天使と悪魔の暇潰し
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#181 [匿名]
「私さ、絶対に治らないから、早く死にたいって思ったんだ。」
「おう、聞いた。」
「これ以上苦しむのが怖くて…これ以上、私が私じゃなくなるのが怖かった。」
彼は黙ってターゲットの話を聞いている。
:10/12/10 01:32 :F06B :☆☆☆
#182 [匿名]
「これ以上、お母さんに泣いて欲しくない。私のせいで誰かが苦しんでると思ったら、なんか…なんか痛くて。」
ターゲットは苦しそうな顔をしている。
「こんな状態で生きているのが、辛かった。」
今まで溜まっていた物が、言葉と一緒に流れ出た。
辛いに決まっている。
痛いに決まっている。
:10/12/10 01:40 :F06B :☆☆☆
#183 [匿名]
「もし、1%でも助かる可能性があるなら…」
「え?」
黙ってターゲットを見ていた彼が口を開いた。
「1%でも助かる可能性があるなら、それに賭けたいと思うのは、間違った事かな?」
ターゲットは彼を見る。
:10/12/10 01:47 :F06B :☆☆☆
#184 [匿名]
昨日お母さんが言った話は、寿命だとか延命治療だとか、そういう話ではなかった。
治る可能性がある。
外国へ行けば、新たな技術が進歩しており、手術が出来る。
ただ成功する可能性は低い。手術を始めてみなければ何も分からない、というような話だった。
何もせず死を待つか、少しでも可能性があるなら、それに託してみるか。
:10/12/10 01:53 :F06B :☆☆☆
#185 [匿名]
「生きれるかもしれないと思ったら、急に生きたい!っていう気持ちに変わったの。」
ターゲットはまっすぐ彼を見つめている。
「…私…死にたくない。死にたくないよ。…生きていたい。死にたくない!」
「……………」
彼は何も話さない。ただ強くターゲットを抱き締めていた。
「怖いよ。死ぬのが怖い。」
ターゲットは泣いている。
:10/12/10 02:00 :F06B :☆☆☆
#186 [匿名]
「お前は死なねぇよ!俺が保証してやる。」
彼が悪魔である事を忘れた時だった。忘れたというよりも、悪魔である事を放棄した瞬間だ。
ひたすら泣くターゲットを、ひたすら強く抱き締めていた。
時間というのは残酷で、いつも規則正しく動いている。なのにこんなにも、この二時間が早いとは思わなかった。
呆気なく、僕は勝利した。
:10/12/10 02:06 :F06B :☆☆☆
#187 [匿名]
あれから一週間ほど経ったある日、ターゲットは外国へ飛び立った。
アメリカの病院に入院し、2週間ほど経ち、状態が安定した頃に手術を受けた。
手術は十数時間にも及ぶ、大変な手術だった。
何がどうなっているのか、僕には全く分からない事が行われていて、ターゲットは眠っていたけど、とても胸が痛かった。
:10/12/11 12:34 :F06B :☆☆☆
#188 [匿名]
お母さんはずっと両手を合わせて、祈っている。神様!って聞こえてきそうだった。神様は聞いていないよって教えてあげたかったけど、僕にはできない。神様は聞いてるよって嘘をつきたくなる。
手術は終わった。
ターゲットはまだ生きている。だけど、大変な状況に代わりはないらしい。
それから五日間、ターゲットは寝たきりで、意識は戻らないでいた。
:10/12/11 12:40 :F06B :☆☆☆
#189 [匿名]
そしてとうとう、意識が戻らないまま、亡くなった。
ターゲットの体力では、耐えられなかったらしい。
泣き声が聞こえて、耳から離れなかった。
僕の隣で見ていた彼も、泣きそうだったに違いない。何も言わず去って行った。
:10/12/11 12:43 :F06B :☆☆☆
#190 [匿名]
ターゲットに再会するのはあれから二日後。神様への行列に並んでいた。
「よぉ。また会ったな!」
彼は以前と変わらない態度でターゲットに話しかけた。
ターゲットは驚いている。それはそうだ。死後の世界で、この間まで会話をしていた知人に会ったのだから。
「え?何でいるの?あなたも死んじゃったの?」
「死んでねぇよ!元から生きてねぇからな。」
「幽霊だったの?」
ターゲットは青ざめた。自分も死んでしまったというのに、同じ幽霊が怖いらしい。
:10/12/11 12:56 :F06B :☆☆☆
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