浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#242 []
 
寝てしまおう。
今日はもう寝てしまおう。
だけど‥朝が来るのが怖い

「もう、お休みですかい?」

「‥」

背を向けて布団をかぶると
"おや、おや"と
溜め息混じりに聞こえた

布団が冷たい

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#243 []



結局なかなか寝付けなくて
寝てはすぐ目が覚めて‥
それの繰り返し

だけど着実に
夜は明けていって
ついに壱助さんが動き出した


襖の奥から聞こえるしゃがれ声
"迎え"にきたんだ‥

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#244 []
 
あたしは息を潜めて
ぎゅっと小さくなった
体が小刻みに震えてるのが分かる


このまま目を開けなければ
見逃してくれたりしないかな
今から窓の外に逃げ出そうか

そんなことばかりが
頭の中を駆け巡る
脳に冷や汗をかいた

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#245 []
 
するとまもなくして
襖が開く音がした


「香夜さん‥」


小さく呼びかけた声
そんな声で呼んだって
あたしの気持ちは和らがないよ

⏰:10/01/31 19:16 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#246 []
 
「香夜さん‥朝です、よ」

貴方って人は
本当にいつもその調子
声に全く感情が漏れない

だから時々
その声があたしを突き刺すの


ねぇ‥壱助さん
貴方にとってあたしは‥

⏰:10/01/31 19:17 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#247 []
 



「いったあぁああぁあい!!!」



縮こまった体が飛び起きる
腹部に走る激痛

⏰:10/01/31 19:17 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#248 []
 
「狸寝入りなど無駄、ですよ」

お腹を抱えて縮こまるあたしに
壱助さんはそう吐き捨てた



思わずむせ返るほど
どうやら強く蹴られたらしい

⏰:10/01/31 19:18 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#249 []
 
「最後くらい‥最後くらい
優しくしてくださいよ!!!」

顔を上げて泣きわめく
しかし目の前には壱助さんだけ
あのお婆さんはいない


しかも何か綺麗な色の
布を抱えている

⏰:10/01/31 19:18 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#250 []
 
「最後‥なら、ね」

珍しく人らしい困った顔で
クスッと含み笑い

「‥?」


「最後なら、優しくします、よ
しかし‥

誰が最後と‥言いました?」

⏰:10/01/31 19:19 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#251 []
 
その瞬間目の前が
山吹の鮮やかな色に染まった


「‥着物‥きれい」


息をのむほど綺麗な色の生地に
赤い花の刺繍がされていた

⏰:10/01/31 19:19 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


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