記憶を売る本屋 2
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#385 [我輩は匿名である]
「サンキュ♪」

「どーいたしまして」

「お礼に私もお守りあげよっか?」

「はぁ?別にいらねぇよ。お守りは1個で充分だろ」

直人はポケットに手を突っ込んで断る。

「つーか、何で飛鳥からお守りもらったの?」

奏子は不思議そうに首をひねる。

「この間の幽霊話でさ。俺が『変な声がする』って、球技大会の時言っただろ?

あれ言ったら、『怖くて近寄れないから持っとけ』って」

⏰:10/06/14 19:52 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#386 [我輩は匿名である]
直人は呆れたように笑って、響子と一緒に薫と喋っている飛鳥を見る。

「ふうん。意外と乙女だね、飛鳥」

「みたいだな。あんなムスッとしてる奴が怖がりとか、すげぇギャップ」

「確かに」

奏子は笑って頷き、直人の顔を眺める。

直人はまるで見守るような目で飛鳥を見ている。

「…あんたって飛鳥の話する時、すごい良い顔するよね」

そんな事を言われて、直人はきょとんとする。

「……そうか?」

⏰:10/06/14 19:52 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#387 [我輩は匿名である]
「うん」

奏子は少し笑って頷く。

「…なんか悔しいけどね」

それだけ言い残して、奏子は3人の方に歩きだした。

「(……何が悔しいんだろ?)」

彼女の言葉の意味がわからず、直人はぽかんとする。

「(………まぁいいか)」

一瞬考えた末、直人は特に気にせずに、4人の元に戻っていった。

それからは、特に大きな出来事は無かった。

⏰:10/06/14 19:53 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#388 [我輩は匿名である]
3週間後。

もう10月の中旬。

さすがに涼しくなってきて、制服も合服に変わった。

「お?」

直人達はじーっと、貼り出された成績順位を見つめる。

直人はほんの少し健闘して93位。

薫は良介と同着1位。

響子は前回とほぼ同じ120位。

奏子は171位。

そして驚く事に、飛鳥の点数が39位だった。

⏰:10/06/14 19:53 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#389 [我輩は匿名である]
「すげー!やるじゃんお前!」

直人はバシッと飛鳥の肩をたたく。

「…本当だ」

「何だよ!嬉しくないのか!?」

「う、嬉しいけど…信じられないっつーか…」

飛鳥はただただきょとんとしている。

課題テストの時は98位だったのが、今回のこの順位。

信じられないのも無理はない。

「へへへっ、なんか俺の方がテンション上がってきた!」

⏰:10/06/14 19:54 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#390 [我輩は匿名である]
茫然とする飛鳥の肩に手を回して、直人は満面の笑みを浮かべる。

「弟見返すのも近いかもな!頑張れよ!」

「…うん、ありがと」

直人に言われ、飛鳥もやっと嬉しそうに笑った。

奏子は黙って、2人の様子を見る。

「なぁ、お祝いしようぜ!薫も1位だった事だし」

「なんでこういう時に1位なんだ…」

「いいね、お祝い♪」

ため息を吐いている薫の隣で、響子が笑って返事する。

⏰:10/06/14 19:54 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#391 [我輩は匿名である]
「あたし、カラオケがいい!」

奏子が真っ先に手を挙げる。

「(カラオケ…)」

直人と響子は、その一言にぎょっとする。

「…俺はいい」

更に暗い顔をして、薫は断った。

「なんでー?いいじゃん、このメンバーで行った事無いし」

「あんまり好きじゃないんだよ、カラオケは。

もっと他の事にしないか?」

⏰:10/06/14 19:54 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#392 [我輩は匿名である]
薫はきっぱりと言い張って、他に何か無いか考える。

しかし答えが出ないまま、予鈴のチャイムが鳴った。

「…あ、俺トイレ行ってくる」

「じゃあ、私達も行こ」

「うん」

薫はトイレへ、響子と奏子は自分達の教室へと歩きだす。

2人きりになった直人と飛鳥は、お互い顔を見合う。

⏰:10/06/14 19:55 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#393 [我輩は匿名である]
「……月城、もしかして……」

「…誰にも言うなよ。あいつそれバラすとキレるから」

直人の言葉に、飛鳥は「やっぱりな」と確信した。

「…音痴なの?」

「あぁ、信じられねぇぐらいな」

直人は苦笑する。

「音符は読めるけど、歌うとなると、さっぱりだ。

中学の通知表で2取った事があるぐらい」

⏰:10/06/14 19:55 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


#394 [我輩は匿名である]
「そんなに?」

「おう。ちなみに絵もかなり下手だぞ」

「…あぁ、なんか下手だったな」

本の代償の話をした時の事を思い出し、飛鳥は頷く。

そして、少し残念そうに、こう呟いた。

「……カラオケ行きたかったな」

直人はじっと、飛鳥を見る。

「じゃあ、今度行くか」

ニッと笑って、飛鳥に言ってみる。

⏰:10/06/14 19:56 📱:N08A3 🆔:hqt4bZk6


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