天使と悪魔の暇潰し
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#139 [匿名]
「てかお前は俺の心配してる場合かよ!いーのかよ、行かなくて。」

彼は下を眺めながら言う。

正直僕は、初めての暇潰しだから、しっかりと作戦を考えてから行動したかった。

何も考えずむやみにターゲットに近付くのは、危険な気がしたのだ。特にこのターゲットは何らかの病気なはずで、慎重にいく必要がある人間だと思っていた。

⏰:10/11/16 00:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#140 [匿名]
仲良くなるのも一つの手だとは思ったが、彼に先を越されてしまった。

しかもターゲットはあんなに楽しそうに笑っていたので、僕はそれ以上にターゲットを楽しませる自信がなかったのだ。


女は難しい。
人間も、天使も、悪魔も。

⏰:10/11/16 00:11 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#141 [匿名]
二日目



結局僕は、考えても考えても、良い作戦は思い浮かばなかった。

人間は何が起きた時、死にたくないと思うのだろうか。死なない僕には検討も付かなかった。

「そろそろ時間だ。」
と彼は独り言を呟き、下に向かった。昨日と同じ時間。同じ場所。

⏰:10/11/16 00:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#142 [匿名]
「よお。来てやったぞ。」

彼の上から目線にも、ターゲットは苛立つ事はないようだ。

「昨日と同じ!ぴったしじゃん!」

ターゲットは嬉しそうにニコッと笑った。その笑顔を見て、心なしか彼が照れているように感じた。

ベンチに座り、昨日と同様、二人は話し出す。たいした話ではなさそうだったが、一時間位経って、彼がターゲットに質問した。

「お前、死にたいか?」

⏰:10/11/16 00:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#143 [匿名]
ターゲットは一瞬、何を聞かれたのか理解に苦しむ表情を見せたが、すぐに笑った。

「そんな質問、初めてされた!」

アハハと今度は声を出して笑う。

「何が可笑しいんだよ!」
彼は不機嫌になる。


「違うの。皆はさ、生きようね!って、頑張ろうね!って言うの。死、なんて口に出さないんだよ。」

「なんで?」

「リアルなんだよ、死ぬ事が。だから誰も口にしないの。皆の反応見てたらさ、嫌でも分かっちゃうんだよね。」

ターゲットの笑顔は少しずつ消えて行った。

⏰:10/11/16 00:34 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#144 [匿名]
「最初はさ、一週間ほど入院しましょう。って言われてたんだけど、気がついたらもう半年入院してるんだ。毎日のようにお母さんはお見舞いに来てくれるけど、毎日のように目を腫らしながら来るんだよー。」

ターゲットの言葉に、彼は無言で頷くだけだった。

「最近特に優しくてさ、我が儘何でも聞いてくれる。それに…」

言葉がつまった。

「私、どんどん痩せていってるんだ。最近は歩くのも辛くて、すぐに疲れちゃうの。熱も頻繁に出るし、身体中が痛くて寝れない時もある。徐々に悪くなってるのが自分でも分かるの。」

⏰:10/11/16 00:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#145 [匿名]
「でもさ、手術したら治るんだろ?」

彼はやっと口を開いた。悪魔である事を疑いたくなる、励ましの言葉。

ターゲットは彼の言葉に無言で首を振った。

「多分手術出来ないんだよ。先生とか、ナースさんとかを見てたらわかっちゃった。」

ターゲットは無理矢理笑顔を作ってみせた。

⏰:10/11/16 00:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#146 [匿名]
「あ!さっきの質問だけど、どーせ私はもうすぐ死ぬんだし、死ぬなら楽に死にたいな!このままだと私絶対苦しみながら死んじゃうと思うんだよねぇ。だから、死ぬほど苦しくなる前に…」

ターゲットは真っ直ぐ彼を見た。笑顔はなく、表情は無に等しい。

「死にたい。」


…死にたい。その言葉に彼はニコッと笑った。優しい笑顔ではなく、悪魔という名前にぴったりの笑顔だ。

⏰:10/11/16 00:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#147 [匿名]
彼はターゲットの、死にたい、という言葉を聞くと、その日はそれで帰った。

僕は彼に一歩リードされ、少しだけ焦りを感じた。


彼が僕の隣に戻ってきてからしばらくすると、ターゲットの母親らしき人が来た。

「ここにいたの?体調は大丈夫?」

母親はターゲットの後ろから声をかけた。出来るだけ明るい声で、明るい顔で言葉を発したつもりだろうが、裏目に出ている。

顔は疲れきっていて、やつれている。ターゲットの言っていた通り、目は腫れていた。

⏰:10/11/17 19:26 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#148 [匿名]
母親が来たというのに、ターゲットは空を見たまま黙っていた。

「さや!聞いてるの?」

「…ああ!お母さんいたの?」

「いたの?じゃないわよ!ぼけーっとして、何かあったの?」

ターゲットはさやという名前らしい。

「別に。」

そう言い、また空を眺め始めた娘に、可笑しな子ね、と笑いながら言う母親。

どこにでもいる親子だ。どちらかといったら、仲の良い方かもしれない。

⏰:10/11/17 19:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


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