記憶を売る本屋 2
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#51 [我輩は匿名である]
次の日は課題テストだった。
すっかり忘れていた直人は、魂が抜けたように呆然とする。
しかし、もっと大変なのは薫だった。
「おい月島!」
「月城、だ」
今日も懲りずにやってきた良介に、うんざりしたように訂正する。
:10/04/21 22:08
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#52 [我輩は匿名である]
「今日課題試験なんだろう?だったら僕とBattleしろ!」
「面倒だから断る」
「逃げるのか!?」
早くも勝ち誇った顔をする良介に、薫は眉をピクつかせる。
「なんでお前とバトルしないといけないんだ?」
「勝ったら響子ちゃんを返してもらうんだ!」
「やだ」
「何なんだお前は!?月島!お前にはPrideというものはないのか!?」
「だから月城だ。それにプライドどうこういう話じゃないだろ。
響子が聞いたら俺に泣き付いてくるだろうなぁ」
:10/04/21 22:09
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#53 [我輩は匿名である]
「抱きつくだと!?そんな事させないぞ!」
「(あぁ…もう言い間違いも聞き間違いもどうでも良くなってきた…)」
やけに気負っている良介に、薫は早くも呆れムードになってきた。
「(…でもまぁ、響子の事は抜きで、ちょっと見返してやっても良いな)」
薫はニヤッと小さく笑う。
「なぁ、桐生。今回は響子の話は抜きにして、点数バトルだけやってみないか?」
「何だと!?」
「今回は課題テストだ。宿題やってればそこそこ点数が取れる。
どうせなら期末とかの実力テストで競う方がやりがいあるだろ」
:10/04/21 22:09
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#54 [我輩は匿名である]
「…ふむ」
良介は腕を組んで考え込む。
そして、少し経って「いいだろう!」と答えを出した。
「月島!絶対に手を抜くなよ!」
「はいはいわかりましたよ」
適当に返事をすると、良介は気合いを入れて8組を出て行った。
:10/04/21 22:09
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#55 [我輩は匿名である]
「月城、あいつ見返してやれよな!」
クラスの男子たちが、薫に声援を送る。
「あぁ」
「あいつ、入ってきてそうそう、女子にちやほやされやがってさぁ…」
「あぁ…」
「でも、月城くんこの間学年1位だったから、楽勝なんじゃない?」
「いや、どうかわかんないけど…まぁ頑張るよ」
薫は笑ってみせる。
「(学年1位…あぁ…そう言えばあいつ1位だったな…。
俺110位っていう超微妙な順位だったのに…)」
:10/04/21 22:10
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#56 [我輩は匿名である]
この学年は生徒が320人いるため、直人の順位もそこまで悪くないのだが、
親友が1位という事を考えるだけで、何となく欝になってくる。
「やっぱ頭良いんだね、月城」
斜め後ろの席にいる飛鳥が、直人の傍にやって来た。
「よく1位とか取れるよな、脳みそどうなってんだか」
「ははっ、あんた何位だっけ?」
「110位」
「…警察呼べそうな順位だね」
:10/04/21 22:10
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#57 [我輩は匿名である]
「何ちょっと上手いこと言ってんだよ。そういうお前は?」
「あたしは101位」
「俺が警察ならお前は犬じゃねぇかよ」
2人は何だか面白くなって笑いだす。
すると、学校中にチャイムが鳴り響いた。
「ま、お互い月城に近付けるように頑張ろ」
「おうよ」
飛鳥は笑って、自分の席に戻った。
:10/04/21 22:11
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#58 [我輩は匿名である]
「え?あのアメリカンと月城くんが点数バトル?」
バイトに行く途中、飛鳥は今日の薫達の話を奏子に聞かせた。
「まぁ、月城くんなら1学期の期末1位だったから、楽勝だろうけどね」
「そうだよね」
奏子と飛鳥はそろって頷く。
「今回は順位2桁だったらいいなぁ…」
飛鳥は「はぁ…」とため息をつく。
「何で2桁取りたいの?」
「2桁っていうか、出来れば1桁取りたいんだけどね」
:10/04/21 22:12
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#59 [我輩は匿名である]
「えっ!?何で!?」
奏子に聞かれ、飛鳥は少し躊躇いながら答える。
「…私、…親を見返してやりたいの」
「…親?」
「うん。私の親、弟しか見てないから…いい成績とって見せてやりたいんだ」
「へぇ…」
飛鳥の話に、奏子はきょとんとする。
「最初は親なんかどうでも良かったんだけどさ。
でも…水無月に元気付けられてから、自分にも何か出来そうな気がしてきて…」
:10/04/21 22:13
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#60 [我輩は匿名である]
飛鳥は柔らかな笑顔を見せる。
奏子は黙って、その横顔を見つめる。
「…飛鳥はやっぱり、水無月の事好きなの?」
「へ?」
思いもしない質問をされて、飛鳥は素早く奏子を見る。
「ま、まさかー!」
飛鳥は手を振りながら否定する。
「そ…そうだよねー。ごめん、何か変な事聞いた!」
奏子は「へへへ」と笑う。
:10/04/21 22:13
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