記憶を売る本屋 2
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#91 [我輩は匿名である]
「優しそうなおばあちゃんだったね」
帰り道、飛鳥が何気なく言った。
「そうだな。元気そうで嬉しかったなぁ」
直人も満足そうに笑う。
「まぁ言われてみれば、面影がないこともないな」
「1日しか会ったことないのに、面影とか覚えてんの?」
「ま、まぁ何となく…」
直人は目を泳がせる。
:10/04/27 08:33
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#92 [我輩は匿名である]
それを呆れて見た後、飛鳥はふと、こんな事を言った。
「…うちにも、あんなおばあちゃんがいたら良いのに」
直人は「へ?」と、飛鳥を見る。
「……お前、相変わらず親とは口きいてないんだっけ?」
「きいてない。バイトしてるのも知らないし」
飛鳥は苦笑して答える。
「そうか…」
「まぁ、ちょっと平気になってきたけどね」
「うーん…」
直人は「何かいい方法はないかな」と首をひねる。
:10/04/27 08:33
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#93 [我輩は匿名である]
「いいよ、そんなに頑張って考えてくれなくても」
飛鳥は小さく息をつく。
「そのうちどうにか出来れば良いかなってぐらいだし」
「そうか?…まぁ、今は香月とか安斎とか、友達いるもんな、お前」
「うん」
飛鳥は笑って頷く。
「…あんたのおかげ、かな」
:10/04/27 08:34
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#94 [我輩は匿名である]
「…は?」
飛鳥に言われて、直人はびっくりして彼女を見る。
飛鳥は少しだけ頬を赤らめて顔を背ける。
「(…あれ、なんか、変な感じする)」
直人は恥ずかしいような照れるような、なんだかわからない感覚に襲われた。
2人はそれぞれ同じような事を考えながら帰っていった。
:10/04/27 08:34
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#95 [我輩は匿名である]
「そりゃお前、あいつに気があるんだろ」
飛鳥と帰った時の事を話すと、薫はあっさり言い切った。
「えぇっ!?」
直人はぎょっとしすぎて、持っていた箸を落としそうになる。
「お、俺が!?あいつを!?」
落とさないように箸を握って、少し声を荒げる。
「まぁ、その逆もありえると思うけど」
薫は言いながらサンドイッチを口に入れる。
:10/04/29 13:13
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#96 [我輩は匿名である]
そういう事に関して全く疎い直人は、話についていけず呆然とする。
「え…えぇ…?」
「本当鈍感だよな、お前。どうすればそこまで鈍感になれるか知りてぇよ」
薫は呆れ返ってため息をつく。
直人は「そんな事言われても…」と頬を膨らませる。
「まぁ、そういう所がいいんじゃないのか?」
「…なんか嬉しくない」
直人は不機嫌そうに言い返す。
「…全く自覚してないのか?」
:10/04/29 13:13
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#97 [我輩は匿名である]
「…うーん…何か、よくわかんねぇんだよなぁ…」
直人は箸を咥えて腕を組む。
「好きとかじゃない気がして…。なんかこう…“見守っててやりたい”…っていうか…。
何か、本気で応援してやりたくなるっていうか…」
「(…似たような事だろ)」
直人の話を聞きながら、薫は思った。
「…いいな、お前は平和そうで」
不意に、薫はそう言ってため息を吐いた。
:10/04/29 13:14
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#98 [我輩は匿名である]
「何だいきなり」と、直人は首をひねる。
「…響子は…あいつの事、どう思ってるんだろ…」
薫は遠い目をして、机に肘をつく。
「あいつ?あのアメリカンの事か?てか、結局どうなったんだよ」
「“負け犬の遠吠え”、“君に勝ち目はない”、…そう言われた」
「はぁ!?何なんだあいつ!!」
短気な直人は、思わず声を荒げる。
:10/04/29 13:14
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#99 [我輩は匿名である]
「…でも、あいつは響子の事を何も知らない。
あんな押し付けがましいやり方で、響子が納得するはずがない」
「当たり前だろ!今までお前らがどんだけしんどい思いしてきたか、あいつ何も知らないんだぞ!?
あんな奴に香月取られてたまるかよ!」
まるで自分の事のように、直人は腹を立てて騒ぐ。
「…でも、あいつは俺の言う事には全く耳を貸さない。
何を言っても、きっとまた“負け犬の遠吠え”って嘲笑うだけだろ。
…だから多分、俺が成績1位を取り戻す以外、あいつは納得しないだろうな」
:10/04/29 13:15
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#100 [我輩は匿名である]
「あいつが納得するとかしないとか、どうでもいいだろ!」
「前みたいな目には遭いたくないんだよ」
薫は少しきつく言い返した。
そう言われて、直人はやっと、少し黙り込む。
確かに、怜奈のような行動に出られてはいろいろと面倒だ。
薫は1人で、そこまで考えていたのだろう。
そう思うと、直人はそれ以上何も言えなかった。
:10/04/29 13:15
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