記憶を売る本屋 2
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#241 [我輩は匿名である]
「いや!聞くよ!俺で良ければ!つーか俺のせいだし!」
直人は慌てて返事をする。
その慌てっぷりが理解できないのか、飛鳥は首をかしげる。
「どーせ今日は薫と飯食わないだろうし」
「…何で?」
「喧嘩したから♪」
靴を履き替えてきた奏子が、直人と飛鳥の間に入ってきた。
「……顔の怪我って、それで?」
「まぁな。殴り合いとかしたの、小学校以来かも」
「え、まだやった事あったの!?」
:10/05/28 21:56
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#242 [我輩は匿名である]
「(男って大変だなぁ…)」
傷だらけの直人の顔を見ながら、飛鳥はしみじみ思った。
「じゃあ…」
階段を上りながら、直人は飛鳥に言葉をかけようとする。
しかし、ふとある事を考えて止めた。
「(…こいつら、一緒に飯食ってるんだよな…。
って事は…今神崎を誘えば、何か怪しまれたりするかな?
本の話するなって薫も言ってたしな…)」
「どうかしたー?」
何かを言い掛け止めた直人に、奏子が問い掛ける。
:10/05/28 21:56
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#243 [我輩は匿名である]
飛鳥はじっと、直人の方を見つめる。
「…いや、やっぱいいや」
「そう?何か変なの」
「ほっとけ」
そんな事を言っているうちに、教室のドアの前に着いた。
「じゃあな」
直人と飛鳥は奏子に手を振り、教室に入る。
「今日、一緒に飯食おうぜ」
奏子と別れてすぐ、直人は飛鳥に笑いかけた。
突然の事に、飛鳥は「へ?」と聞き返す。
:10/05/28 21:57
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#244 [我輩は匿名である]
「いろいろあんだろ?飯食いながら、全部聞いてやるよ」
直人はニッと笑って飛鳥を誘う。
飛鳥はちょっと間ぽかんとしていたが、笑って「うん!」と大きく頷いた。
:10/05/28 21:59
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#245 [我輩は匿名である]
4限目終了のチャイムが鳴る。
直人は弁当箱を手に、飛鳥の席に行く。
「ここうるせぇから、屋上にでも行くか」
「ん?うん、行こ」
飛鳥も同意して、買ってきた弁当が入ったコンビニ袋を持って立ち上がる。
そして、直人について教室を出た。
「(……2人でご飯とか…なんか緊張するなぁ…)」
誘ったのは自分だが、改めて考えると恥ずかしい。
飛鳥はちょっと顔を赤らめる。
そんな事には全く気付かず、直人は屋上のドアを開ける。
:10/05/28 21:59
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#246 [我輩は匿名である]
「さーて…」
直人は少し歩く速さを緩めながら、どこがいいか考える。
「……あ」
2人一緒に声を上げる。
屋上のフェンス越しにくっついて昼食を摂っている男女。
視線を感じたのか、男の方が振り向いた。
「やっぱりお前か!」
直人は一瞬で不機嫌そうな顔をして声を上げる。
それを見て、振り向いた薫も眉間にしわを寄せ、隣にいた響子も振り向いた。
:10/05/28 21:59
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#247 [我輩は匿名である]
「ついて来るな!」
「別について来たんじゃねぇよ!黙れもやし!」
直人と薫は、距離を置いてまた睨み合う。
が、それを妨げるように飛鳥の腹が鳴った。
「…ごめん」
飛鳥は恥ずかしくて下を向く。
「…いや。…適当に座って食うか」
直人はそう言って、薫達とは離れたところに腰を下ろした。
「いただきまーす」
2人は声をそろえて手を合わせ、弁当箱を開ける。
:10/05/28 22:00
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#248 [我輩は匿名である]
「そういえば、安斎はどうしたんだ?」
薫はコーヒー牛乳片手に響子に尋ねる。
「飛鳥ちゃんも食べないって聞いてたから、他の子と食べてって言っといた」
「そうか」
薫はそう返事をして、ストローに口をつける。
「でも珍しいね、あの2人がご飯一緒に食べてるのって」
直人達の様子を見ながら、響子が少し笑う。
が、薫は返事せずに黙々と弁当を食べている。
「……もう、無視しないでよ」
響子は小さく笑って、ピタッと薫にくっつく。
:10/05/28 22:00
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:TdbZtgtI
#249 [我輩は匿名である]
「……悪い」
薫は箸を咥えて、響子の頭を撫でる。
「嫌味かあいつ…あんなにイチャつきやがって…」
2人の様子を見ながら、直人は怒りを込めて箸を握る。
「……そもそも何でそんな殴り合いになったわけ?」
飛鳥はコンビニ弁当をつつきながら尋ねる。
「…あいつがさ、俺が空気読めてないだの、鈍感だのって言うから……」
「………キレたの?」
飛鳥の問いに、直人は黙って頷く。
:10/05/28 22:01
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#250 [我輩は匿名である]
「(しょーもなっ!!)」
飛鳥は心の中で叫ぶ。
が、よく考えてみれば、発端は自分かもしれない。
「……その喧嘩って…私のせい…?」
飛鳥は手を止めて呟く。
思いもよらぬ問いに、直人はきょとんとする。
「いや、別に…」
確かに、飛鳥が先に帰った事から喧嘩が始まったとも思えるが、飛鳥のせいではない。
「俺の方こそ、悪かったな。勝手に本の事バラして…。俺そういう事にはかなり鈍感だか…」
直人はそこまで言って、自分で気がついて一瞬黙る。
:10/05/28 22:02
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