街がスカーレットに染まる時
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#102 [ぎぶそん]
男性のその歌を聴き入って間もない内に、彼はその一曲を歌い上げた
彼が顔を上げ、数メートル先にいる「客」の私に声を掛ける。
「…こんにちは!」

彼の目尻のシワがくっきりと表れる。
黒目がちなその瞳は、都会の空気に濁ることなく光を発していた。
この人、普段他人に恨みを買われることがないだろうなと思った。

「今日は雲一つないいい天気ですね」
「え?ああ、そうですね」

差し障りのない天候の話から二人の会話は入っていく。
一時も彼は笑顔を崩さないでいた。

⏰:09/12/04 00:36 📱:SH705i 🆔:36M7fz9.


#103 [ぎぶそん]
そうして話はだんだんとお互いのことについて進んでいく。
男性の名前は村山啓司さん。
ここら近辺にある私立大学の四年生らしい。
私は彼に自分の名前と身分、そして今何か写真を撮る為に色んな場所を歩き回っていることを伝えた。

「音楽はどんなの聴くんですか?」
啓司さんが口元を緩ませて私に問う。

「スピッツが好きです」
「…スピッツ!いいですよねー。
僕もよく聴きますよ」

彼の声のトーンが上がる。
そして彼は自分の目の前に広げてあった持参のファイルノートを、パラパラとめくり出した。

⏰:09/12/04 15:20 📱:SH705i 🆔:36M7fz9.


#104 [ぎぶそん]
「久しぶりだから歌えるかは分からないけど…」
啓司さんが一度、コホンと小さく咳ばらいをした。

その数秒後彼がギターに手をやると、地下道に乾いたギターから奏でられる「ロビンソン」のイントロが響く。
それを男らしい重量感のある声で、彼が歌い続ける。
真織が普段スピッツを歌う時とはまた違う世界観が漂っていた。
そういえば、真織はまだ私の前でこの歌を歌ってくれてないなと思った。

私は首から提げていたカメラを自分の顔の前にやった。
レンズ越しに彼と彼を取り巻く全てを見つめる。

⏰:09/12/06 00:27 📱:SH705i 🆔:T9/Xo4o6


#105 [ぎぶそん]
シャッターの音が彼の弾き語りを邪魔しないようにと、遠慮しがちに鳴る。
被写体となった彼は、若干顔に恥ずかしそうな笑みを浮かべていた。

「良かったらまた遊びに来てください。
毎週木曜日のこの時間帯は、いつもここにいますんで」

ストリートライブが終わった後の立ち話の際に、彼にこう伝えられた。

私は時間の許す限りは何度でもここへ来ようと思った。
一枚の写真に収めても、何度でも自分の目で見たい風景を見つけたから。

私は啓司さんの純朴そうな風貌と物越しの低い姿勢に、人間としての魅力を感じた。

⏰:09/12/06 00:45 📱:SH705i 🆔:T9/Xo4o6


#106 [我輩は匿名である]
楽しみにしてます(^^)

⏰:09/12/06 06:08 📱:SH906iTV 🆔:NvD7CL3s


#107 [ぎぶそん]
翌日。軽音学部の定期ライブ本番がいよいよ次の日と迫った。
夜、私と真織はお互いの子供時代について語り明かすこととなった。

彼は小学生の頃から大勢の前で面白いことをやってみせたり、それによって皆を笑わせるのが好きだったらしい。
ムードメーカーな所は今とはほとんど変わってない様子。

「あの頃は皆でサッカーの練習サボって、誰かの家で皆でポケモンのアニメ観てたっけなあ」

テーブルに頬杖をつき、天を仰いで彼が言う。

「今でもポケモンのゲームやってるの俺だけなんじゃね」という呟きに私は笑った。

⏰:09/12/07 21:53 📱:SH705i 🆔:xg7qNZ7o


#108 [ぎぶそん]
そして中学生の頃にギターを覚え、文化祭で当時「Brand‐New Myself〜僕にできること」がブレイクしたチャコールフィルターのコピーを演ってみたらしい。
懐かしい。解散するには惜しいバンドだった。

「高校は男子校だったよ。
野郎共でワイワイ騒ぐの好きだし」

彼が紙パックのジュースを音を立てて吸う。

私は元彼の優哉も同じような理由で、高校は男子校に通っていたという話を思い出した。

たったそれだけの記憶が蘇っただけで、視界にぼんやりと靄がかかる。
心に何か見えないトゲが刺さる。

⏰:09/12/07 22:12 📱:SH705i 🆔:xg7qNZ7o


#109 [ぎぶそん]
「かなめは?どんな感じだった?」

彼の問い掛けでふと我に返る。
彼がこれから私からどんな話が聞けるのだろうと、好奇心旺盛の目で見てくる。

私は口数が少なくて、周りとの壁を作っていた幼少期を送っていた。
クラスに一人は存在するような、休み時間も誰とも馴染もうとせず席に座ってるような子だった。

そうに告げると、「あー、そんな感じがするわ」と納得したように言われた。

「そういえば一人だけ、『千明』って子はちょっかいを出してくれていたなあ」
私はある同級生の存在を、記憶の片隅から思い出した。

⏰:09/12/07 22:29 📱:SH705i 🆔:xg7qNZ7o


#110 [ぎぶそん]
小六の時同じクラスになった富田千明は小学生ながら美容やお洒落に関心を持っていて、実にませた子だった。

長身で子供離れしたスタイルを持っていたので、自分自身を高めたいという意識が早熟したのだろう。

そんな彼女は、自分とは対照的な地味で存在感の薄かった私を「あだっち」という愛称で呼び、放課後になるとちょくちょく遊びに誘ってくれた。
本屋でファッション雑誌を立ち読みしたり、グラウンドでやっているサッカー部の練習を眺めていたりしていた。

私は彼女といる時、いつも楽しくないと感じたことはなかった。

⏰:09/12/10 00:28 📱:SH705i 🆔:AKXQnaXE


#111 [我輩は匿名である]
111

⏰:09/12/10 03:23 📱:SH904i 🆔:wT5Q3hb6


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