浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#520 [笹]
ガサッ
一気に目の前が暗くなった
‥お茶の匂い
間違いなく
今あたしに被さってるのは
さっきまで壱助さんが手にしてた
お茶の葉の空袋
そっか‥
じゃあ今日はお茶お預けかぁ
:10/02/09 18:59 :D905i :rBP2/YbM
#521 [笹]
「‥ごめんなさい」
自分の声が袋中を駆け巡り
また耳の奥へ帰る
きっとお茶は
壱助さんの命の次に大切なもの
そう考えたら
何だか急に申し訳なくなった
:10/02/09 18:59 :D905i :rBP2/YbM
#522 [笹]
グシャッ
耳を突き刺すような音と共に
朝と同じ激痛が顔面に走る
「ったぁあいぃ!!」
何でこうも壱助さんは
顔面攻撃が好きなんだろうか‥
ただでさえ不細工なのに‥もう
:10/02/09 19:00 :D905i :rBP2/YbM
#523 [笹]
息つく暇もなく
壱助さんはやりたい放題
「うわっまぶしっ!!」
一気に袋を取り去られ
急にさす光の眩しさに
目の前が眩んだ
じーっとこちらを見つめる
美しい視線とぶつかった
:10/02/09 19:00 :D905i :rBP2/YbM
#524 [笹]
まばたきもしないで
ただじっと‥
熱のせいか頭が働かない
いつもなら
考えなくとも口が勝手に
喋り出すのになぁ
:10/02/09 19:01 :D905i :rBP2/YbM
#525 [笹]
:
:
「どんな‥夢を?」
先に口を開いたのは
壱助さんの方だった
ひんやりした雪のような手が
額にそっと触れた
‥心地いい
:10/02/09 19:01 :D905i :rBP2/YbM
#526 [笹]
「昨日の‥少年の」
蚊の鳴くような声で答えると
"そうです、か"と
何かを考え込んでる顔で言った
壱助さんの手は
まるで魔法の手みたいで
熱を吸い取っていくような
‥そんな気がした
:10/02/09 19:02 :D905i :rBP2/YbM
#527 [笹]
それから
何を言うでもなく‥
壱助さんは優しく
あたしの額辺りを撫でて
また空を眺めてた
「壱助さん‥空好きですよね」
大した答えなど
期待してなかった
「‥何か見えるんですか?」
返事のない横顔に続けて問った
:10/02/09 19:02 :D905i :rBP2/YbM
#528 [笹]
「‥いえ、何も」
「どうしてそんなに
眺めてるんですか?いつも
何か考え事でも?」
するとぴたりと手が止まった
:10/02/09 19:03 :D905i :rBP2/YbM
#529 [笹]
「何も‥考えたくないから
こうして居るんです、よ」
気のせいだろうか
いつもより少しだけ
横顔が寂しそうに見えた
‥見ていられなかった
今日のあたしはどうかしてる
:10/02/09 19:03 :D905i :rBP2/YbM
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