記憶を売る本屋 2
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#101 [我輩は匿名である]
「ねぇ、飛鳥」
バイトに行く途中、奏子は飛鳥に尋ねる。
「水無月が、前に変なおっさんから、前世の本もらったって話、知ってる?」
「…知ってるよ」
飛鳥は少しきょとんとした顔で答える。
「…飛鳥って、その、水無月の前世の話に関係あったりする?」
奏子は続けて聞く。
「…なんで?」
今度は飛鳥が聞き返す。
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#102 [我輩は匿名である]
「なんか、この間うちのおばあちゃんと会ったじゃない?
その時に、2人とも何か知ってそうだったからさ」
そう言われて、飛鳥は少しの間黙り込む。
「……私さぁ」
飛鳥がなかなか答えようとしないため、奏子が口を開く。
「最近、水無月の事、気になってるんだ」
その言葉に、飛鳥はハッと奏子を見る。
「……好き、って事?」
「……多分」
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#103 [我輩は匿名である]
まだはっきりしないのか、奏子は曖昧な言い方をする。
「…それで…何であの本の話…?」
飛鳥は少し動揺しながら、奏子に尋ねる。
「なんか、気になったからさ。水無月の事、いろいろ知ってるのかなぁと思って。
元気づけてもらったとか、前言ってたじゃん?」
奏子は明るく笑ってみせる。
しかし、飛鳥は何故か、ショックを受けたような顔で黙っている。
:10/04/30 20:33
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#104 [我輩は匿名である]
直人の事で、知っている事はいろいろある。
でも、飛鳥は何も教えたくなかった。
直人の過去を知ってるのは、自分だけの特権。
何もない自分にある、たった1つの小さな自慢。
「まぁまた、いろいろ相談乗ってね♪」
奏子は笑って、飛鳥に頼む。
飛鳥はしぶしぶ、「うん…」と頷くしかできなかった。
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#105 [我輩は匿名である]
次の日。
飛鳥はじっと、4組の教室を覗く。
幸い、響子と奏子が別々の子と話している。
飛鳥は気付かれないようにササーッと、早足で響子に近づく。
「響子…」
背後から声がして、響子は振り返る。
「うわっ!びっくりした…」
響子は、いつの間にか背後にいた飛鳥に驚いて声を上げる。
「どうしたの?昨日のバイトで、また何かやらかした?」
:10/04/30 20:34
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#106 [我輩は匿名である]
「違う……事もないけど」
飛鳥はやつれたような表情で答える。
確かに、昨日奏子の突然の告白に動揺していた飛鳥は、
皿は割るわ、カップから紅茶を溢れさせて床をボトボトにするわ、
レジ操作を誤って1000円以上の現金差異を出すわで、
店長にかなりこっぴどく怒られたのだが、響子に相談に来たのはその事ではない。
「…今度、2人っきりで相談があるんだけど」
「2人っきりで?……ははーん、なるほどね」
勘の良い響子は、ニヤリと笑う。
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#107 [我輩は匿名である]
「恋の話ね」
「えっ…!?わかんない。でも、多分そーゆーの」
「じゃあ僕も一緒に♪」
2人の隣に、急に良介が割り込んできた。
「あんたはどうでもいいから、消え失せてくれる?」
「残念ながら、君みたいに背の高いバカそうな女には興味ないよ」
良介は飛鳥に目もくれず、響子と向き合う。
「ねぇ響子ちゃん、僕は絶対、1位を守りぬくからね!」
:10/04/30 20:34
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#108 [我輩は匿名である]
「…え?薫が断りに来たでしょ?」
響子は眉をひそめて確かめる。
「来たけど、女々しい事言うから、追い返したよ」
良介は笑顔で言い張る。
「女々しい?薫が何言ったのよ」
響子もさすがにムッとして言い返す。
「“勝負降りる”って。自信無くしたんじゃない?
あんなに張り切ってのってきたのに、あっさり僕に負けちゃったんだもんね」
良介は呆れたように、「やれやれ」と首を振る。
:10/04/30 20:35
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#109 [我輩は匿名である]
「お前なぁ」
響子の代わりに、飛鳥が良介を睨む。
「調子に乗るのもいい加減にしろよ。お前みたいな新入りに、こいつらの何がわかるんだよ?」
「じゃあ聞くけどさ、君たちに僕の何がわかるわけ?」
良介も負けじと言い返してくる。
「僕は元々勉強なんか好きじゃない。
でも、響子ちゃんが“格好よくて、頭が良い、優しい人”が好きだって言ったから、
僕はそれを目指して今まで頑張ってきたんだ。
邪魔をしてる新入りは、あいつの方だろ?」
響子はそれを聞いて、昔そんな事を言ったのを思い出した。
:10/04/30 20:35
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#110 [我輩は匿名である]
「だから、僕は絶対、あいつから君を取り戻すよ。
あんなクールぶってる奴、君には似合わないからね」
そう吐き捨てて、良介は背中を向けた。
「…マジでムカつく」
飛鳥は苛立ったように、彼の背中をにらみつける。
響子は暗い顔でため息を吐く。
「(……私が…あの時ちゃんと断ってたら…)」
「…響子?」
:10/04/30 20:36
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