記憶を売る本屋さん
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#311 [我輩は匿名である]
「頭は打撲で、何針か縫ったらしい。
このギプスは…鎖骨骨折って言われたかな。
肋骨も1本ヒビ入ってるらしいし、足もひねってる」
薫は開き直り、まるで自慢のように言う。
他にも、右の頬を覆うように湿布が貼られていたり、右手の指にまとめて包帯が巻かれている。
響子はそれを、じっと見つめる。
彼女の表情を見て、薫は小さくため息をつく。
「…全部思い出したのか、お前の事も、…俺の事も」
響子は黙って頷く。
:10/04/05 21:52
:N08A3
:W6VDeUwI
#312 [我輩は匿名である]
薫はいつものように「そうか」と返事をする。
「…あなたが、死ぬところまで知ってる」
声を震わせて、響子は言った。
「…だからか」
薫は何かを納得したように返事をする。
「…嫌いになるわけないじゃない」
涙ぐみながら、響子は言う。
:10/04/05 21:53
:N08A3
:W6VDeUwI
#313 [我輩は匿名である]
「私は、死ぬまでずっと、優也の事大好きだったよ。
…死んだ後も、今も、死ぬ前と同じぐらい大好きだよ。
なのに…何で『俺の事嫌いになったかもしれない』とか言うの?」
言っているうちに、またぼろぼろと涙が出てきた。
前からそうだった。1度泣けば、なかなか泣き止まない。
それを見て、優也はいつも呆れて笑っていた。
そんな事を思い出せば、また余計に涙が止まらなくなる。
:10/04/05 21:53
:N08A3
:W6VDeUwI
#314 [我輩は匿名である]
「それに、私は優也のせいで死んだんじゃないよ。
逆に、私は優也の作る晩ご飯すごく楽しみだったし、買い物中も晩ご飯の事しか考えてなかったし…。
なのに、何で最後の最後まで私に謝って死ぬの?
私が、優也のせいで死んだって思ってると思ってた?」
「…キョウコ」
「『何もしてやれなかった』って、何でそんな事ばっかり言うの?
私は優也と一緒にいて、それだけで良かった。
横にいてくれるだけで良かったの…!
なのに、そんなに謝らないでよバカ…!」
:10/04/05 21:54
:N08A3
:W6VDeUwI
#315 [我輩は匿名である]
響子は、夢の中で感じた想いを全て薫にぶつける。
薫も黙ったまま、泣いている響子を見つめていた。
「…香月、おいで」
しばらくして、薫は右手で手招きした。
カーテンの所に立ちっぱなしだった響子は、そう言われてやっと、ベッドの傍の椅子に腰を下ろす。
それでもまだ泣き止まない響子に薫は呆れたように笑う。
「…本当によく泣くよな、昔から」
そう言った彼の顔は、優也の呆れ笑いそのものだった。
「…だって…」
それを見て、響子も笑みをこぼす。
:10/04/05 21:54
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#316 [我輩は匿名である]
「1回泣くと止まらないんだもん、…昔から」
大きく息を吐きながら、響子は涙を拭く。
もうすでに、右手の袖がかなり濡れている。
「…悪かったよ。でも俺は…お前に謝らないと、どうしても気が済まなかった」
薫は響子から視線を外して言った。
「今日子がそんな事で怒らない性格も、俺を責めないだろうって事も、ちょっとわかってた。
でもどうしても、『俺があんな事言わなければ』って思っちゃってさ…」
薫は小さくため息をつく。
その後、もう1度視線を響子に戻した。
:10/04/05 21:55
:N08A3
:W6VDeUwI
#317 [我輩は匿名である]
「…おかえり、今日子」
薫の声が震えている。
あの日、仕事を早く終わらせて帰ったが、今日子は家にいなかった。
警察から「奥様と思われる方が亡くなった」と連絡が入ったのは、優也が帰ってきた1時間後の事だった。
優也はそれまでずっと、今日子の帰りを待っていたのだ。
響子はその一言に、思わず椅子から立ち上がって薫を強く抱き締めた。
「…うん、…ただいま」
肩や左胸に痛みが走る。が、薫はそんな事はもうどうでも良かった。
:10/04/05 21:55
:N08A3
:W6VDeUwI
#318 [我輩は匿名である]
薫も右手を響子の背中に添える。
やっと、帰ってきてくれた。
薫の目から、一筋の涙が流れ落ちた。
:10/04/05 21:56
:N08A3
:W6VDeUwI
#319 [我輩は匿名である]
:10/04/05 22:05
:D905i
:fxbTxKTM
#320 [ま]
よかったのぅ(;_;)

:10/04/05 23:23
:P04A
:EQ1YcyFU
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