記憶を売る本屋 2
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#41 [我輩は匿名である]
「響子」
薫が呆れたように笑う。
「そんな小さい時の事なんか、覚えてなくて当たり前だ。
それに、適当に返事したんならなおさら、そんな物約束だとは言えない。
そんな泣かなくても、俺は何とも思ってないよ」
「…本当…?」
響子は顔を上げる。
「……何とも思ってないわけないだろ…」
薫は低い声で言った。
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:S8dNuXTM
#42 [我輩は匿名である]
「へ?」
「あんなわけのわからないアメリカかぶれに…響子を渡してたまるか…。
『僕がフィアンセだ』ぁ?ふざけんじゃねぇぞ…」
思い出したら機嫌が悪くなってきたのか、薫の周りを黒いオーラが漂い始める。
「ヤべぇ…キレかけてる…」
直人が「どうしよう」と、奏子と飛鳥を交互に見る。
:10/04/21 17:40
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#43 [我輩は匿名である]
しかし、直人の心配をよそに、響子がそっと、薫にキスをした。
奏子が「きゃあーっ♪」と声を上げる。
「……響子…」
薫は少し頬を赤らめる。
「…私が好きなのは、薫だけだから。絶対薫以外変わらないからね」
響子は困った表情をしていたが、それだけははっきりと、迷う事無く言った。
:10/04/21 17:41
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#44 [我輩は匿名である]
「…うん」
薫も安心したようにまた笑い、響子を強く抱き締める。
「………ついていけねぇ……薫、先帰るぞ」
直人はそう言って、早足で歩きだした。
つられて、飛鳥と奏子も直人と一緒に歩き始めた。
:10/04/21 17:41
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#45 [我輩は匿名である]
「いやぁー、純愛ですなぁー」
しばらく歩いて、奏子は腕を組みながら言った。
「どこのおっさんだよ、お前」
「だってさぁ、憧れるじゃない?ね?飛鳥」
奏子は飛鳥にも話を振る。
「…そうだね」
飛鳥も小さく笑って同意した。
その顔が、石川晶が喜んだ時の顔にそっくりで、直人は少しドキッとする。
:10/04/21 22:05
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#46 [我輩は匿名である]
夏休みの前に言われた、響子の『やっぱりあの子が好きなの?』と言う言葉が甦る。
「(…って言われても…)」
直人は横目で、楽しそうに話している飛鳥を見つめる。
「そんな事聞かれてもなぁ…」
「ん、何か言った?」
直人の独り言が聞こえたのか、奏子がこっちを向く。
「へっ!?い、いや、別に…」
「怪しいな」
「怪しくねぇよ!」
怪しむ飛鳥に、直人は声を荒げて否定する。
:10/04/21 22:05
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#47 [我輩は匿名である]
「…お前らにも、好きな奴とかいんの?」
直人は何気なく2人に聞いてみる。
「私は…まだそれどころじゃないしなぁ…」
飛鳥はふうっと一息つく。
「まだ親とも話してないし…4ヶ月経ってもバイトにはまだまだ慣れないし。
生きるのに精一杯って感じ…かな…」
そう言いつつ、飛鳥の表情は、どこか晴れ晴れとしている。
:10/04/21 22:06
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#48 [我輩は匿名である]
直人はそれを見て、少し笑う。
それを、奏子は黙って見つめる。
「お前は?」
直人は奏子に聞き直す。
「えっ!?」
「お前イケメン好きとか言ってたから、あのアメリカかぶれとか、いんじゃねぇの?」
「はぁ!?何で私があんな奴と!」
奏子は全力で否定する。
「いいじゃん、お似合いじゃねーか」
直人は「うんうん」と自分で納得する。
:10/04/21 22:06
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#49 [我輩は匿名である]
横では飛鳥が笑っている。
奏子はしばらくムスッとしていたが、何となく直人を見上げる。
「(…こいつは…好きな人いるのかなぁ…?)」
「あ、そういえば、バイト楽しいか?」
「うん、店長が相変わらず怖いけど、やっと一通り出来るようになったかな」
「へぇ。じゃあそろそろ行ってみねーとな!」
「来なくていいから!」
「何でだよ!いいじゃん別に!」
「来たら紅茶ぶっかけるから!」
「それ損するのお前だろ」
:10/04/21 22:07
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#50 [我輩は匿名である]
直人と飛鳥が仲良く言い合いをしている。
「(…やっぱり、飛鳥が好きなのかなぁ…?)」
そう思うと、何だか虚しくなってきて、奏子は首を振って考えないようにした。
:10/04/21 22:07
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