天使と悪魔の暇潰し
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#149 [匿名]
僕は母親が一人になった時を見計らい、下に降りる事にした。
時間がかかるかな、と思ったが、チャンスはすぐに訪れた。
「ちょっと洗濯物取ってくるわね。」
そう言い、母親は病院の地下まで降りて行った。
:10/11/17 19:49 :F06B :☆☆☆
#150 [匿名]
「あの、さやちゃんのお母さんですよね?」
僕は洗濯物を取り込んでいるお母さんの後ろ姿に声をかけた。
「えぇ、あなたは?さやのお友達かしら?」
「はい!高校が一緒で。加藤と申します。」
僕は日本人にはよくある名前を言った。
「あら、お見舞い?どうもありがとう。さやなら今屋上にいるわよ。」
優しい顔で微笑んでくれたが、近くで見ると先程よりくまが目立つ。
:10/11/20 14:22 :F06B :☆☆☆
#151 [匿名]
「あ、多分お母さんが来る前にもう会ってきました。」
僕はまたサラッと嘘をつく。
「そうなの!どうもありがとうね。」
それから僕は、高校の話、勉強や部活やグラスの事などを適当に話した。
さやの友達のみかちゃん達は元気?と質問されたので、それもまた適当に答えた。
:10/11/20 14:33 :F06B :☆☆☆
#152 [匿名]
「あの…さやちゃんはどれくらい悪いんですか?」
一通りの会話をした後、僕は一番聞きたかった事を言ってみた。案の定、先程までの頑張って作り上げた笑顔はひきつり、お母さんは下を向いてしまった。
「やっぱり、そうとう悪いんですね。」
「…でも大丈夫よ!必ず治るから。さやは強い子だもの。病気なんかに負けないわ。」
:10/11/21 14:13 :F06B :☆☆☆
#153 [匿名]
その言葉は、僕の心配を晴らしてくれるための物ではなく、自分自身に言い聞かせてる物だと感じた。
「手術とかって?」
僕はまた質問をした。
「うん…今の技術だと手術出来ないんですって。ただ進行するのを緩める事しかないみたいなのよ。」
:10/11/21 14:24 :F06B :☆☆☆
#154 [匿名]
「そうなんですか。」
いかにも深刻そうな相づちに聞こえるように演技した。
「新しい技術が開発されて、手術が出来るようになるまで、さやの体がもつかわからないのよ。」
お母さんは必死に涙を堪えている。
それにしても、初めて会った、娘の友達と名乗る男に、よく話してくれたものだ。追い詰められて、一人では抱え込めないのかもしれない。
「大丈夫ですよ!」
何の根拠もないのに、僕は励ました。
:10/11/21 21:03 :F06B :☆☆☆
#155 [匿名]
三日目
彼は今日も同じ時間に、ターゲットの所へ足を運んだ。相変わらずくだらない事ばかり話している。
ターゲットは声を出して笑っていた。
その姿を見ると、もうすぐ死んでしまうとは、とても思えない。
若い人は進行が早く、急に死んでしまう事もあるらしい。昨日ターゲットのお母さんが話してくれたのだが、難しい話で、あまり頭に入ってこなかった。
:10/11/24 11:33 :F06B :☆☆☆
#156 [匿名]
とにかく、いつ死んでもおかしくない病気なのだ。明日朝になっても、目を覚まさないかもしれない。
この暇潰し五日間の間に体調が急変して、死んでしまった場合は、僕達の勝負は引き分けとなる。
負ける事よりもモヤモヤする引き分けだけには、絶対になりたくなかったので、急変だけはやめてくれ!と神様に祈った。
神様は聞いてないけど。
:10/11/24 11:38 :F06B :☆☆☆
#157 [匿名]
「お前が死ぬのは明後日だ。」
彼の低い声が聞こえた。
「何で明後日なの?私今すぐにでも死にたいのに。」
ターゲットは頬っぺたをぷくっと膨らませた。まるで、彼氏に我が儘を言う彼女のようだ。
なんで今日会えないの?早く会いたいのに。…うん、こんなかんじだ。
:10/11/24 11:46 :F06B :☆☆☆
#158 [匿名]
「お前はやり残した事とかないのか?」
普段の彼は、人間にそのような事は聞かない。
やり残した事があると主張してきた人間には、知るかと冷たい一言を発するのが、彼の流れだ。
「やり残した事か。…そんなのいっぱいあるよ。大学だって行きたかったし、結婚もしたい!独り暮らしとか海外に行くとか…やり残した事だらけだよ。」
ターゲットは寂しそうな顔をした。今まで考えないようにしていたのかもしれない。
:10/11/24 11:54 :F06B :☆☆☆
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