記憶を売る本屋さん
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#214 [我輩は匿名である]
今日は怜奈は、直人に一言も話し掛けて来なかった。
「お前、昨日何か言ったのか?」
帰り道、直人は薫に聞いた。
「あぁ、『悪いけど諦めてくれ』って釘刺しといた」
「よくやるな」
「付きまとわれると面倒だろ?香月に何かあっても困るしな」
薫は参ったように髪を触る。
「まぁそうだよなぁ」
「あーゆー危なそうなやつは、はっきり言っといた方がいいんだよ」
薫はいつになく、少し苛立っているようだ。
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#215 [我輩は匿名である]
怜奈を良く思っていないのだろう。
「そういえば、昨日たまたま香月がいたから、一緒に帰ってきたんだ」
直人は適当に話を変える。
「へぇ、初めて喋ったんじゃないか?」
「あぁ。なんか、女の子らしい奴だな」
「何だよそれ。…まぁ、男っぽくはないけど」
薫は笑う。
「お前の事、『他の子とは違う』って言ってたぞ。多分、雰囲気が」
「そんな事言ってたのか?」
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#216 [我輩は匿名である]
「騒がないからな、お前」
「騒ぐのはお前だけで十分だろ」
「何だよそれ!」
嘲笑う薫に、直人はギャーギャー騒ぐ。
「(…ふぅん、香月っていうんだ。あの女)」
2人の会話を、曲がり角の陰から怜奈が聞いていた。
しばらく2人の後ろ姿を見た後、冷たい笑顔を浮かべてその場を離れた。
:10/03/30 13:25
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#217 [
]
:10/03/30 14:13
:SO905iCS
:F62lBiEg
#218 [我輩は匿名である]
結局、日曜になるまでまた何も起こらなかった。
5月5日。
約束はなくなったが、要はとりあえず、あの場所に行ってみることにした。
直人もそれが正しいだろうと、黙って景色を見つめる。
もしかしたら、あの場所にいるかもしれない。
要も直人も、少し緊張気味だ。
あと角を2つ曲がってまっすぐ行けば、あの場所に着く。
「あの…」
1つ目の角を曲がる寸前、誰かが要に話し掛けてきた。
:10/03/30 19:38
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#219 [我輩は匿名である]
振り替えると、細身で綺麗な女性が、困った顔で立っている。
「はい?」
「この辺の方ですか?ちょっと道に迷ってしまって…」
マジかよ。直人も困ったように女性を見返す。
「えっと…どこに行きたいんですか?」
「姫崎公園に…」
「あぁ…結構迷っちゃいましたね」
「遠いんですか?」
「歩いて20分ぐらいかかるんです。…説明しにくいしなぁ…」
要は腕を組んで考える。
:10/03/30 19:38
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#220 [我輩は匿名である]
そして、「ちょっとここで待ってて下さいね」と言って走りだした。
晶が来ていないか確認しておく為だ。
しかし、やっぱり晶は来ていなかった。
「…来てないな。じゃあいいか」
要はそう言って、また来た道を戻る。
「すいません、待たせちゃって。…僕が一緒に行きます」
「えっ?でも、何か予定があったんじゃ…」
「いえ、散歩してただけですから。行きましょう」
「ごめんなさい、ありがとうございます」
:10/03/30 19:39
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#221 [我輩は匿名である]
女性は優しい笑顔を見せる。
「…昔でもこんな綺麗な人いるんだな」
女性の顔に、直人はしばし見とれる。
「…はっ!何考えてんだ俺!俺には晶がいるだろ!」
自分で言って、直人はまた考える。
晶と付き合っているのは、直人ではなく要である。
しかし時々、今のように、自分が付き合っているような錯覚に陥る事がある。
「…うーん…俺もヤバくなってきてるかな…?」
いろいろあったりなかったりで、本の怖さを忘れていた。
:10/03/30 19:40
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#222 [我輩は匿名である]
慣れてきたのかもしれないが。
「この辺、結構ごちゃごちゃしてて、分かりにくいんですよね。よく迷う人いるんですよ」
「そうなんですか?良かった、ちょっと安心です」
要と女性は、ただ黙っていくのもつまらないと、仲良く話しながら歩いている。
「私、ここに来たのは初めてなんです。いい町ですね」
「そう…ですね、いい人ばかりだし。何でこの町に?」
「大学の友達の家に遊びに来たんです。地図もらったんですが、どうしてもわからなくて」
女性は恥ずかしそうに笑う。
「車とかで送ってくれる人がいれば楽なんですけどね」
:10/03/30 19:40
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#223 [我輩は匿名である]
「そうですね。父がいれば、送ってくれたんでしょうけど…」
「お仕事ですか?」
「亡くなったんです、戦争で」
女性は隠しもせずに言った。
直人は呆然とする。
よく考えれば、ここは1977年。戦争が終わって22年しか経っていないのだ。
「…なるほどな…」
「すいません、そんなつもりじゃ…」
「あぁ、いいんです。親がいないのには慣れてますから」
「…え…」
:10/03/30 19:41
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