記憶を売る本屋さん
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#224 [我輩は匿名である]
「私、父も母も死んだので、養護施設で育ったんです。
母が亡くなったのは戦後ですけど」
「養護施設?」
直人も要も、その言葉に目を丸くする。
「俺の友達にも、施設で育った子がいるんです」
「そうなんですか?偶然ですね、なかなかいないのに」
「はい。びっくりしました…」
要も驚いているようだった。
「…学校、楽しいですか?」
要はふと、そんな事を尋ねた。
:10/03/30 19:41
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#225 [我輩は匿名である]
すみません。
>>223の「22年」は「32年」のミスでした

:10/03/31 10:33
:N08A3
:Cnlymdz2
#226 [我輩は匿名である]
「え?えぇ、楽しいですよ。高校も楽しかったけど、私は大学の方が楽しいかな。…どうして?」
「いやぁ…その友達が、学校は楽しくないって言ってたから…」
「…施設で育った負い目で?」
女性に言われて、要は「多分」と答える。
「そんなの、関係ないですよ」
女性は笑う。
「施設で育った子も親の元で育った子も、どっちが良い、なんて事はありません。
私は施設で育った事を友達に言いましたが、今でもその子は友達のままです。
…その子は、自分から壁を作ってるんじゃないかな」
:10/03/31 10:34
:N08A3
:Cnlymdz2
#227 [我輩は匿名である]
「…壁…かぁ…」
女性に言われて、要は繰り返す。
確かに晶の性格なら、あり得なくはない。
「その子に、『思い切って踏み込んでみて』って言っといて下さい。
『受け入れてくれない子は、その程度の子。他にもいい子はたくさんいるから』って」
女性はにっこり笑って、要に伝えた。
要は「はい!」と大きく頷く。
前方に大きな公園が見える。
「あっ、あれですよ。姫崎公園」
:10/03/31 10:35
:N08A3
:Cnlymdz2
#228 [我輩は匿名である]
「え?あっ、着いたー!」
女性は胸に手をあて、大きく息をつく。
公園の前で、2人の女性が、こちらに手を振っている。
「良かった、友達もちゃんと待っててくれたみたい。ありがとう」
「いえ、こちらこそ楽しかったです。また来て下さいね」
要は笑って女性に手を振る。
女性もこちらに手を振って、友達の元へ走っていった。
要もまた、家へと引き返す。
もう一度あの場所に行こうかとも考えたが、
さっきいなかったから今日は来ないだろうと、要はまっすぐ家に帰った。
:10/03/31 10:35
:N08A3
:Cnlymdz2
#229 [我輩は匿名である]
直人は本を閉じる。
あの女性に会って、何だか元気が出た気がする。
「直接晶を会わせてやりたかったなぁ…」
自分が伝えるよりも、あの女性が直接話をした方が、晶も勇気が出たかもしれない。
「(…あの女の人、元気かなぁ…?)」
直人はそんな事を考えながら、ボーッと窓の外の夜空を眺めた。
:10/04/01 17:03
:N08A3
:IMFDvu/M
#230 [我輩は匿名である]
直人は大きなあくびをして机に突っ伏せる。
大好きなゴールデンウィークも終わってしまった。
外は雨が降っており、廊下を見れば、屋上に行けない薫と響子が窓の方をむいて話している。
「…この間ね、プロポーズされたんだ」
響子は薫だけに聞こえるような声で言った。
「霜月優也に?」
「うん。寒かったから、冬だったと思う」
「12月13日」
薫は開いた窓の桟に両肘を置く。
:10/04/01 18:04
:N08A3
:IMFDvu/M
#231 [我輩は匿名である]
「そうなの?…よく知ってるね、相変わらず」
「まぁな」
薫は鼻を高くして笑う。
「3月に結婚式しようって。…私も嬉しくて、すぐにうんって返事して…」
響子は少し頬を赤らめて話す。
薫も笑ってそれを見つめる。
「でね、今日はその、結婚式だったの。
真っ白い、綺麗なドレスを着せてもらって、優也に指輪をはめてもらって…。
…すごく幸せだった」
薫はすぐに気付いた。
:10/04/01 18:04
:N08A3
:IMFDvu/M
#232 [我輩は匿名である]
響子が「優也」と、呼び捨てで呼び始めている事に。
ついこの間まで「あの人」と呼ぶ事が多かった。
「(…話の進度は速くても、キョウコの見る夢はあの本とほぼ同じみたいだな…)」
薫は1人、静かに考えを巡らせていた。
:10/04/01 18:05
:N08A3
:IMFDvu/M
#233 [我輩は匿名である]
「うーん…」
直人は本を手に、ベッドの上で頭を悩ませる。
今日は何事も無かったのだが、やはり晶の、来れなかった理由が気になるらしい。
「(…何かある気がするんだよなぁ…)」
今まで素直に要と接していた晶が、理由も無しに来ないのはおかしい。
それも、自分で言いに来ないとなると尚更だ。
めんどくさがり屋の直人ならともかく、晶はそんな性格でもない。
しかも、嫌いだと言っていた美代に、そんな伝言を託すだろうか?
直人は大きくため息をつく。
:10/04/01 18:05
:N08A3
:IMFDvu/M
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