<<来栖>>
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#65 [nanoka]

俺が2人目に常連さんだと認識して名前を覚えたのは明日香さんだった。

キャバ嬢らしく、いつも店に来た時にはすでに酔っ払っていた。

仕事終わりに一人で一杯だけカクテルを飲みに来る。

⏰:09/10/18 15:23 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#66 [nanoka]

明日香さんはよく俺に自分が体験した怖い話をしてくれた。

どうやら明日香さんの話を聞いてビビる俺の姿が面白いらしい。

「ねー、ちょっと聞いてよ。また変な体験しちゃってさー」

⏰:09/10/18 15:28 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#67 [nanoka]

大体こんな砕けた感じで、明日香さんの話は始まる。

「今度は何があったんですか!?」

心霊好きな俺としては明日香さんの話を聞くことは、ちょっとした楽しみの一つだった。

⏰:09/10/18 15:31 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#68 [nanoka]

「この間あそこを車で通ったんだけどさー」

「えっ?あそこってどこですか?」

俺が訊くと、明日香さんは煙草に火をつけながら答えた。

⏰:09/10/18 15:34 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#69 [nanoka]

「あそこよ、あそこ。焼身自殺があったアパート!知らないの?」

この辺で数年前にそうゆう事件があったという噂は聞いたことがあった。

「噂は聞いたことありますけど…」

⏰:09/10/18 15:38 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#70 [nanoka]

横目で蒼井さんに助けを求めると

「拓真くんのマンションのすぐ側ですよ」

と、話題を繋いでくれた。

そんな近くであった事件だとは知らなかったので驚いた記憶がある。

⏰:09/10/18 15:41 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#71 [nanoka]

「何年か前のことだしもう忘れかけてたんだけど、そのアパートの近くになって急に思い出して…」

車の助手席に乗っていた友達に明日香さんは言ったらしい。

「そういえば焼身自殺があったアパートってこの辺だよね」って。

⏰:09/10/18 15:44 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#72 [nanoka]

「その瞬間、車のロックがガチャガチャ鳴りはじめてさー」

「うわっ。怖っ!」

俺の反応を楽しむように明日香さんは続けた。

⏰:09/10/18 15:52 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#73 [nanoka]

「驚いてブレーキ踏んで車を停めたんだけど…顔あげたらそこちょうどそのアパートの目の前の道だったんだよね」

霊感もないくせに両腕に鳥肌が立ってしまった俺は、いつものように腕を擦りながら怖いを連発した。

⏰:09/10/18 15:55 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#74 [nanoka]

「ヤバいと思ってすぐに車を発進させたよ。で、もし憑いてたら嫌だなーって思って蒼井くんに会いに来たってわけ」

話終えた明日香さんに蒼井くんは微笑んだ。

「大丈夫ですよ。というか多分彼はあそこのアパートから動けないと思います」

⏰:09/10/18 15:59 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#75 [nanoka]

何でそんなことわかるんですか!ってツッコみたい気分を抑えつつ2人の話を聞いていた。

霊感体質なのか、明日香さんは毎週のように心霊体験をしては蒼井くんに憑かれてないかと確認していた。

前回来た時にも有名な心霊スポットに行ってきたと話していた。

⏰:09/10/18 16:04 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#76 [nanoka]

「いやー、夜中のトンネルって怖いね!まじで。ごめんなさい連発しちゃったよ、あたし」

いつもにも増してテンション高く話はじめた明日香さんに俺は手をとめた。

「トンネルってだけでもう怖いじゃないですか」

⏰:09/10/18 16:11 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#77 [nanoka]

「拓真くんてさ、聞きたがりのくせにビビりだよね」

性格をズバリ言い当てられた俺は微妙な心境で明日香さんの顔を見た。

「ま、そこが面白いんだけどねー」

⏰:09/10/18 16:13 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#78 [nanoka]

「てか何で夜中にトンネルなんか行ったんですか?」

俺が訊くと、明日香さんはきょとんとした顔をした。

「夜中にトンネルに行く理由なんて一つしかないじゃない」

⏰:09/10/18 16:16 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#79 [nanoka]

「肝試しですか?」

明日香さん、わざわざ試さなくても十分肝据わってるのに…。

などと考えながらそう訊くと明日香さんは大きく頷いた。

⏰:09/10/18 16:19 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#80 [nanoka]

「そうそれ!肝試しに行ってきたの」

怖かったと言っているわりに嬉しそうに見えたのは、多分気のせいではなかったと思う。

肝試しといっても当初の計画ではただトンネルを見に行くだけだったらしい。

⏰:09/10/18 16:22 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#81 [nanoka]

「でもさー、何か実際に見てみたらそれほどってゆうか全然怖くなくて」

怖くなかったのは明日香さんだけじゃないかと思いながら話を聞いた。

「お酒もちょっと入ってたし車から降りて歩いて中に入ってみようってことになったのね」

⏰:09/10/18 16:26 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#82 [nanoka]

「酒の勢いって怖いですね。てか、何人で行ったんですか?」

「あたし入れて3人。みんなキャバ嬢だよー。今度連れて来てあげよっか?」

「いや、遠慮しときます」

⏰:09/10/18 16:28 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#83 [nanoka]

俺は深々と頭を下げた。

女3人で夜中のトンネルに入れる度胸のあるお姉さん方に囲まれたら、俺には到底相手に仕切れないだろう。

「ふーん。ま、いいや。それでさっきの続きなんだけど、いざ中に入ったものの何も起きなくてさー」

⏰:09/10/18 16:32 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#84 [nanoka]

その時不意に明日香さんはあることを思い出したらしい。

そのトンネルの中にはお地蔵様があって、そのお地蔵様に触れると何かが起こるという噂だ。

「で、そのお地蔵様を探そうってことになったんだけど暗くてよく見えなくて」

⏰:09/10/18 16:40 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#85 [nanoka]

そこで明日香さんたちは、わざわざ車まで戻って車でトンネルに入りなおしたらしい。

すごい執念!笑

「車のライト照らしながらゆっくりトンネル進んでたらあったんだよね、ほんとにお地蔵様が」

⏰:09/10/18 16:57 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#86 [nanoka]

「見つけたからには触るしかない!ってなってみんなで車降りてお地蔵様の頭をなでなでしたのね」

「あり得ないですって。度胸有りすぎでしょ!」

俺の反応が面白いのか明日香さんは笑いながら、煙草の煙を吐いた。

⏰:09/10/18 17:01 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#87 [nanoka]

「でも何も起きなかったから白けて帰ろうってことになったのね」

「えっ?何もなかったんですか?」

「その時まではね」

⏰:09/10/18 17:03 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#88 [nanoka]

そう言って明日香さんは意味有り気な顔をした。

「3人で車に戻ってエンジンをかけて、さー帰るかって時になって後部座席に乗ってた子が突然悲鳴をあげたの」

⏰:09/10/18 17:05 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#89 [nanoka]

「ビックリして振り向いた瞬間、あたしも助手席にいた子も悲鳴あげちゃったよ。だってその子がお地蔵様の頭抱いてるんだもん」

「うわー。うわー。最悪の展開っすね」

俺はその時の様子がリアルに想像できた。

⏰:09/10/18 17:10 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#90 [nanoka]

「お地蔵様の頭なんかさすがに持って帰れないし、とりあえず返そうってことになったんだけど…」

「何でそんな冷静な判断下してるんですか」

「だってその子も何で持ってるのかわかんないって言うし…」

⏰:09/10/18 17:12 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#91 [nanoka]

「でさ、さっきお地蔵様があった場所に戻ったんだけどなかったんだよねー、お地蔵様」

「怖いし、どうにもならないしほんと最悪じゃないですか」

明日香さんとだけは肝試しに行きたくないって本気で思った。

⏰:09/10/18 17:16 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#92 [nanoka]

「暗いから場所間違えたのかなって話になってまた車に戻ったんだけど、今度は車が見つからなくてさー」

明日香さんの言葉に笑ったのは、蒼井さんだった。

「すいません、つい。拓真くんの言うようにほんとにあまりに最悪過ぎる展開だなと思って」

⏰:09/10/18 17:19 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#93 [nanoka]

「ほんと最悪ですよ!車はないしお地蔵様の体も見つからないし!!」

蒼井さんの同意を得たのが嬉しかったのか、明日香さんのテンションはさらに上がった。

「それで3人で途方に暮れてた時に聞こえてきたんですよ、足音が」

⏰:09/10/18 17:23 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#94 [nanoka]

姿は見えないけど、お地蔵様の足音だって3人ともがわかったらしい。

ゆっくり近付いてくる足音を聞いているうちに、どんどん空気が重くなっていったと明日香さんは言った。

⏰:09/10/18 17:25 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#95 [nanoka]

「あ、逃げないとヤバいって思ったね、直感ってやつ!」

「正しい判断ですね」

いつの間にか作業をやめて俺の隣に立っていた蒼井さんがそう呟いた。

⏰:09/10/18 17:27 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#96 [nanoka]

蒼井さんが言うのだから、正しい判断だったのだろうけど逃げても逃げてもトンネルから出れなかったらしい。

「足音はすぐ後ろまで迫ってるし、出口は見えないしで、ほんと焦った!走りながらごめんなさいってひたすら謝ったもん!!」

⏰:09/10/18 17:30 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#97 [nanoka]

夢中で逃げて気が付いたらトンネルの外に出てて、抱えてたはずのお地蔵様の頭もなくなってたらしい。

「あれはほんとに怖かった!」

と、興奮気味に話す明日香さんに蒼井さんは静かに微笑んだ。

⏰:09/10/18 17:44 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#98 [nanoka]

「憑いてきてはないみたいですね」

蒼井さんの言葉に、明日香さんはホッとした表情を見せた。

「心配でしたら、そのお友達も視てみますから今度連れて来て下さい」

⏰:09/10/18 17:46 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


#99 [nanoka]

俺の顔を見ながら蒼井さんは言葉を続けた。

「拓真くんがお相手しますから」

肝っ玉の据わったお姉様方に囲まれるってある意味お地蔵様よりも怖いかもしれないと蒼井さんのちょっと意地悪な笑顔を見ながら思った。

⏰:09/10/18 18:48 📱:P906i 🆔:Fnj.Jafo


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