曖 昧 ミ ー 。
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#4 [あんず]
:09/10/12 18:34
:W61K
:cIblCj7A
#5 [あんず]
「おい、コラ。
起きろ。遅刻するぞ。」
バシッバシッと朝から
痛々しい音が響く。
この音が朝から響くのはそう珍しいことではない
むしろ毎朝、と言ってもいいほどだ。
:09/10/12 18:35
:W61K
:cIblCj7A
#6 [あんず]
何度叩いただろう。
それでもコイツは起きる気配がない。
そんなコイツを見て、
俺は毎朝ため息を吐く。
どれだけ幸せが逃げていることだろうか。
もうこの俺には幸せなんかないんじゃないか、なんてたまに思ったりもするほどだ。
:09/10/12 18:39
:W61K
:cIblCj7A
#7 [あんず]
「そろそろ起きねぇと置いて行くぞ。」
そう言いながら俺はコイツの頭をもう一度叩いた
するとやっと目を覚ましたのか、コイツはむくりと上半身を起こした。
「…ん、あれ…梓。
おはよう、今日も一段と起きるの早いね。」
:09/10/12 20:06
:W61K
:cIblCj7A
#8 [あんず]
寝起きの癖に爽やかな顔で俺に笑いかけるこの憎たらしい男。
名前は早瀬 皐月。
そしてコイツを毎朝起こしている俺。
名前は早瀬 梓。
:09/10/12 20:16
:W61K
:cIblCj7A
#9 [あんず]
「お前が遅いんだよ。」
俺はため息を吐きながら朝食のトーストを強引に皐月の口に押し込める。
そんな苦しい食べ方でも、「おいひい(美味しい)」と嬉しそうに食べる皐月の笑顔には敵わない。
「ほら皐月、早く食って顔洗え。歯磨きも忘れんなよ。」
:09/10/12 20:58
:W61K
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#10 [あんず]
「ははっ、梓ったら母さんみたいだなぁ。」
「うるせぇ突き飛ばすぞ。…いいから早く支度しろ。」
食べ終わったのか、皐月は洗面所に向かってゆっくり歩いて行った。
一方俺は時計を気にしてばかりだ。
こんな俺らは兄弟。
そして一卵性の双子だ。
:09/10/12 21:04
:W61K
:cIblCj7A
#11 [あんず]
そして、
皐月は俺の双子の兄。
一応アイツは俺の兄貴なのだ。(認めたくないが)
顔は瓜二つ、と言ってもいい程似ているが、性格は全く違う。
絶対に違う。
:09/10/12 21:10
:W61K
:cIblCj7A
#12 [あんず]
おっとりな皐月と
せっかちな俺。
人懐っこい皐月と
人見知りな俺。
もちろん親戚や色んな人に可愛がられるのは皐月の方で。
…昔から皐月にコンプレックスを持っていた、のかもしれない。
:09/10/21 20:36
:W61K
:RmmmgJr6
#13 [あんず]
「(…昔から、ね。)」
薄れた昔の記憶の中で圧倒的な存在感があるあの記憶。
中3の頃の、
一人の女の記憶。
「遅くなってごめん梓、行こっか!!」
靴を履いている俺の後ろからトコトコと歩いてきた皐月。
時計を見ると、8時10分を指していた。
:09/10/21 20:57
:W61K
:RmmmgJr6
#14 [あんず]
「やば、遅刻する。皐月、急いで靴履け!!」
急げと言っても
皐月はもたもたと
靴を履いている。
…コイツは“急ぐ”という言葉を知っているのだろうか。
:09/10/21 21:01
:W61K
:RmmmgJr6
#15 [あんず]
皐月の様子を見ると、もう少し靴を履くのに時間が掛かりそうだ。
―――…いい。
先に外に出てしまおう。
そう思い、俺は勢いよく白い玄関のドアを開いた
:09/10/21 21:36
:W61K
:RmmmgJr6
#16 [あんず]
「きゃっ!!」
小さな悲鳴が耳に入る。
きゃ…?女の声…?
ドアノブにあった
視線を、前に移すと
ふわりと白いワンピースを着た小さな女が、空を飛んでいた。
:09/10/21 21:39
:W61K
:RmmmgJr6
#17 [あんず]
…否、
俺の方に突っ込んできた
「危なっ…!!」
そう思った時にはもう、全ては遅かった。
――――ドサッ!!
:09/10/21 21:41
:W61K
:RmmmgJr6
#18 [あんず]
「「痛………。」」
低い俺の声と
高い声が重なる。
思い切り床に打ちつけた腰が悲鳴を上げている。
…上に乗っかっているこの女が重たい。
:09/10/21 21:43
:W61K
:RmmmgJr6
#19 [あんず]
「梓…とそこの女の子、大丈夫……?」
まだ靴を履いていた皐月が少し眉を八の字にさせてこっちを見ている。
俺の腹には白いワンピースを着た小さい女がいつまでも乗っている。
びくともしないこの女。
…さすがに生きているか心配になってきた。
:09/10/21 21:50
:W61K
:RmmmgJr6
#20 [あんず]
「おい、大丈…」
“大丈夫か”
そう言い掛けた時、その女はむくっと顔を上げた
“美少女”…と言ってもいいくらい綺麗なその顔立ちに、思わず俺は目を見開いた。
:09/10/21 21:53
:W61K
:RmmmgJr6
#21 [あんず]
女は俺から身体を離し、俺の目の前に立った。
腹の解放感が心地よい。
―――胸騒ぎが、した。
胸騒ぎというより、全身の毛が逆立つような。
そんな感覚が、した。
:09/10/21 23:15
:W61K
:RmmmgJr6
#22 [あんず]
「早瀬皐月くん…っ」
女は俺にしっかりと視線を捕らえながら、小さく口を開いた。
透き通るような、声で。
「(なんで名前を知ってる……?)」
初めて見る顔。
決して見たことの
ない顔なのにこの女は
皐月の名前を知ってた…
……あれ?皐月?
:09/10/22 09:15
:W61K
:ot4c4wEo
#23 [あんず]
あれ?コイツ皐月に
用があるんだよな?
でも皐月じゃなく俺に
話し掛けている。
……あれ、もしかして
この女………。
俺と皐月を間違えてる?
「あ、ああ、あのっ
私……私、私と…っ!!」
:09/10/22 09:19
:W61K
:ot4c4wEo
#24 [あんず]
間違えているとも知らず
コイツはひたすら
俺に話し掛ける。
(俺から見ればなんとも
恥ずかしい光景だ。)
緊張しているのか、
肩を震わせながら
目をきゅっと閉じている
しかも言葉は噛みまくり
(コイツ、皐月に
告白でもするのか…?)
いかにも、な
この雰囲気に、
俺は気付いてしまった。
:09/10/22 09:30
:W61K
:ot4c4wEo
#25 [あんず]
いやいや、
気付け。気付けよ。
お前皐月と俺を
間違えんなよ。
確かに似てるけど、
間違えちゃ駄目だろ。
何より、このまま
俺と皐月を間違えたまま
告白でもしたら
お前――――……。
:09/10/22 09:51
:W61K
:ot4c4wEo
#26 [あんず]
「わ、私と……っ!!」
間違えてるとは気付かずにコイツは次の言葉を言おうとしている。
顔は真っ赤。
身体も声も震えてる。
このまま次の言葉を
言ってしまったら
お前、皐月の前で
恥をかくことに……。
:09/10/22 12:11
:W61K
:ot4c4wEo
#27 [あんず]
女はきゅっと
閉じていた目を開き、
1つ深呼吸をした。
変わらずその目は
俺を捕らえている。
そしてスッと
息を吸い込み、
口を開いた。
「待っ…「私と
結婚して下さいっ!!」
:09/10/22 12:55
:W61K
:ot4c4wEo
#28 [あんず]
俺は思わず
固まってしまった。
口をぽかん、と開けて。
結婚…?
“付き合って下さい”
じゃなくて
“結婚して下さい”?
告白じゃなくて
逆プロポーズ?
今流行りの肉食系女子?
いやいや今は
そうじゃなくて…。
:09/10/22 13:01
:W61K
:ot4c4wEo
#29 [あんず]
後ろを振り向くと、
俺と同じように
口をだらしなく開いた
皐月の姿。
鈍感な皐月もさすがに
理解したのだろう。
前を見ると、
更に顔を真っ赤に染めて
再び目を固く
閉じている女の姿。
:09/10/22 13:18
:W61K
:ot4c4wEo
#30 [あんず]
なんという光景。
これは本当のことを
言っていいのか、
言わない方がいいのか。
「…だから…その、
返事、下さいっ!!」
あぁ、やっぱり
気付いてないようだ。
ここは素直に
言うべきなのか…。
:09/10/22 13:35
:W61K
:ot4c4wEo
#31 [あんず]
真剣に俺を
見つめる目は
今にも泣きそうで。
本当のことを
言うのも可哀想だが、
言わない方が
可哀想な気がしてきた。
……よし、言うか。
:09/10/22 13:44
:W61K
:ot4c4wEo
#32 [あんず]
「…あのさ、俺…」
俺が口を開くと、
女はビクッと
肩を震わせた。
よほど緊張
してるのだろう。
…あぁ、更に
言いにくくなってきた。
:09/10/22 13:47
:W61K
:ot4c4wEo
#33 [あんず]
俺は女の緊張してる
雰囲気に呑まれ、
言葉を失ってしまった。
微妙な空気が流れる。
そんな空気を
切り裂いたのは、
「よろしく、
お願いします。…?」
まさかの皐月だった。
:09/10/22 14:28
:W61K
:ot4c4wEo
#34 [あんず]
え、普通に言った。
何も戸惑いもなく
普通に言ったよコイツ。
…てかプロポーズ
受け入れた!?
「ちょ、皐月「え…?」
:09/10/22 15:15
:W61K
:ot4c4wEo
#35 [あんず]
俺が皐月を
止めようとした時、
女の驚いた声が重なった
目の前にいる女を
見ると、あまりの驚きに
顔が青ざめ、
足がガクガクと
震えている。
ようやく自分の
間違いに気付いて
しまったのだろう。
:09/10/22 15:17
:W61K
:ot4c4wEo
#36 [あんず]
口元を隠しながら
女は後退りをした。
目を見開き、
恐怖で歪んだ
ような顔を見せる。
…どんだけ
驚いてるんだよ。
「…皐月くんが、
二人も……?
もしかして………
ドッペルゲンガー…?」
:09/10/22 16:24
:W61K
:ot4c4wEo
#37 [あんず]
「…………。」
俺は思わず絶句した。
あぁ、コイツアホだ。
おっちょこちょい
な上にアホだ。
皐月並みにアホだ。
コイツの頭に
双子という
言葉はないのか。
なんで双子より先に
ドッペルゲンガー?
どんな思考してんだ。
:09/10/22 16:27
:W61K
:ot4c4wEo
#38 [あんず]
「えぇえっ!?
ななななになに僕の
ドッペルゲンガーがいるの……?
梓助けて怖い……」
「…………。」
それに怯えてる
後ろの皐月は
もっとアホだ。
もうただのアホだ。
そして弟に
助けを求めてる皐月は
ヘタレとしか思えない。
:09/10/22 16:34
:W61K
:ot4c4wEo
#39 [あんず]
前には変な勘違いをした
訳わかんない
思考回路のアホ。
後ろにはヘタレな
もう救いようがないアホ
このアホ二人が
もし結婚したら……。
あぁ、もう想像
するだけで寒気がする。
:09/10/22 16:38
:W61K
:ot4c4wEo
#40 [あんず]
俺は1つため息を吐き、ずっと背負っていた鞄を床に置いた。
「ドッペルゲンガー
なんかじゃねぇよ。
双子だ、双子。
お前の好きな皐月は、
俺じゃなく後ろの奴。」
冷たく言い放つと、
女はようやく
理解したのか、
頬を真っ赤に染めた。
:09/10/22 16:45
:W61K
:ot4c4wEo
#41 [あんず]
「私…っ
勘違いして…。」
そう言った
女の顔は今にも
泣き出しそうで。
もう顔は真っ赤で。
正直その顔の赤さに、
凄い…なんて
思ってしまった。
:09/10/22 18:04
:W61K
:ot4c4wEo
#42 [あんず]
「…いや、もう
勘違いのはいいから。
気にすんなよ。」
俺なりの必死な
フォローだった。
泣かれたら
本当に困るから。
「はい……。」
そう言いながら
幼い笑顔を見せた。
その顔は、美少女としか言いようがなかった。
:09/10/22 18:11
:W61K
:ot4c4wEo
#43 [あんず]
すると後ろで
ドッペルゲンガーを
ずっと恐れていた皐月が
やっと立ち直ったのか、突然口を開いた。
「あのさ、梓。
…と僕のお嫁さん。
玄関で立ち話も
あれだし寒いし、
一回家の中入ろう?」
:09/10/22 18:17
:W61K
:ot4c4wEo
#44 [あんず]
……珍しく
皐月が正論を言った。
(僕のお嫁さん辺りは
若干気持ち悪いが。)
俺は頷き、
開きっぱなしの
玄関のドアを閉めて
家の中に入った。
女も遠慮がちに
俺の後ろを着いてきた。
そんな姿が少し
犬みたいで、笑えた。
:09/10/22 18:20
:W61K
:ot4c4wEo
#45 [あんず]
時間を忘れて
いたのに気付き、
俺は慌てて
腕時計に視線を向けた。
―――― 8時47分。
今日は学校
サボるしかねぇな。
1つため息をし、
俺はソファーに
ゆっくり腰をかけた。
:09/10/22 18:26
:W61K
:ot4c4wEo
#46 [あんず]
早瀬 梓。
高校3年の18歳。
…最悪な日々の
幕開けです。
:09/10/22 18:37
:W61K
:ot4c4wEo
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