浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#834 []
 
「な‥そんなことないっ!!」


顔を真っ赤にして
否定した先には二つの背中

寄り添う娘さん
壱助さんの下駄の音が
遠く遠く‥消えてった


上手く行かない‥
今日は厄日なのかもしれない

⏰:10/03/11 13:36 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#835 []




ちょいと、
意地が悪すぎた‥か


ぼうっと空を見上げれば
灰色に染まり光が遮られ

隣に座る娘
慣れないような化粧に
顔を白々とさせ
不釣り合いな紅が一層‥

⏰:10/03/11 13:36 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#836 []
 
「壱助さん?」

貴女以外の娘に
名前を呼ばれるのは
あまり慣れていないもんで

‥居心地が悪い、


「何、か」

目配せすれば
いつの間にか縮まった距離

⏰:10/03/11 13:37 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#837 []
 
欲しいものなど‥
ないんですが、ね


「"あの子"のこと‥
慕っていらっしゃるの?」

さぁ‥
今まで出逢った方々と

違いますからね、香夜さんは

⏰:10/03/11 13:37 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#838 []
 
「さぁ、ね」

「それなら‥」


随分と積極的だ‥

華奢な手が此方の手を捕らえ
自らの胸元に添えた

「おや、おや」

「私を‥見て頂けます?」

⏰:10/03/11 13:38 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#839 []
 
そのようにされても
何も‥

私の心は何処へやら
つまらぬ話です、よ


「そうです、ね
今夜は‥そうしましょう、か」

_

⏰:10/03/11 13:38 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#840 []
 
空になった体が
娘の小さな体に覆い被さる

嬉しそうにそして恥じらい
睫を伏せて身を任せ
素直に倒れた朱色の着物


「ずっと‥夢でしたの」

この笑みは
私に向けられたものなのか

⏰:10/03/11 13:39 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#841 []
 
はたまた‥
香夜さん、
貴女に勝ったという
嫌らしいもの‥なのか

何だか‥わかりゃしない

仕込んできたかと言うくらい
緩く結ばれた帯を
するりと解く
手慣れた自らの指に

この上ない嫌悪感を抱いた

⏰:10/03/11 13:40 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#842 []
 

欲しいものなど
‥ないんですが、ね


触れた肌、濡れた吐息

何を頼りにすれば‥良いのか


強請る声、汚れた水音

貴女の透明感が身に沁みる

⏰:10/03/11 13:40 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#843 []


今宵は満月

隣で寝息を立てる娘に
伸ばした腕をするりと抜き

そのまま布団を抜け出した


雑に浴衣を羽織り
力強く帯を締める

体に染み着いたような香りを
かき消すかのように
背中を夜風に当てた

⏰:10/03/11 13:41 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


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