったけど
いろんな人に慕われていたんだろう
たくさんの人が参列していた
その間も
ばあちゃんは泣いていなかった
やっぱり‥、
:09/10/12 01:08 :D905i :8HWp1nKk
#92 [栢]
静かに眠ったじいちゃんの周りに
たくさんのお花と
大好きだったタバコを入れた
しっかりと蓋を閉めて
釘が打たれた。
そして運ばれていく‥
:09/10/12 01:11 :D905i :8HWp1nKk
#93 [栢]
あのばあちゃんが泣いていた
小さな体を
さらに小さくして
顔が崩れてしまいそうなくらい
くしゃっとシワを寄せて
ぼろぼろと涙を流していた
じいさん、じいさん‥
ただただ繰り返すだけだった
:09/10/12 01:13 :D905i :8HWp1nKk
#94 [栢]
じいちゃんは
白い煙になって天国に行った
これから長い旅に出るのだと
お坊さんが言っていた。
そして
紅葉の季節になる
:09/10/12 01:14 :D905i :8HWp1nKk
#95 [栢]
ばあちゃんが
近所の友達と家の居間で話しているのが
たまたま耳に入った。
「最初は信じられなかったよ
ほんとだってわかると
追いかけて逝きたくなっちゃうね
寂しいもんだ‥
癖でじいさんの湯飲みにも
お茶を入れちゃうんだから」
ばあちゃんは
確かにじいちゃんを愛していた
:09/10/12 01:18 :D905i :8HWp1nKk
#96 [栢]
「ひどいことを言ってばかりで
後悔してるよ‥
じいさんに嫌われてしまったね」
ばあちゃん、私知ってるよ
じいちゃんは確かに
ばあちゃんのこと愛していた
:09/10/12 01:21 :D905i :8HWp1nKk
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