無題【BL】
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#98 [我輩は人間である]

父親が冗談や嘘を吐く性格ではないし自分も勉強が得意ではない、寧ろ不得意だと自覚していた千鶴は目の前の男が言っている事が本当か嘘かすぐにわかった。




とにかく―――――




「そんな事言うなよ水野〜。前はすぐに開けてくれたじゃないか」
「てめえが誰だかわからなかったからだろーが!」
「まずはあがらせてくれよ。な?」

⏰:10/04/13 21:55 📱:S001 🆔:☆☆☆


#99 [我輩は人間である]

ドアに付いてある丸い覗き穴に目を近付けてみると、スーツ姿に革のカバンを持っている大政が見えた。
これじゃあどっかのサラリーマンみたいだ。

「気持ち悪ぃんだよ。何がよっ、だよ。なんで来たことわかんだよ」
「いやだってお前玄関まで来るとき足音半端ないぞ」

ドアの向こう側のリーマン風家庭教師は少し肩を揺らしながら笑っている。その姿に千鶴はカッとなってドアを勢い良く開けて胸ぐらに掴みかかった。

⏰:10/04/14 00:10 📱:S001 🆔:☆☆☆


#100 [我輩は人間である]

「ってめえ!さっきからイラつくんだよっ!お前が毎日毎日しつこく来るからだろ、あ゛?」
「ほらほら落ち着けって。んじゃ、始めるか」
「……………」

残念ながら身長差で負けている千鶴は胸ぐらを掴んでも、上にあげることはできない。
イコール、余程大政にダメージがないのだ。

大政は先ほどと変わらない柔らかな表情で千鶴に話しかけた。
掴まれたネクタイを手から解放させ、中に入って行く。

⏰:10/04/14 00:25 📱:S001 🆔:☆☆☆


#101 [我輩は人間である]

「………おいっ、勝手にあがんな!」

千鶴は少しポカンとした顔をしていたが、我に返って急いで大政の後を追った。

何故だか千鶴の叩きかけるような口調も今にも飛びかかってきそうな態度も、大政には全く効かない。

それどころか見事にかわされて千鶴はもう一つ頭に怒りのマークを浮かべた。


高校生の一人暮らしにしては少々広い2LDKの室内を見回しながら大政は声をあげた。
先ほどからちょこまかと中を見られて千鶴はその度飛びかかるが何も通じない。
天然なのかなんなのか。子供を相手にするかように接されてもう居てもたってもいられない気分だ。

⏰:10/04/14 00:32 📱:S001 🆔:☆☆☆


#102 [我輩は人間である]

「おーし…まずは、…何する?」

ソファに座りローテーブルに数学やら生物やら色々な教材を一通り積んで大政は顔を上げた。
千鶴の取ってわかる表情に何がなんだかわからない様子で、今度は何を勘違いしたのかあっと声を上げてカバンから英語の教材を出して見せてきたと思えば

「忘れてたこれやりたかったのな」

なんて。
頭がクラクラする。

「…………出てけ」
「………」
「……さっさと出てけ!!」

⏰:10/04/14 00:42 📱:S001 🆔:☆☆☆


#103 [我輩は人間である]

一層声を上げて怒鳴った。これでやっと帰るだろう。
千鶴はフーッフーッと息をあらげながら大政を見た。呆気に取られた顔で自分を見ていたが、それはみるみる困った表情に変わっていった。

「んな事言われてもなぁ…。俺は水野に勉強教えるために来たわけだし、お前が嫌でも俺だって仕事だし」

ポリポリとうなじの方に手を回して申し訳なさそうに千鶴を見る。

一体どこまでイラつかせるんだ、この男。
来るなと言ったのに来る。
帰れと言ったのにこの前なんか二時間位ドアの前で待っているし。そのお陰で周りからは更に変な目で見られる始末だ。
更に無理矢理あがり込んだ挙げ句、勝手に人の部屋を母親みたいにチェックし始めた。

⏰:10/04/14 01:24 📱:S001 🆔:☆☆☆


#104 [我輩は人間である]

そして今のこれ。
悪いが俺はこの上限りなく怒り狂ってるんだよ。そう言おうとしたが大政の表情にもうそれを言う気にもなれない。

なんで父親は家庭教師なんて雇ったんだろう。
そもそも自分に寄越しても意味がないとは思わなかったのだろうか?


茶髪にピアス。
それだけで周りの人間は千鶴を悪く見た。
千鶴の性格も合わせて完全に普通から外れた枠に入っていたし、高校に入った時もその視線は変わらなかった。
自分を見る目はみんな冷たくて居たたまれない気持ちになる。

中学から踏み外した道はもう引き返せなかった。後悔した時期だって何回もあったが、今はもうこれでいいのだ。

⏰:10/04/14 01:36 📱:S001 🆔:☆☆☆


#105 [我輩は人間である]

そのままがむしゃらに突っ走ってきた道のりは、そう悪くもなく良くもなくで、何回も警察にお世話になった。

それでも同じ境遇にいた人たちとつるんで、それだけが千鶴の居場所だったのだ。

しかし、それもあっけなく崩れた。

ただ金持ちというだけで僻まれて、金づるなんじゃないかと自分を追い込むようになってから、千鶴はたった一つの居場所にも居れなくなった。


千鶴は孤独だった。

⏰:10/04/14 01:43 📱:S001 🆔:☆☆☆


#106 [我輩は人間である]



実は家庭教師が家を訪ねてきたのは今回だけではない。
二人来て二人共千鶴を知るなりリタイアしていっている事を経験しているからこそ、大政もすぐに引き下がってくると思ったのだ。

つられるのは結局金に目が眩んだからで、他に理由はない。
俺じゃなくみんながみんな金なんだ。


大政は立ち上がった。
「そうだな…」

ゆっくり千鶴に近付いて、威嚇した猫のようにゴロゴロと鳴きそうな顔に思わず苦笑する。

⏰:10/04/15 02:04 📱:S001 🆔:☆☆☆


#107 [我輩は人間である]

「50点」
「…は?」
「来月の中間で一個でも50点取れたら辞める」
「…は?」

二週間位しかない期間の中で……?
バカじゃないのか。

千鶴は数秒固まってから吹き出して笑いながら手をヒラヒラと顔の前で振る。
冷蔵庫からコーラを出してキャップを捻りながらもまだ笑う千鶴に大政はム、と眉を寄せた。

「言っとくけど俺バカだから。50点なんて中学の期末……、期末。中二の期末の国語以来だからな?59」

⏰:10/04/15 02:38 📱:S001 🆔:☆☆☆


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