記憶を売る本屋 2
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#151 [我輩は匿名である]
「お前、あんまり薫の邪魔すんなよな!」
「邪魔してるのはあっちだろ!」
良介もムスッとして言い返す。
直人は腰に右手をあてて、じーっと良介を見る。
「……お前さぁ、香月のどこが好きなわけ?」
直人はそもそも、そこから聞きたかった。
「僕?響子ちゃんの全てに決まってるじゃないか!」
「はぁ!?全てが好きとか、適当に言ってんだろ!」
「適当?失礼な!君は人を好きになった事無いのか?」
「気持ち悪いから『君』っていうな!俺は水無月直人!み・な・づ・き・な・お・と!」
:10/05/06 20:17
:N08A3
:6Ieh1kRI
#152 [我輩は匿名である]
直人は鳥肌が立ったのか、上腕をさすりながら名乗る。
「水無月?6月の事か!」
「ま、まぁそうだよ、6月の水無月」
「ふむ。じゃあ水無月、君は人を好きになった事は…」
「だから!『君』ゆーな!気持ち悪いから!」
「はっはっは!水無月は面白いな。天然か」
「天然はお前だろアホぉ!!」
直人は勢いで立ち上がる。
ここまでくれば、日本語の意味がわかっているのか不安になってくる。
:10/05/06 20:18
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:6Ieh1kRI
#153 [我輩は匿名である]
「俺だってなぁ!好きな奴ぐらいいるんだよ!」
直人はそう言い切った。
「じゃあ水無月は、その子のどこが好きなんだ?」
「俺は…」
勢いで話を進めたため、少し悩む。
しかし、自然と頭に飛鳥が思い浮かんだ。
「…俺は、特に、頑張り屋な所、かな」
「頑張り屋?」
「そう、頑張り屋なんだ。…ある人を見返す為に、今一生懸命頑張ってるんだ。
俺はそこが好きなんだ、多分。だから、心の底から応援してるんだ」
:10/05/06 20:18
:N08A3
:6Ieh1kRI
#154 [我輩は匿名である]
言ってしまった。直人は言ってから、とても恥ずかしくなった。
本当なのかわからなくて、何だか飛鳥に申し訳なく思う。
「…………それって…」
良介は何故か、ものすごく気持ち悪そうな顔で直人を見る。
「な、何だよその目は」
「だってぇ…水無月の好きな人って…」
直人は「バレてるのかな」と、少しドキドキする。
「月城だろ…?」
:10/05/06 20:19
:N08A3
:6Ieh1kRI
#155 [我輩は匿名である]
「俺にそんな趣味ないわぁー!!」
直人は今日1番の大声を出した。
おまけに、その声に重なって、どこかから薫の声もした。
「だって、見返すって僕の事だろ?」
そう言っている良介の後ろを見てみると、柱の影から薫が出て来ている。
「薫!」
「月城!盗み聞きかっ!けしからん奴だ!」
良介はむすっと腕を組んで薫を睨む。
「あのなぁ!俺が好きなのは女だよ!ちゃんとした女!わかったか!?」
「あぁ、どうでも良くなった」
:10/05/06 20:19
:N08A3
:6Ieh1kRI
#156 [我輩は匿名である]
「何だとー!?」
良介はどうでもよさそうに適当にあしらって、薫と向き合う。
「それより月城、お前は響子ちゃんのどこが好きなんだ?」
「はぁ…?」
いつも唐突に物を聞いてくる良介に、薫は首をかしげる。
「俺は…そうだな、笑った顔が好きだな」
薫は小さく笑って答えた。
直人も良介も、黙って薫を見つめる。
「…な、何だよ。俺変な事言ったか?」
「いや、なんか意外な答えだったなぁ…と思って」
:10/05/06 20:19
:N08A3
:6Ieh1kRI
#157 [我輩は匿名である]
「……“全部”って答えは、おかしいのか?」
良介は納得できなそうに考える。
「…まぁいいんじゃないか?どこが好きかなんて、人それぞれだろ」
薫は少し面倒くさそうに言ってやる。
「そうか!そうだな!お前もたまには良い事言うな!でも響子ちゃんは俺がもらうからな!」
良介はそう言って、笑いながら帰っていった。
嵐が去って、2人は大きくため息を吐く。
まぁ、直人が呼び止めたのが悪かったのだが。
「…つーか、お前いつからいたんだよ?」
:10/05/06 20:20
:N08A3
:6Ieh1kRI
#158 [我輩は匿名である]
「『俺だって好きな女ぐらいいるんだよ!』みたいなのが聞こえてから。
なんか出ていくタイミングが掴めなくて、待ってたんだ」
薫は少し呆れ笑いする。
「何だよ…」
直人はだらんとうなだれる。
「さ、帰るか」
「ん」
2人はそう言って帰りはじめた。
:10/05/06 20:20
:N08A3
:6Ieh1kRI
#159 [我輩は匿名である]
「あのアメリカン、…うぜぇけど、なんか憎めない奴だよな。…うぜぇけど」
階段を下りながら、直人は言った。
「何で2回言ったんだ」
「とりあえずうぜぇから」
直人は良介とのやり取りを思い出して、顔を引きつらせて笑う。
そう言われて、薫も「確かに…」と頷く。
「…そうなんだよなぁ…。根本から嫌な奴なら、ぶん殴ってでも黙らせるのに。
…あいつ相手だと、そんな気も失せてくるんだよなぁ…」
薫は不満そうに言う。
「…で、お前どうするんだよ?結局点数バトル続けんの?」
:10/05/06 20:21
:N08A3
:6Ieh1kRI
#160 [我輩は匿名である]
「……そう、なりそうだな…。
この間の金曜日に、響子と神崎が釘を刺そうとしたらしいけど、ダメだったらしいし」
「…何で神崎まで?」
直人に言われて、薫は内心「しまった」とドキッとした。
『昨日ね、飛鳥ちゃんとお茶しに行ったの。
それで、一昨日その約束してたら、桐生くんが割り込んできたから、一言言おうと思ったんだけど…。
ダメだった。あの子いつからあんなマイペースになったんだろ…』
昨日の日曜日、家に遊びに来た響子が薫に話してくれた。
その時に、飛鳥と奏子が直人に気があるらしい事も聞いたのだった。
:10/05/06 20:21
:N08A3
:6Ieh1kRI
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