記憶を売る本屋さん
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#361 [我輩は匿名である]
「薫は、そんな事思った時なかった?」

直人が尋ねるが、薫から返事はない。

「…薫?」

「え?あぁ、ごめん、…もう1回言って」

「だぁかぁらぁ、薫はそう思った事なかったか?って」

直人は少し強めの口調で言い直す。

「…俺は…なかったな…。ただ黙って、何も思わないまま、目の前の事を見てるだけだった…」

薫の言い方が、まるで後悔しているように聞こえる。

いつも何でも知っている薫がこれでは、自分が正しいのか正しくないのかわからない。

⏰:10/04/07 11:03 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#362 [我輩は匿名である]
「なぁ、何かあったのかよ?元気ないだろ?お前」

直人は問いただすように尋ねる。

「…お前は…」

薫はそれだけ言って、また黙ってしまった。

「もう!何なんだよ!?言いたい事あるならさっさと言えよ!」

短気な直人は、イライラしたように声を上げる。

「…何かもう、わからなくなってきた」

薫は弱々しく言った。

⏰:10/04/07 11:03 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#363 [我輩は匿名である]
「何が」

「…さっき、キョウコに…香月に言われたんだ。

“私は月城薫が好きだ。でも月城くんが言うキョウコは、どっちのキョウコなのか”

…って」

直人は、最初は意味がわからなかった。

思わず「は?」と聞き返す。

「…香月は…“霜月優也”じゃなくて、“俺”を見てくれてる。

でも俺は…誰を見てるんだろう…。そう思ったら、もうわからなくなってきてさ…」

⏰:10/04/07 11:04 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#364 [我輩は匿名である]
直人には、薫の話がバカらしく聞こえて仕方がなかった。

「…お前って、そんな失礼な奴だっけ?」

直人はストレートに言い返す。

「そりゃお前、“お前より前の女の方が好きです”って言ってるようなもんだろ。

しかもあいつは、前の夫より“お前”が好きだって言ってくれてんだろ?

そりゃあ、香月が怒るのも無理ないだろ」

薫は「響子が怒っている」とまでは言わなかったが、直人はそこまで言い切る。

⏰:10/04/07 11:04 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#365 [我輩は匿名である]
「それに…名前忘れたけど、前の嫁はもう死んだんだぞ?

いつまでもその人ばっか考えてたってしょーがねぇだろ。

その人はその人、香月は香月だろ」

そして、言った自分もハッとする。

「直人…」

「そうだ!やっぱそうだよな!」

直人は自分で納得し、ガッツポーズをする。

「何…」

「わりぃ!自己解決したわ!じゃあな!」

直人は大声で言って、一方的に電話を切った。

⏰:10/04/07 11:05 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#366 [ま]
うっへーい

⏰:10/04/07 16:47 📱:P04A 🆔:tadRV.Mw


#367 [我輩は匿名である]
「あぁ…あれは…」

薫は『どう言えばいいのか』と首をかしげる。

“いつになったら、俺が優也だと気付いてくれるのか”

もしかしたら、自分が名前を呼ぶ事で全て思い出してくれるのではないか…。

そういう思いもあった。


しかしそれよりも、薫は“香月響子=長谷部今日子”としか思っていなかったのだ。

「…私は…“長谷部今日子”じゃなくて、“香月響子”って言ってほしかったな」

響子はぽつりと言った。

薫はきょとんとする。

⏰:10/04/07 18:24 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#368 [我輩は匿名である]
「…どういう意味?」

響子は少し淋しそうに下を向く。

「…だって、私は長谷部今日子じゃないから…」

響子が何を言っているのか、薫はわからなかった。

「…キョウコ…?」

「…月城くんの言う“キョウコ”は、どっちのキョウコなの?」

響子の言葉が、薫の胸に突き刺さる。

⏰:10/04/07 18:25 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#369 [我輩は匿名である]
「確かに、私は長谷部今日子の生まれ変わりだよ?

顔もそっくりだし、同じだと思われても仕方ないと思う。

でも、私は香月響子だよ。長谷部今日子じゃない」

響子はぎゅっと、自分の両手を握り締める。

「私は、優也と月城くんを同じ人だと思わない。

“霜月優也”の記憶を持ってるだけで、あなたは“霜月優也”じゃない。

…私は…私が好きなのは、…“月城薫”だよ」

響子の声が震えている。

薫は何も言えなかった。

⏰:10/04/07 18:25 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#370 [我輩は匿名である]
ベッドの上で携帯電話のバイブが鳴る。

手にとって見てみると、直人から電話がかかってきている。

「…出なよ、って言っても、ここでは電話出来ないけど」

響子はうつむいたまま言う。

「でも…」

「大事な用かもしれないよ。…私は、後でいいから」
響子は少し笑ってみせる。
が、薫の気持ちは電話どころではない。

⏰:10/04/07 18:25 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


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