浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#532 [笹]
ぎゅうっと綺麗な背中を
壊れそうなくらい
強く抱きしめると
壱助さんは力なく応えた
「‥泣いてるんで?」
わからない
わからないけど
‥涙が止まらなかった
:10/02/09 19:05 :D905i :rBP2/YbM
#533 [笹]
「壱助さ‥ん
何処にも‥行かないで」
情けなく弱々しい声を
涙と一緒に落とした
何故そんなことを言ったのか
‥わからない
だけど急に不安になった
独りにされてしまいそうで
壱助さんはこんなあたしに
‥疲れているんじゃないかって
:10/02/09 19:05 :D905i :rBP2/YbM
#534 [笹]
「約束、したでしょう
独りにしない‥と」
包み込むように
ぎこちなくあたしを撫でた手に
一瞬にして不安が吸い取られた
:10/02/09 19:06 :D905i :rBP2/YbM
#535 [笹]
あたしの、居場所は
―‥貴方の隣。
_
:10/02/09 19:07 :D905i :rBP2/YbM
#536 [笹]
:10/02/09 19:10 :D905i :rBP2/YbM
#537 [笹]
まだまだ子供な"飼い猫"が
ぼうっと空ばかり眺めて
雪を待ちわびているもんで‥
"色は思案の外"と
良く言われます故‥
―‥自分でも、
良くわかりゃしないのですが、ね
:10/02/10 16:47 :D905i :yQPzNAIc
#538 [笹]
:
:
雲が低い
空一面を灰色に染める
「‥雪ですか、ね」
冷えた空気が息を白く染めた
:10/02/10 16:48 :D905i :yQPzNAIc
#539 [笹]
:
:
「お帰りなさいっ」
窓から乗り出すような勢いで
雪が降るのを待ちわびていると
壱助さんが帰ってきた
「今日、雪降りますかねぇ?」
別に雪は珍しくない
だけど真っ白に染められた街に
なんだかとてもわくわくして
何時になっても
目を輝かせてしまうのだ
:10/02/10 16:48 :D905i :yQPzNAIc
#540 [笹]
「‥さぁ、ね」
後ろで聞こえた素っ気ない声に
着物と肌がすれる音が続く
「‥んう」
また黙って着替えて‥
着替えるときは声かけてって
あれだけ言ってるのに
気付かぬふりをして
じっと空とにらめっこ
:10/02/10 16:49 :D905i :yQPzNAIc
#541 [笹]
―‥だけど沈黙となれば
どこかむず痒い
「外、寒かったですか?」
「そりゃあ‥ねぇ」
今度は畳と着物がすれる音
どうやら着替え終わったらしい
:10/02/10 16:50 :D905i :yQPzNAIc
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