こちら満腹堂【BL】
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#101 [ひとり]
「お黙り!!!!とにかく俺はまだお前を許しちゃいないんだよ!!!!!」
「・・・・・・・」
「オイ、声に出さなくても"面倒くせぇ"って顔に書いてあんぞ」
「あ、すんません」
「何その思いもしませんでした顔!!!!わざとらしいんですけど!!!!」
・
:09/12/12 19:01 :F01B :ql9Mw/7E
#102 [ひとり]
言って至近距離でメンチを切られた。俺のが頭一つ分くらいデカいもんだから、なんか見上げる形の三田さんはちょっとマヌケだ。
とか今言ったら"火に油"なので、そんなバカはしない。
「すんませんでした。でもまた生えてくるんだから・・」
現にもう三田さんの顎には新しいメンバーが堂々揃い組だ。
・
:09/12/12 19:06 :F01B :ql9Mw/7E
#103 [ひとり]
「そういうこっちゃないの!!悪いと思ったら素直に謝る!!!それができるヤツはまだ伸びしろがあるって先生思う!!!!」
「母ちゃんになったり先生になったり、世話しないねあんた」
「このへそ曲がり!!!!」
話しが全然先に進まない。
確かに勝手に許可なく髭を剃ったのは悪かったが、絶対にその方がいいって心底思う俺は素直に謝れないでいた。
・
:09/12/12 19:14 :F01B :ql9Mw/7E
#104 [ひとり]
【訂正】
× 世話しない
○ 忙しない
すんませんした
・
:09/12/12 19:16 :F01B :ql9Mw/7E
#105 [ひとり]
「じゃーどしたらいんすか?」
途方に暮れる俺と、沸点をかるく突破した三田さんの間
「まぁまぁまぁまぁ」
言いながら入ってきたのは弘さんだ。
「お前熱くなりすぎ。根岸も、一言素直にごめんて言ってやれよ」
・
:09/12/12 19:19 :F01B :ql9Mw/7E
#106 [ひとり]
「"やれ"ってなんだよ!!俺はそんなんで謝られたって嬉しくもなんともねぇし!!!!」
「はいはい」
「流すな!!!!」
仲裁役を買って出てくれた弘さん。なのに俺は
嫉妬してる。
・
:09/12/12 19:24 :F01B :ql9Mw/7E
#107 [ひとり]
なんか、弘さんに三田さんを取られたみたいな感覚。上手く言えないけど。
「ひろむも俺の事舐めてんだろ!!」
「舐めてねって」
「ひろむ」って呼ぶ三田さんの声が特別な感じがするのも、
ムカつく。
・
:09/12/12 19:28 :F01B :ql9Mw/7E
#108 [ひとり]
嫉妬、疎外感、喪失感、また嫉妬。
気分が悪い。
「もういっすか?俺あがるんで」
早口で言ってバックルームへ向かった。うぜぇ。
・
:09/12/12 19:32 :F01B :ql9Mw/7E
#109 [ひとり]
何がうぜぇかって、こんな気持ちになってる俺自身が一番うぜぇ。
23にもなって、自分の気持ちもコントロールできないなんて。
バックルームのロッカーにゴツと額を打ち付けた。
「カッコ悪・・・・」
・
:09/12/12 19:35 :F01B :ql9Mw/7E
#110 [ひとり]
───
─────
着替えを済ませてホールに出ると、既に二人の姿はなかった。
「鍵・・・・」
しまった、俺は今日鍵を持っていない。閉めらんねぇじゃん。
今日鍵持ってんのは──
キッチンの当番ボードに「鍵」のマグネットが張ってあるスタッフを探すと「三田」「長谷部」とあった。
・
:09/12/12 19:42 :F01B :ql9Mw/7E
#111 [ひとり]
三田さんは気まずいから、長谷部さんに電話する事にする。
ケータイの履歴から、長谷部さんに発信。「呼び出し中」の表示画面をぼんやり見下ろしていると
「おいまだかよー」
声がして、店内に冷気と外の匂いが滑り込んできた。
・
:09/12/12 19:47 :F01B :ql9Mw/7E
#112 [ひとり]
「帰ってなかったんすね」
ケータイ片手に言う俺を
「当たり前だべ、お前鍵ねぇじゃんか」
不機嫌そうに睨む三田さんの顔は、鼻から下がグルグル巻きのマフラーに隠れて見えない。
・
:09/12/12 19:52 :F01B :ql9Mw/7E
#113 [ひとり]
「いいから早よ外でれ」
言われてケータイの液晶に目をやると画面はまだ呼び出し中。俺は素早くそれを切って、三田さんの開放ったドアに向かった。
─────
外には、まばらな人影。
「お前今日チャリは?」
・
:09/12/12 20:06 :F01B :ql9Mw/7E
#114 [ひとり]
「今日雨だったんで」
「したら今日電車?」
「はい」
「ふーん・・・」
さっきの興奮が嘘のような普通の会話。こりゃ弘さんにお灸を据えられたに違いない。
弘さんの言うことを、大概最後は素直に飲み込むっていう三田さんのパターンを知っている俺は、また少しモヤっとした気持ちになる。
・
:09/12/12 20:12 :F01B :ql9Mw/7E
#115 [ひとり]
「したらさぁ、送ってやろっか」
「え?」
突然の申し出だった。
三田さんちは、店からも近い。
「送ってやるよ、バイクあるし」
「・・・ありがとうございます」
・
:09/12/12 20:16 :F01B :ql9Mw/7E
#116 [ひとり]
「うん。てか腹へらね?」
本当にこの人の会話の展開は唐突だ。
「腹ですか、まぁボチボチっすかね」
「うん、じゃ作ってよ」
「はい?」
なにが「うん」なのか、てかなんで俺が飯を?三田さんに?
・
:09/12/12 20:20 :F01B :ql9Mw/7E
#117 [ひとり]
「したらさ、チャラにしてやるよ1206事件の事は」
いつの間にか三田さんの中で俺がしでかしたアレは、「1206事件」と命名されていたらしい。
「材料あるの?」
「あるよ、チャーハン食べたい」
「はい」
それで話しがまとまった俺達は、三田さんちに向かって歩き出した。
・
:09/12/12 20:26 :F01B :ql9Mw/7E
#118 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
第五話も完結しました。焼き餅な根岸とよく喋る三田。さてさて三田んちでチャーハン作ることになった根岸ですが──話しは六話に繋がりますです!!
・
:09/12/12 20:29 :F01B :ql9Mw/7E
#119 [りんご]
またまたコメしてしまう
りんごです(´∀`)ノ
根岸と三田さんの
やり取り素敵ですね
根岸がんばー(´∀`)!
あ、感想板とか
つくらないんですか?
なんか話の途中に
コメしちゃうのが
悪い気がして(´Д`)
:09/12/12 20:48 :SH903i :ESdadqyQ
#120 [ひとり]
【第六話/パラパラ黄金炒飯】
「お邪魔します」
「どうぞ」
三田さんちに上がったのは初めてだった。
予想外に小綺麗なマンションの二階。
「取り敢えず洗面所借りていいすか」
「おう、てかキッチンで洗えば?」
「冷えたんでトイレも行きたいし」
「あぁ」
三田さんは「こっち」と言って俺を案内すると、先にリビングにいるからと言って突き当たりの部屋に消えて行った。
・
:09/12/12 20:55 :F01B :ql9Mw/7E
#121 [ひとり]
>>119りんごさん
キャーまたまた来てくれたんすね。う、嬉しくってなんだか視界が霞むぜ(うω;)←
感想板すか〜ひとりみたいなもんがそんなんおこがましくないすかね?
うちはここで書きつつコメ頂ける感じが気に入ってますが´∀`dbヒヒヒ
読む方にしたらやっぱ読みづらいですかね?
・
:09/12/12 21:02 :F01B :ql9Mw/7E
#122 [りんご]
ここにだけは頻繁に
来てますよ(`∀´)にひ
読みづらいと
読んでる方に
申し訳ない気がして
読んでるとついつい
コメしたくなるんです…りんごみたいなやつが厚かましいですね!
ごめんなさいです(´Д`)
:09/12/12 21:11 :SH903i :ESdadqyQ
#123 [ひとり]
セパレートタイプのバストイレ。用を足し、洗面台で手を洗う。視線を手から正面に向けると、鏡の中の自分と目が合った。
これはまた、予期せぬ展開。
「チャーハン食べたいって・・・」
可愛いなチクショー。
・
:09/12/12 21:11 :F01B :ql9Mw/7E
#124 [ひとり]
>>122りんごさん
いゃいゃコメ下さるとひとりかなりテンション上がるんで、これからもちょーだいませヨーアニョハセヨー(意味不)
ぢゃ他にも板別にあったがいいて方がいれば、作るかも・・・・です(´∀`)
・
:09/12/12 21:15 :F01B :ql9Mw/7E
#125 [ひとり]
>>123【つづき】
リビングでは、既に部屋着になってテレビを観る三田さんがいた。若手のお笑い芸人がベタベタの液体を頭から被って笑いをとっている。
「キッチン借ります」
背中に声をかけると、寝転んだ大勢で顔だけこちらに捻って
「お願いねー」
と一言。直ぐにテレビに視線を戻した。
・
:09/12/12 21:22 :F01B :ql9Mw/7E
#126 [ひとり]
「さてっと」
チャーハン作りは手早さと火力が勝負だ。そして冷や飯。これでなくっちゃ始まらない。
冷蔵庫の中味は─卵・人参・玉ねぎと万能ネギ、チャーシューはなかったから代わりにハムでいいか・・・
腕まくりをして、いざっっ!!!!
・
:09/12/12 21:38 :F01B :ql9Mw/7E
#127 [ひとり]
───
────
「うんめぇー!!」
一口ほうばった三田さんは声を上げる。胡座をかいた足をギュッと身体につける様に縮める様。また可愛いなんて思ってしまう。
今日、ノジコさんと話してから。俺は自分の気持ちに整理がついた気がする。整理っつーか、逃げない覚悟、っつーのかな。
・
:09/12/12 21:46 :F01B :ql9Mw/7E
#128 [ひとり]
男の三田さんに、特別な感情を持ってる自分を受け入れるのにもかなりの決心がいったけど、
そっから自分の気持ちを相手に隠さない決意をするのは、更に勇気がいるもんなんだな。
でももう、決めたから。
三田さんにしたら迷惑極まりない決心かもしれないが、一度ビシッと振ってもらわなきゃ俺だってにっちもさっちも行かないんだ。
・
:09/12/12 22:01 :F01B :ql9Mw/7E
#129 [ひとり]
「─ぎし──根岸!!!!」
名前を呼ばれていたらしい。
「はい、なんすか?」
「食えよ、冷めるべ」
「あぁ、うん」
それから暫くはテレビを見ながら無言でチャーハンを食べた。我ながら、上出来。
・
:09/12/12 22:03 :F01B :ql9Mw/7E
#130 [ひとり]
「あ〜酒飲みてぇな〜」
画面を見つめたまま、唐突に三田さんが呟いた。
「いやいや、送ってくれるんでしょ」
「ん〜そうなんだけどさ、美味いもん食ったら酒飲みたいべ?」
「そりゃそうだけど・・」
・
:09/12/12 22:40 :F01B :ql9Mw/7E
#131 [明希゚J゚=アキ]
|ω・`)来ちゃった←
僕、ひとり殿のファンに
なっちゃったみたいです!
あいらぶゆー(う3・`)です!←キモ
:09/12/12 22:44 :W65T :W3gCfKok
#132 [ちずる]
感想板作ったらどうですか(´・ω・`)?
コメがたくさんあって読みいくいです・・・
私もこの小説大好きなんで頑張ってください
:09/12/13 00:29 :SH905i :4PLFFtIA
#133 [ひとり]
:09/12/13 05:05 :F01B :Zg3JWHQc
#134 [ひとり]
:09/12/13 05:10 :F01B :Zg3JWHQc
#135 [ひとり]
>>130【つづき】
「したらもうさ、いくね?」
「はい?何がすか」
「いや、送るとかさ、いくねぇかって話し」
「いや待って下さいよ」
「泊まればいいじゃん、うち」
皿の上、半分くらい食べたチャーハンの山をスプーンで更に切り崩しながら三田さんは言った
・
:09/12/13 05:18 :F01B :Zg3JWHQc
#136 [ひとり]
「俺達もう、お泊まりした仲じゃん」
冗談で言われてるとわかるので
「おっさんが"じゃん"とか、禁止コードすれすれだな」
冗談で返した。
内心は、赤面症じゃなくてよかった。なんて、三田さんの無責任発言にドキドキしている。
・
:09/12/13 05:23 :F01B :Zg3JWHQc
#137 [ひとり]
「一々傷付くなお前の発言は!!」
オーバーに傷つきました顔の三田さんは、言いながらもチャーハンを食べる手を止めない。
「飯粒とんでるし、食うか喋るか、どっちかにして下さい」
いやしんぼな姿に、俺は笑った。
・
:09/12/13 05:30 :F01B :Zg3JWHQc
#138 [ひとり]
それから俺達は、酒をあけた。発泡酒やら、ビールやら、芋焼酎。ワインの栓を開ける頃には、二人ともかなり出来上がっていた。
頭にモヤがかかったような、身体が床から数ミリ浮いてるかのような、浮遊感。気分がいい。
俺達はいろんな話をした。
・
:09/12/13 05:35 :F01B :Zg3JWHQc
#139 [ひとり]
それは高校の修学旅行で夜の薄野(ススキノ)に繰り出して入った店で担任と鉢合わせた話しだったり、小学生の時カンチョウが流行ってやりまくってたら関節が外れた話しだったり、下らない、愉快な話しばかりだった。
気分がいい、本当に。
「つーかお前も話せや、さっきから俺ばっかじゃん」
・
:09/12/13 19:41 :F01B :Zg3JWHQc
#140 [ひとり]
今し方、ひったくりに間違われて70過ぎのばぁさんに町内一周追いかけ回された時の話しを終えた三田さんが言う。
「いや、俺そうゆう面白赤っ恥体験とかないんすよね」
「赤っ恥言うな!!」
「俺はいつでも全力投球なんだよ!!」と言ったあと、思い付いた素振りでニヤッと笑った。
「じゃーさ、根岸は代わりに初恋の話しにしとこう」
「しとこうって、勝手に決めないで下さいよ」
・
:09/12/13 19:41 :F01B :Zg3JWHQc
#141 [ひとり]
「いや決めたから、うん」
「"いや"とか言われてもこっちが"いや"だから」
「いいだろ減るもんじゃなしー聞いてみたいんだよ根岸のそうゆうの」
「・・・・・・三田さん、俺の事知りたいの?」
聞くと直球で返事が返ってくる。
「知りたいさー、お前私生活とか謎過ぎるもんよ」
酔った三田さんは素面の時以上に自由で、素面では考えられない程素直だ。
・
:09/12/13 19:42 :F01B :Zg3JWHQc
#142 [ひとり]
恋バナなんてと思ったが、これはチャンスかもしれない。
「いいけど、今好きな人の話しでもいいすか?」
「ウソ!?!?なんだよお前いるんじゃんかそうゆう人〜!!」
「俺の片思いですけどね」
「マヂでか!!??」
顔全体で驚いている、子供みたいな三田さん。
・
:09/12/13 19:43 :F01B :Zg3JWHQc
#143 [ひとり]
「大マヂ」
三田さんの、視線を捉えた。俺は逃げないし、隠さない。
「真剣な表情(カオ)しちゃって〜羨ましいなコノコノ〜」
ただそれがこの人には今一届かないみたいだ。やっぱ、言葉にしなきゃ伝わらない。
俺は話し始めた。どんなにあんたが、好きかってことを。
・
:09/12/13 19:44 :F01B :Zg3JWHQc
#144 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
第六話完結〜ですっひっぱりますわょワタクシ(`∀´)ケケケ
第七話も引き続き三田の家で展開されます。あしからず。むしろ根岸の独白で終わるかも!?
定まってなくてすまません;;中味は開けてからのお楽しみって事でご勘弁下さい。
・
:09/12/13 19:49 :F01B :Zg3JWHQc
#145 [ひとり]
【第七話/たこわさはテッパン】
その人は俺より少し年が上で、背は俺の少し下。
好きな事には必死こくくせに、興味ないことはにべもなく捨て置くタイプ。
・
:09/12/13 20:14 :F01B :Zg3JWHQc
#146 [ひとり]
その人は自由でいつも元気がよくてよすぎてもう五月蠅いってジャッジに片足突っ込んでて。
勝手きままに見えて実は気い遣いなのにそれがわかりづらいちょっと損な人で。
・
:09/12/13 20:15 :F01B :Zg3JWHQc
#147 [ひとり]
強がりの意地っ張りですぐつっかかってくるけど寝顔はガキみたいに幼くて。
酒が好きで飲むとすげぇ素直になって可愛い。
・
:09/12/13 20:17 :F01B :Zg3JWHQc
#148 [ひとり]
芯の一本通った感じの考えや言動がまたギャップでたまにドキッとさせられて。
とにかく俺にないものを山ほど持っていて、いつも俺を惹きつける人。
そんな人。
・
:09/12/13 20:21 :F01B :Zg3JWHQc
#149 [ひとり]
「そんな人です」
ぐだぐだとまとまりなく思った事、思い付いた順に口にした。
ふざけた合いの手の一つも入れられるかと思ったら、予想外に真剣な顔で俺の話に耳を傾けている。
「で、片思いしてます。以上」
言い切ってしまうと肩の辺りがフッと軽くなった気がした。
・
:09/12/13 20:26 :F01B :Zg3JWHQc
#150 [ひとり]
三田さんは前のめりだった上体を後ろに傾け、両手で支えた。足も、フローリングに投げ出されている。
「そっかー・・根岸も恋しちゃってんのかー」
言って俯いた。その口元が、笑っているのが見える。俺は思い切って聞いてみた。
「その人に、心当たりとかないすか?」
・
:09/12/13 20:31 :F01B :Zg3JWHQc
#151 [ひとり]
まぁ、答えは想像してたんだけど
「え〜・・・俺の知ってるヤツ?」
やっぱそうきたか。
「めっちゃ知ってますよ」
「マヂでか!!?え、もしやノジコ!!??」
「違います」
「え〜ぢゃあぁぁぁ・・・あ!!!うちの常連の真由美ちゃんだっっ!!!!」
「違いますって」
・
:09/12/14 23:43 :F01B :KQGVxB5U
#152 [ひとり]
この人は考えもしないんだ。自分がそういう対象に観られてるなんて、万に一つも。そりゃそうか。三田さんは男で、俺も男なんだから。
仕方ない事だ。仕方ない事だ・・・・
言い聞かせるしかできない。でも、言い聞かせたってその側から不満が沸き上がってきてしまう。押さえられない、理不尽な感情が、後から後から。きりがなくてつい自嘲気味な笑いが零れた。
・
:09/12/15 00:38 :F01B :1/AKyjc2
#153 [ひとり]
「笑ってないで教えろよけちんぼ〜」
酔った三田さんは語尾を伸ばす癖が目立つ。
呑気そうなその調子にさえも、また理不尽な憤り。何でわかってくんねーんだろこの鈍チンは。
「あんただよ」
・
:09/12/15 00:43 :F01B :1/AKyjc2
#154 [ひとり]
「は?」
三田さんの表情が一瞬で素に戻った。お生憎様。今更んな顔したって遅いっす。
「だから、あんたなんだってば」
俺が惚れてるのは。
・
:09/12/15 00:48 :F01B :1/AKyjc2
#155 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
第七話はこれにて完結ですん。ついに言っちゃいました根岸!!!!
でも好きっては言わないんだね。惚れてるって言うんだね。照れ屋さんな根岸です。これからもよろしく←何
・
:09/12/15 00:54 :F01B :1/AKyjc2
#156 [ひとり]
【第八話/しめさば!!!!】
俺の聞いて「しまった」って表情(カオ)を見て、言って「しまった」って表情(カオ)になったアイツは、気まずくなってそのまま帰りだすのかと思いきや、
「あ、風呂かりますね」
風呂を借りると言い出した。それから歯ブラシねぇしと文句たれやがるから自分用の替えの歯ブラシを卸してやり、スクラブ洗顔は嫌だとゆうからそこは流石にねぇもんはしょーがねぇだろと一蹴して、
気付けば
「じゃ、おやすみなさい」
丁寧に挨拶して布団を被った根岸。
・
:09/12/16 12:30 :F01B :8bhMJjwU
#157 [ひとり]
「泊まんのかよ!!!!!」
とは流石に突っ込めない俺は、一セットしかない自分ちの布団を恨んだ。「お客様用」の備えをしておかなかった自分を恨んだ。
ほいで、すっぽり布団に収まった根岸の横に正座して、どうしたもんかと悩んでいた。
・
:09/12/16 12:31 :F01B :8bhMJjwU
#158 [ひとり]
実際今は十二月だし、マヂ寒みぃし。普段の俺なら布団よこせぐらいの事は言っていたと思う。ついでに無理やりもぐりこむぐらいしたと思う。
でも今それをやるにはあまりにも
「リスク高けってマヂ」
すっかり酔いも覚めたし、心臓バクついて当分寝れそうにないから、根岸が寝付いたら横からそっと潜り込もうか。
いや布団なしで寝るのだけはごめんだかんね。俺の風邪に対する免疫の弱さなめんなよ?生後1ヶ月の赤ん坊くらいの弱さと思ってくれたらいいから、うん。
・
:09/12/16 12:33 :F01B :8bhMJjwU
#159 [ひとり]
とかぐだぐだ考えていたら、こっちに背を向けてた根岸が反転したので、何気なく後頭部に視線を当てていた俺は目が合ってしまった。
「ねぇ」
「な・・んでしょうか」
「寝ないんすか?」
「あ、はい。僕まだ眠たくないんで、お構いなく」
「何で敬語なんだよ」
「え、あ、はい」
「答えになってねぇし」
・
:09/12/16 12:35 :F01B :8bhMJjwU
#160 [ひとり]
「いいからお前は早く寝てくれ!!!!!」
とはやっぱり言えずに、口ごもるしかない。だってしょうがねぇだろ。いきなり後輩の、しかも野郎が告ってきたらおじさんだって動揺ぐらいするさ。つぅか何で告っといてコイツこんなシレッとしてんだよ。
「三田さん、布団冷たい」
「あ?」
何で俺ばっか狼狽えてんだと考えていたら、何を言われたのか聞き逃した。
・
:09/12/16 12:37 :F01B :8bhMJjwU
#161 [ひとり]
「冷たいってば」
不機嫌そうな声と同時に布団から伸びたでかい手。避けるにはあまりに急過ぎて、まんまと掴まれた二の腕。引き寄せられて。
「やめろ酔っ払い!!!」
がなったところで、そこは既に根岸の懐の中だった。
・
:09/12/16 12:39 :F01B :8bhMJjwU
#162 [ひとり]
酒臭い。根岸は顔にでないタイプだけど、実は相当に酔っているらしい。その証拠に逃れようとして手を当てた根岸の胸は早鐘を打っている。普段生意気なその目でさえ、今はやや虚ろに潤んでる。
「温ったかいね」
「タメ口きくんじゃないよお前は」
「・・・・温ったかい」
「話しを聞け」
・
:09/12/16 12:40 :F01B :8bhMJjwU
#163 [ひとり]
つうかコイツ、悪酔いしただけなんじゃね?フッと浮かんだ考え。そうだよ、酔ってるだけだって。じゃなきゃおっさんの俺に告るとか、キチガイな事する訳ないって。なんだよそうかよそうだよマヂビビらせんなよコノヤロー。
納得したら、同時に眠気もやってきたみたいだ。
根岸じゃないけど、確かに温ったかい。ま、ちょっと骨ばった感触はいなめないけど。
・
:09/12/16 12:42 :F01B :8bhMJjwU
#164 [ひとり]
でもこんな風に誰かに守られるようにして寝るのなんていつぶりだろ?まだガキんちょで、お袋と一緒に寝てた時以来じゃね?
彼女がいた時だって、こんな風にされた事はなかったな。ホラ俺、女の前だとカッコつけちゃうし。
・・・・なんか、変な感じ。
「おやすみ、三田さん」
しょうがねぇから、お前の悪酔いにも目ぇ瞑ってやるよ。そんで
「おやすみ根岸」
・
:09/12/16 12:44 :F01B :8bhMJjwU
#165 [ひとり]
【休憩】
こんにちは、ひとりです。
第八話完結です。今回はまた三田目線にしてみましたが、いかがでしたでしょうか?
彼全然理解してませんね。根岸の決死の告白は、どうやら三田の中で「悪酔い」って事になったらしいです。ドンマイ!!!!
・
:09/12/16 12:49 :F01B :8bhMJjwU
#166 [ひとり]
【第九話/こちら熱くなっておりますのでお気をつけ下さい】
朝、目覚めると見慣れない天井があった。背に馴れたスプリングの感触はなく、もっと硬質でダイレクトな当たり。
・
:09/12/18 21:40 :F01B :KCoLFDYA
#167 [ひとり]
そうして、俺のズシッと痺れる左腕の上。頭を預けてこちら向きで眠りの淵についているこの家の主の顔を見つめた。夢をみているらしい。血管の透けた目蓋の下で、目玉が忙しなく動いている。細く長い睫毛たちも、それに合わせて震えてみせた。
今日もバイトだ。早番じゃないしまだもう少しここでこうしていてもいいんだが・・・
・
:09/12/18 21:41 :F01B :KCoLFDYA
#168 [ひとり]
考えた末、やっぱり今すぐ帰る事にする。例えばこのままもう少しここで微睡んだとして、横のこの人が目覚めたとして。俺は言葉が浮かばなかった。「おはようございます」とか「昨日は泊めてもらっちゃってありがとうございました」とか。それから───
想いを告げた事に後悔はない。寧ろ心は晴れ渡って、清々しい。
ただ、一瞬見せた三田さんの素で驚いた顔。それを考えるときっと帰るのが今は得策なのだと思えた。
・
:09/12/18 21:42 :F01B :KCoLFDYA
#169 [ひとり]
三田さんの規則正しい寝息のリズムに合わせて、少しずつ左腕を引き抜く。長いこと下敷きになっていたそれは痺れきって、ダランと垂れて俺のいう事をきかない。
おかげで服を着替えるのに少し戸惑ったがそれも初めだけの事で。血が問題なく巡りだせば、従順になるのはあっという間。
忍び足で三田さんに細心の注意を払いつつ外に出た頃にはさっきの痺れが嘘のように完全に、それは「俺の左腕」になっていた。
三田さんの丸い綺麗なシルエットを支えていた一晩。その感覚が消えてしまってもうここにない事が、酷く悲しいことに感じた。
・
:09/12/18 21:42 :F01B :KCoLFDYA
#170 [ひとり]
───
─────
それから二週間経った。
十二月の一大イベントであるクリスマスもあっさり終わって(イブも本番も、三田さんはメリークソスマス!!とヤケッパチで仕事をしていた。)そこかしこに過剰にくっつけられた電飾や「Xmas」っぽいあれやこれやが姿を消すと、世間はいよいよ年の瀬らしい雰囲気に包まれる。
そして遂に、今年が終わろうとしている今日、俺は思うところがある。
「避けられてる」
「ん?」
外に人の姿はまちまちで、それでも軒を連ねる家々の玄関先につけられた「お飾り」からは確かなお祭りムードが漂っている。
・
:09/12/18 21:43 :F01B :KCoLFDYA
#171 [ひとり]
そこを行く俺の呟きを、横を歩く津久井は聞き逃さなかった。
「誰に避けられちゃってんのよ」
丈の短いミルクティー色のダッフル。そのポケットに両手を突っ込みながら聞いてくるコイツは俺とタメで、今は大学の三回生だ。
「好きな奴」
「あぁ、例のね」
年が同じである事と、津久井が懐っこいオープンな性格である事で、俺達はプライベートでもよく連んだ。
・
:09/12/18 21:44 :F01B :KCoLFDYA
#172 [ひとり]
そして「好きな奴がいて最近告白した」と打ち明けもした。もちろん名前は伏せたし、津久井も特にそこに突っ込んではこなかった。そういう空気のよめるところも、俺が津久井と居る事を好む理由の一つだ。
「焦りなさんなよ」
と軽い調子で肩を叩かれる。焦りなさんなと言われてはいそうですねと一呑みにできる余裕なんて俺にはないんだが、そこは口には出さないでおく。
だって二週間だ。そして今日も何も言ってこないとしたら、俺は年を越してあの人の返事を待つ事になるんだ。挙げ句今日までの二週間、あからさまに避けられている。冗談じゃない。
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:09/12/18 21:46 :F01B :KCoLFDYA
#173 [ひとり]
押し黙る俺に、津久井が気を使ってわざとらしく明るい声で言う。
「まぁまぁまぁ!今日は愛しのあの子の事はちょっと忘れて、ぱーっといこうよ、ね!!!!」
空気が読める男、津久井 真希であっても、流石にそこは読み切れなかいか。
「そうだな、ぱっといこう」
会話の終わりと同時に視界に捉えた長谷部さんち。
満腹堂の皆と、酒と、
愛しのあの子が待っている。
・
:09/12/18 21:46 :F01B :KCoLFDYA
#174 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
第九話完結。津久井をちょっと登場させてみました。根岸と津久井はタメなんです。津久井は本名を津久井真希といいます。女の子みたくな名前ですが、男の子です。よろしくです。
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:09/12/19 00:01 :F01B :x8k3BwQQ
#175 [ひとり]
【第十話/カクテルのネーミングセンスてぶっちゃけどうなん?】
「「おじゃましますー」」
鍵がかかっていない事は百も承知な俺と津久井は、扉脇のチャイムは完全無視で玄関へ踏み込んだ。
長谷部さんちは青い瓦屋根、二階建ての小さな一軒家だ。まぁ言ってしまうと借家なんだけど。買ったものであれ借りたものであれ、やはり一軒家は一軒家。以前家賃は大変じゃないのかと尋ねた事があったが、驚くほどに安かった。まだ長谷部さんちに上がった事がない時分だ。でもその安さの理由はすぐに納得がいった。
・
:09/12/19 20:47 :F01B :x8k3BwQQ
#176 [ひとり]
「出る」のだ。
俺は今まで霊感なんてないと思っていて、実際そんなものなくて。だから知ったからといって何か目撃した訳じゃないんだが、いつも満腹呑みで使う一階の畳部屋(長谷部さんの寝室)の真上の部屋から、人が走り回る音やら、壁を殴る音やらがするのだ。そこは開かずの間になっていて、入り口の引き戸にはベタベタとミミズの這ったような字の書かれた札が貼ってある。
初めそれを知った時は流石に気味が悪かった。長谷部さんにも余計な事とはわかっていても、「家賃が破格だからっていかがなものか」と苦言を提したほどだ。
でもそんな俺に長谷部さんは笑って言ったんだ。
「人間は惰性と順応の生き物だよ」
・
:09/12/19 20:47 :F01B :x8k3BwQQ
#177 [ひとり]
そうして俺はその言葉通りになる。遊びにいく回数が増す毎に、物音がする都度ビクビクとリアクションするのがまず面倒になる。そうなるとリアクションは益々右肩下がりに薄くなり、いつしか音がしない方が逆に「今日アイツどうしちゃったの?」みたいなスタンスにすり替わっていったのだ。
まさに「惰性」と「順応」。それを知ってしまった瞬間こそが、霊体験よりも俺をゾッとさせた。
ちなみに長谷部さんの叔母さんが霊能者でカラーコーディネーターらしく(どんな組み合わせだ)、引っ越した当時調べてもらったらしいのだが、どうやらいるのはリーマンのオッサンの霊らしい。
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:09/12/19 20:48 :F01B :x8k3BwQQ
#178 [ひとり]
オッサンの幽霊と同居してる長谷部さん。その長谷部さんちにいつも溜まる満腹堂の面々。玄関で津久井と順番に靴を脱ぐ間も聞こえてくるハシャいだ声。二階からの物音はそれに混じって微かにしか聞こえない。
──
────
「やってますねー」
津久井はリュックから持参したアルコールを畳の部屋にぶちまけながら言う。
「お前らも来たのかー今年の最後を一緒に過ごす相手他にいないのかよー寂しい奴らめ」
言って俺達をからかう滝さんはすでに出来上がっている。
「その言葉そっくりそのままバットで打ち返します」
「なにおぅ根岸め!!!!じゃー俺はそれを華麗な回転レシーブで打ち返すね!!!!」
「球技だけれども・・・」
・
:09/12/19 20:48 :F01B :x8k3BwQQ
#179 [ひとり]
呆れ半分に笑いながら部屋を見渡して気が付いた。いない。
「弘さん、三田さんは?」
自分から質問しておいてなんだが、こんな時咄嗟に聞く相手が弘さんである事に薄っすらとジェラシー。
「うん、今日くるっつってたんだけどまだ来ないんだわ」
その内ヒョッコリ来るだろよと軽く言った弘さん。
・
:09/12/20 21:00 :F01B :rtGpV4jQ
#180 [ひとり]
「そうですか」
「うん」
その時、時計の針はちょうど夕方の四時を指していて、確かに後から来るんだろうと俺は納得して、宴の輪に加わった。
それから五時になり──六時───七時───八時────
来ない。
・
:09/12/20 22:50 :F01B :rtGpV4jQ
#181 [ひとり]
「アイツ何やってんだ?」
流石に皆が三田さんの不在を気にしだした。
「ちょっと誰か連絡してみたの?」
ノジコさんが言うと
「電話しても出ないんだよ」
と弘さんが答えた。
・
:09/12/20 23:23 :F01B :rtGpV4jQ
#182 [ひとり]
「まったく何やってんだよアイツ」
何時もながら男勝りな口振りのノジコさん。
「あ、酒ねぇ・・・」
今の本題は三田さんの不在であって、まったく関係ない事なんだが、もう数時間前から出来上がっている滝さんは気にする風もなく思ったままを言う。
「ねぇ、酒ないんだけど」
横に座っていた俺の頬をグイグイと人差し指で押してくる。
・
:09/12/20 23:31 :F01B :rtGpV4jQ
#183 [ひとり]
「根岸ー酒たんねぇー」
これは完全な悪酔いだ。今日の年越しという一大イベントに浮き足立って、開放的になりすぎているらしい。
「はいはい、分かりましたから」
俺は滝さんをなだめすかして
「ちょっと酒買ってきます」
と腰を上げた。
・
:09/12/20 23:48 :F01B :rtGpV4jQ
#184 [ひとり]
津久井が「俺も行こうか」と声をかけてくれたが、そこはやんわりと断って、一人寒空の下へ。
東京の空は狭い。
31日のこんな時間までやってる店なんてデカいスーパーかコンビニくらいで、いつも行き着けの倉本(個人経営の酒屋だ)は蟻一匹の侵入たりとも許さないといった感じにシャッターをぴったり下げきっている。
・
:09/12/21 18:39 :F01B :Sipkur5Y
#185 [ひとり]
そうなるとやはり国道を挟んだ向こう側のコンビニまで行くしかない。
俺はマフラーを持ってこなかった事を遅蒔きながら後悔した。
国道沿いにでると思いの外車が走っていて、向こう側へ行くために昇った歩道橋から見下ろしたそれらのテールランプが、時期外れのイルミネーションみたいだった。
もうクリスマスは終わったんだよ。
そのままじっと観察していると、だんだんと行列する虫の目玉みたいにも、血管をながれる赤血球みたいにも見えてきた。
・
:09/12/21 18:46 :F01B :Sipkur5Y
#186 [ひとり]
「なんか、気持ち悪り・・・」
どうやら軽く酔ったようだ。視線を下から上へ。さっき長谷部さんちのそばで見上げた時より、空が近い。
あの人、どこで何やってんだろ──
bbb・・・・bbb・・・・
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:09/12/21 18:51 :F01B :Sipkur5Y
#187 [ひとり]
寒さを凌ぐため上着のポケットに突っ込んでいた右手に携帯のバイブが当たった。
大方滝さん辺りが酒の催促か、ついでにつまみも買ってこいかのメールでもよこしたんだろう。
緩い動作でポケットから携帯を引き抜き折りたたみ式の携帯を開く。ディスプレイ画面にはメールの着信が一件。
・
:09/12/21 19:22 :F01B :Sipkur5Y
#188 [ひとり]
受信ボックスに入った状態で俺は一瞬固まった。
from 三田さん
Re:根岸よ、
─────────
家来て
────end─────
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:09/12/21 19:26 :F01B :Sipkur5Y
#189 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
第十話も完結。クリスマスとかイベント性がもりもりな行事は完全スルーで年越しのお話をお送りしました。そして次話に続きます。
ちょっと補足しますと、滝と長谷部は、弘や三田と同高です。して弘、滝、長谷部はタメです。三田だけが学年違います。え、どうでもいい?んなこと言わないで下さいな〜´∀`誰
・
:09/12/21 19:32 :F01B :Sipkur5Y
#190 [ひとり]
【第十一話/お前片手でジョッキいくつ持てる?】
駆け足で向かった。三田さんちのドアの前に立って、チャイムを押そうとしている。
メールを見て何事かと電話をかけたが、三田さんは出なかった。そんな事されたら、行かない訳にいかないじゃないか。
・
:09/12/21 20:42 :F01B :Sipkur5Y
#191 [ひとり]
ピンポーン
間の抜けた音が廊下に恥ずかしく反響した。
「・・・・・・・・・」
出ない。
もう一度、
ピンポーン
・
:09/12/21 20:48 :F01B :Sipkur5Y
#192 [ひとり]
「・・・・・・・・・・・・」
やはり反応がない。
連打してみようか、
ピンポーン・・・・ピンポーン・・・・ピポピポピポピポン
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ここまで無視だとこっちも意地になってくるな。
・
:09/12/21 20:54 :F01B :Sipkur5Y
#193 [ひとり]
そうして再びどっかのケンシロウのごとく連打を繰り出そうと指を構えたところで、ノブが内側から回されるのが見えた。
外開きのドアにぶつからないように一歩身を引いて待つと、中から小さく背中を丸めた三田さんが現れた。
グレーのスウェット上下の上にパーカーとチェックのチャンチャンコというしゃれた出で立ち。
・
:09/12/21 21:01 :F01B :Sipkur5Y
#194 [ひとり]
「ちゃ、チャンチャンコ・・・」
「よう、根岸」
「なんなんすか、いきなり家来いって」
「まぁ、上がれ」
三田さんは俺の返事を待たずに中に引っ込もうとする。
「ちょ、何なんすか」
・
:09/12/21 21:31 :F01B :Sipkur5Y
#195 [ひとり]
再度繰り返した俺の問い掛けに、緩慢な動作でこちらへ振り返った三田さん。
「いいから、取り敢えず中入れって、寒みぃ」
よく見たら、小刻みに震えていた。
「わかりました」
唇も、なんかガサガサして青っぽい。
・
:09/12/23 09:05 :F01B :SdPnyTWc
#196 [ひとり]
リビングに通されると、そこは暖房の効き過ぎたティッシュ王国だった。
「・・・・思春期なんすか」
「違うわアホタレ」
散乱するティッシュティッシュティッシュ・・・
確定だ。
「じゃあ、風邪なんすか」
「そうだアホタレ」
「合ってても間違っててもアホタレなんですね」
・
:09/12/23 09:06 :F01B :SdPnyTWc
#197 [ひとり]
不満そうな口振りを装ってみても、内心では久々に口を利いて貰えた事を素直に喜んでいる俺がいる。なんて健気なんだろう。おしんにも勝る健気さじゃないかと思う。
「熱は?」
「熱なんて計ってもあ〜俺こんなに熱ある〜って余計凹むだけだから計らない」
ガラガラな声して
「何屁理屈こねてんですか、ちゃんと計って下さい」
・
:09/12/23 09:06 :F01B :SdPnyTWc
#198 [ひとり]
「引き出しの二番目」
「・・・・・はいはい」
「体温計取ってこい」って事らしい。自分は肩まですっぽり布団にくるまって、ティッシュ王国開拓のため未開封のティッシュ箱を新たに引き寄せた。
「引き出しってこっち?」
「うん」
二つ並びで置かれた高さの違う渋い茶の棚。その低いほうの二番目の引き出しを漁りながら、背で三田さんが豪快に鼻をかむ音を聞く。
・
:09/12/23 09:07 :F01B :SdPnyTWc
#199 [ひとり]
「あった」
目当てのものを手に布団の脇にしゃがみ、三田さんの前に差し出した。
「根岸〜鼻かみすぎで切れたしコレ」
俺の差し出した体温計より、今鼻をかんだことで切れた鼻の下が気になるらしい。
「いいからまず計ってみて下さい」
「痛てんだよ地味にー」
「赤チン塗っときな、赤チン塗れば何でも治してくれるから」
「何お前その保健室のババァ的発想」
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:09/12/23 09:13 :F01B :SdPnyTWc
#200 [ひとり]
「俺の学校の保険医は若いお姉さんでしたよ」
「やめてその"へ〜お前の学校の保険医オバチャンだったんだ〜"顔、マヂムカつくから」
「白衣の下のボディーラインがまさにサンクチュアリっつーかなんつーか・・・・何?」
気が付くと、三田さんが何とも言えない顔でこちらを見ていた。
・
:09/12/23 20:28 :F01B :SdPnyTWc
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