街がスカーレットに染まる時
最新 最初 🆕
#92 [ぎぶそん]
しばらくして、真織に続くように私も街中の中華料理店でアルバイトをすることとなった。

厨房に入って、ただただ機械のように主に配膳と皿洗いをし続ける。
慣れて来たら、ホールの仕事内容もさせられるらしい。

アルバイトの最中、同期で入った中野静香という同級生の子と親しくなった。

店の近くの美容専門学校に通っているらしく、見た目も金色に染めた髪と特徴的なマッシュルームヘアの髪型、個性的な服装とそれらしい。

小柄な体格と頬を染めるピンク色のチークが、どこと無く佳奈を思い出させる。

⏰:09/11/03 03:20 📱:SH705i 🆔:G9w4Ke6c


#93 [ぎぶそん]
「初給料で何買おっかなー。かなめは欲しいものとかある?」

狭い厨房の隅で皿洗いをしながら、静香がこちらに話し掛けてくる。
その傍らで私は、注文を受けた分のご飯を電気釜から速やかについでいた。

「アコギが欲しい」

「へー。音楽するんだあ。何か意外」

水道から流れっぱなしの水の音に負けないようにと、静香が少し声の音量を上げて言う。

私自身も、まさか自分が音楽をやろうと決意するなんて思ってもみなかった。
目を閉じると、部屋の壁にもたれて弾き語りをする真織の姿が浮かぶ。
今の私の羨望の的。

⏰:09/11/03 03:51 📱:SH705i 🆔:G9w4Ke6c


#94 [ぎぶそん]
アルバイトから帰宅すると、物音一つしない明かりの点いたリビングで真織が寝転がっていた。
テーブルの上には二人分のコンビニ弁当と、溢れんばかりの吸い殻が入った灰皿が。

「今までずっと何もしないでそうしてたの?
先に食べてれば良かったのに」
私は肩から提げていたショルダーバッグを外し、床に置いた。

「誰かさんだっていつも俺の帰りを待ってるじゃん」彼が上体を起こして、欠伸をしつつ少し寝癖のついた髪を掻き分ける。
その仕草を見て、私は顔に笑みを浮かべた。

立ち仕事からくる足の痛みも何処へやら。

⏰:09/11/04 02:54 📱:SH705i 🆔:JwJwdF2k


#95 [ぎぶそん]
「椎橋は『三日月ロック』、長田は『名前をつけてやる』、小柴は『惑星のかけら』派なんだとよ」

弁当に入ってるコロッケに付属のタルタルソースをかけながら、彼が口を開く。今日はバンドのメンバーでスピッツのどのアルバムが好きかそれぞれ打ち明けたらしい。

「私は『フェイクファー』かな」
私も彼と同じようにして、ソースを目一杯出す。

「『スカーレット』好きだねえ」

「あんたは何派なの?」

「内緒」

何それ。隠す必要がどこにあるのよ。
スピッツを話す時の彼はいつも嬉しそうで、照れ臭そうだ。

⏰:09/11/04 03:19 📱:SH705i 🆔:JwJwdF2k


#96 [我輩は匿名である]
あげ
がんばって!

⏰:09/11/26 18:24 📱:W56T 🆔:Qz9p.CVk


#97 [ぎぶそん]
「…『三日月ロック』」
彼が固有名詞をぼやく。

「え?何?」

「俺が一番好きなの。椎橋が今日絶賛してた時、『げっ!被ってる!』って思った」
彼が少しぷんむくれの表情をしながら、頭を掻いた。

なーんでそこで同じ気持ちを素直に共有しないのかな。
友達どうし気が合う証拠ってことでいいじゃない。

「…今度のライブでは『三日月ロック』の曲を中心にやるよ」
彼が私の瞳を見て言った。
彼の透き通った真っすぐな視線と、私の視線が重なる。

うん、とそれをありのまま受け入れる形で私は小さく頷いた。

⏰:09/12/01 01:26 📱:SH705i 🆔:tD4FaRYY


#98 [ぎぶそん]
「『ロビンソン』の歌詞って何を言ってるのか分かんなくない?」

食事を済ませた後、無言のまま歌詞カードを見つめていた彼が口を開いた。
部屋からは丁度、彼の言う曲が流れていた。

「心中をイメージした歌っていう噂は聞いたことはあるけど。
でも私は違うと思うな」

私はきっと、歌詞を書いた草野さんですら全てを理解出来てないなんて思ってる。

「考えるな、感じろってことか」
彼が歌詞カードを閉じる。

きっとスピッツの歌は、誰からしてみてもその人だけの世界にすることが出来るから、いいんだね。

⏰:09/12/01 01:43 📱:SH705i 🆔:tD4FaRYY


#99 [ぎぶそん]
日曜日の夕方。
アルバイトから帰宅すると、横になった彼が携帯型ゲーム機をいじっていた。
その周辺では電気量販店の袋や口の開いた箱、説明書等が散らばってる。

ゲーム機の画面を後ろから覗き込むと、彼は『ポケットモンスター』のゲームの最新作を黙々とやっていた。
うわー、懐かしい。小学生の頃物凄く流行ってたなあ。

「あんたがポケモンするなんて意外」
私は少し茶化してやった。

「俺、思いきり『ポケモン世代』だし。ガキの頃から新作が出る度買ってるの」彼は黙々とタッチペンでゲーム操作をする。

⏰:09/12/01 02:02 📱:SH705i 🆔:tD4FaRYY


#100 [ぎぶそん]
見た目に似合わず、可愛いところがあるじゃない。
何だろう。真織と居ると常に何か新しい発見と癒しがある。

「『ハルノウタ』に『ワカバ』…」
彼はゲーム内の自分のポケモンたちに愛称をつけていた。
どれもスピッツの曲名に関するものばっか。

「ニックネームあった方が愛着湧くしね」
さっきから彼の発言の一言一言が不似合い過ぎて、お腹がよじれそうだ。

「あ、ライバルの名前は『カナメ』に設定したから。これからこてんぱんにやっつけてやるわ」
彼が意地悪そうに笑う。
私は後ろからその頭を小突いた。

⏰:09/12/01 02:19 📱:SH705i 🆔:tD4FaRYY


#101 [ぎぶそん]
数日後の放課後、私は写真を撮る最適な題材となる「景色」を探す為、ぼんやりと街を歩き続けていた。

普段は足を入れたことのない地下道を下りてすぐ、茶髪の若い男性がギターケースの上に座って弾き語りをしているのが見えた。
斉藤和義の「歌うたいのバラッド」を、楽譜も何も見ずに慣れた様子で歌い続ける。
ストリートライブという奴か。

私は思わず立ち止まり、彼の真正面にくるように反対側の壁に腰を下ろした。
少しだけ、いつか真織が「スカーレット」を歌っていた時と同じ空気がそこに流れていたから。

⏰:09/12/02 00:15 📱:SH705i 🆔:nIbz/fOI


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194